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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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Do you have a stomachache?
米山消化器内科クリニック 米山 和夫
 いつも思うのだが、「締め切り」というものはまだまだずっと先だと安心していると、あっという間に間合いを詰めて懐に入って来る。毎回直前に慌てて取りかかり、そして毎回反省している。ということで今回もやはり、推敲する余裕もないまま、パソコンに向かい書き始めた次第である。
 このタイミングで順番が回ってきたということで、やはりコロナ問題に関連して書かねばなるまい、と考えてみた。確かに感染対策をはじめ、今までに経験のない、いわゆる新たな生活様式で暮らしている。しかし仕事でもプライベートでも外出機会が激減したためむしろ変化の少ない日常で、淡々とした日々を送っているのが現実である。これからもクリニックで出来ることを続け協力していきたいと思っている。また実際にコロナ患者さんの治療にあたられている先生方には感謝の念に堪えない。
 そういえばコロナ問題が始まってから、調べた言葉がいくつかあった。毎朝、診療開始前の時間はメールや書類を書いたり、本を読んだりして過ごす。何となくTVもつけているが、賑やかな情報番組が苦手なので、NHKBSのニュース番組を流していることが多い。この番組では、世界各国の主要放送局のトップニュースを同時通訳しながら流し、キャスターが解説している。春頃からは、やはりコロナ問題のニュースが取り上げられることが多くなったのだが、その見出しに出てくる英単語に目が留まった。siege=包囲攻撃、onslaught=猛攻撃・突撃、surge=急増・殺到、toll=犠牲・損失、soar=暴騰、quarantine=隔離・検疫、evict=追い立てる(以上、三省堂新コンサイス英和辞典)、などなど。やはり何となく恐いイメージの単語ばかりである。見出しに使われるくらいだからnativeの人にとっては日常単語なのかと思うが、私にとっては馴染みのない単語で、自分の語彙力のなさを感じた。
 とにかく、英語が苦手である。今の時代に情けない話だが、英語との相性がよろしくない。私が子どもの頃は、今ほど英語塾や英会話教室は見かけなかった。英語を始めたのは、普通に中学入学時である。授業で聞かされる外国人の発音はよく分からず、そしで膨大な「英単語」を一つ一つ覚える必要があることを知ったとき、思わずのけぞった。今考えれば馬鹿な話だが、小学校で習ったアルファベットの組み合わせで何とかなるのかと思っていた(りんご=RINGOみたいに)。つまり「覚える」という行為が嫌いなのである。それでも中学、高校と我慢して学習を続けた。大学に入学し医学論文などが教材になり、少しは興味を持ったものの、お世辞にも得意とは言えなかった。
 大学の教養部では英会話の授業があった。教師はたっぷりとした体型の声の大きなアメリカ人だった。初回の授業からハイテンションで、車座に座らされた我々学生の数人に出身地を質問し(「岩手!ンーフー、北海道!オー!」)、最後に「ワターシの出身地はGood morningデース!」と言った。全員、頭上に「?」。「good morningはオハヨー・・・オハイヨー・・・オハイオー・・・オハイオで~す!」。初手からダジャレ(しかも半分英語の)をお見舞いされ、その瞬間、また英語が遠ざかった気がした。
 卒業し入局すると、「大学医局に所属する医者にとって発表や論文書きはdutyである」と教えられた。学会発表は嫌いではなかったが、論文書きは全くと言っていいほどしなかった。上司には英語論文を書くように指導されたが、いろいろと言い訳をしては逃げ回っていた。英語論文を読み、英語で原稿を書くなど、正直、私にとっては気の遠くなるような作業であった。また大学や病院に勤務している頃、外国人の患者さんと遭遇する機会はあったが(組合病院には船員さんが時々受診した)、特に困ることはなかった。何故なら周りには、留学経験者など英語が堪能な先生が必ず居たからである。そんな先生方にキラーパスを出して、何とかしのいでいた。
 しかし、である。・・・。開業してしまうと、いよいよ逃げられなくなった。当院では外国語対応のスーパー受付嬢などは勤務していないため、日本語を話さない患者さんは、問診票もそこそこに診察室へダイレクトインである。電子カルテの画面にカタカナ氏名が見えたら、ゆっくり気持ちを落ち着けてから呼び込みたいのに、である。当院のスタッフは、皆心優しい女性達だが、彼女達も早くパスしたいのだろう、この時ばかりは容赦なく誘導してくる。まだ心の準備が出来ていないうちに、目の前には金髪碧眼の患者さんが座っていることになる。当院は秋田市御所野にあるため、近くにある留学生の多い大学の学生さんや職員さんが時々受診される。伺っていると、本当に様々な国から留学されていて、異文化の中で頑張って勉強していらっしゃる。異国で生活する若者が、具合が悪くなり受診するのだから、多分心細いんだろうな~と同情するが、これから英語を話さなくてはならない私の方も相当に心細い状況である。理由の異なる「心細い」同士が向き合って、ただ黙っているわけにもいかないので、まずは話を聞いてみる。私の自慢の「片言」英語で何とか症状を聞き出す。どうもおなかが“しったけ”痛いらしい・・・こんなにムカムカするなんてあり得ないと言っているようだ・・・原因は何なんだ?と、少しご機嫌が悪くなってきたぞ・・・。とりあえず診察するので、ベッドに横になって、おなかを出してください・・・んー?「横になる」「おなかを出す」ってどう言えばいいんだっけ? このレベルなのである。何とか診察して、病状を話す頃にはもう汗だくである。やや心もとない薬の説明をして、「では、お大事に」と、引きつった笑顔で何とか診察を終える。もう1日分の仕事をした感じである。
 実は開業以来、ずっとこの英会話問題は気になっていたため、少しは勉強もしてみた。真面目に想定会話なんかを書いてみたりもした。だが!文明の進歩は素晴らしい! そう、もうお気づきと思いますが、最近は皆、スマホの翻訳ソフトを使い、こんな私ともコミュニケーション(×コミニュケーション)をとってくださる。こうした翻訳ソフトは使ってみるとなかなか優秀で、「英語の出来ない医者の診察を受けるため」に開発されたのではないか、と思うほどよく出来ている。伝わるって素晴らしい! そんなわけで、最近はあまりドキドキせずに患者さんを迎えることが出来ている。
 日頃、我が家の小中学生の娘たちには「将来、どんな仕事でも、英語が必要になるからね。英語だけはしっかりと勉強しておきなさい」と偉そうに話している。しかし思い出してみると、40年前の中学生の自分が、全く同じことを父親に言われていたのだった。
 次の執筆は、(もちろん英語の堪能な)市立秋田総合病院神経内科の大川聡先生にお引き受けいただきました。大学の医局で机を並べ、夜な夜ないろいろな話をしたことを思い出します。よろしくお願いします。


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