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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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老いと学問的探究心
山王レディースクリニック 津田 晃
  最近は、午後が休みの木曜日は、トレーニングジムに通っている。円形に配置されたステップと機械を交互に30分間行うという極めて簡単なもの。この日も、「1、2 1、2」とかけ声をかける若い女性のインストラクターを中心にトレーニングも終盤に近づき疲れた尻を叩かれながら、もう少しと頑張っていたのだが途中から目眩がしてきて地球が回り始め、そのまま仰向けに倒れてしまい、暫く記憶がなかった。
  運動を始めたのは、はっきり言って「老い」を感じ始めたからだ。ある講演会で聞いたところによると、ロコモーティブ症候群の解説があり、靴下を片足で履けなければ寿命はあと5年と言われているそうである。5年以上生きられないとは思わないが、自分の筋力が低下していることは嘘ではなさそうである。さらに顕著なのは、視力の低下である。若い頃は裸眼で1.5だったのに、免許の更新に行くと、要眼鏡等のハンコを押されてしまった。動体視力も落ちた。キャッチボールができない。どんなに早い球がきてもとれていたのに45歳を過ぎたらもう速い球を追う動体視力が低下して、あっという間に球を後ろにそらしてしまう。さすがに速い球でのキャッチボールはもうできなくなった。視力低下は集中力も下がる。長い間パソコン画面や、細かい資料などを見ていられない。眼鏡は、近近、中遠、遠近と3種類の老眼鏡を買う羽目になり、それでも肩こりや首こりは絶えない。眼精疲労も日常的である。私は50歳ごろまでは旅行などの所謂非日常を楽しみにしていたのであるが、旅行するのには身構えるようになった。4年前は学会で妻と1週間ローマに行ったが、あちこち歩いて見て、何があったか覚えていないまま帰国したが、2週間は体調不良に悩まされた。昨年も、カナダのバンクーバーに学会に夫婦で出かけたが、現地で時差ぼけに遭い、回復してくる頃にはもう帰国し、やはり帰国後2週間は体調不良だった。最近は東京に2-3泊しても、帰ってくると4-5日は不調である。楽しいことのあとには必ず、不調が訪れるようになった。理解しているつもりでも、この思うようにならない身体の状態は予防も回避もできない。あえてよかったことと言えば更年期障害と言われる症状が実感できたことである。男性にもホルモン療法がほしい気がする。男性ホルモン低下のせいか女性に対する本能的興味は低下し、その代わり男女関わらず、その人の深い人間性を見たくなってきた。この人は何を考えているのか、真実を話しているか、嘘はないか。人は顔面筋の微細な動き-微表情-に感情が表に出るらしい。手の動き、肩の動き、上半身の動きに真実が見えることがある。実に興味深いがここではこれ以上言及しない。
  もともと医者としても、学問的探求心は旺盛な方ではなかったが、それでも何人かの素晴らしい恩師のお陰で現在まで医師として何とかやってこれたような気がする。5年前に知り合ったマイクロ波治療の大阪の先生との出会いが、私の残された医師としての人生を変えた。その研究内容や学問的な姿勢に魅せられた。人柄もよいこともあり、学会や研究会に子宮筋腫や子宮腺筋症のマイクロ波治療の研究会に積極的に参加してお会いする機会に恵まれた。もともと心の隅にこの分野の知識があったので、開業医でもできるのじゃないかと思い実行してしまった。今はこの治療にはまっている。また、この疾患の患者さんは多く、外来手術で短期治療でも9割はうまくいくので喜ばれる。昔から頭の隅にあった治療を実現できたのは優秀で人間的に尊敬できる先生との出会いが大きかったからだと思う。自分なりにその技術を磨いていくことができれば、こんなに心躍ることはない。昨年は、英論文まで書いてしまった。自分としてはいままでにない世界の扉を開けた気がする。自分自身の医師としてのピークは過ぎているはずなのに、何故か心躍る。さらに発展ということは簡単ではないが、もっと若ければ・・・などと考え、妄想はつきない。若い先生には学問的興味が何かあれば、それを温めているといつか日本や世界のどこかに優れた先生がいて、よい出会いがあり飛躍的に伸びるときがくることがあると言いたくなる。出会い・情熱・努力が人生にはいかに大切なことかとこの年齢になるとわかる。

  「大丈夫ですか?」と若いインストラクターの女性にのぞき込まれて、我に返った。手足を動かし、麻痺がなさそうなのでゆっくり起き上がってみた。脳への酸欠だったのだろう。「大丈夫そうです。」と返事をしたら、笑って戻っていった。周りの人は、「頑張りすぎたね」とか、「水分とってね」とか、あまり心配はしてくれていなかった。何だか、寂しい。自分の身体に聞いてみても、「やり過ぎだ」といっているようなので、その日は帰ることにした。老いを再認識しつつ、学問的探求心を忘れないようにすることは、人生の後半を生きる意味を考える上で大切にしたいものだ。
  次回は、毎年アメリカ心臓病の学会に演題を出し、いつも新しいことに挑戦し続けている「はらだ小児科医院」の原田健二先生にお願いいたします。


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