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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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プライマリケアということ
本間医院 本間 真紀子
 7月、出身大学から一通の郵便物が届きました。時下、先生におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。このたび、○○学生が先生のご指導を希望しております。つきましては、実習の主旨をご理解の上ご指導を賜りますよう、何とぞ宜しくお願い申し上げます。○○学生のレポート:今回の実習で先生のもとで見学を希望した理由は、当大学の卒業生で秋田県出身の先生が秋田県に戻ってどのように働いているのか、どうしてその地を選んだのか実地見学を通じて学ばせて頂きたいと考えたからです…。 昨今NHKの連続テレビ小説〝梅ちゃん先生〟でも取り上げられている女医さん、ようやく時の人になったかな?、というのは冗談で、浮かれている間もなく、勉学に燃えている後輩をどのように迎え入れたらよいか、カリキュラムを真剣に考え始めました。
 そもそも家庭医、プライマリケアとは、そして理想的な家庭医とはどのような医師をいうのでしょうか。1,近くにあって、いつでも何でも診察してくれる。2,診断、治療が的確で、その説明をきちんとしてくれる。3,入院による診断・治療が必要な時は、速やかに適当な病院を紹介してくれる。
 2011年4月1日、日本は国民皆保険制度達成から50年を迎えました。この比較的短い期間で、日本は平均寿命など、いくつかの健康指標において、世界一を成し遂げました。いったい何が、日本国民の健康を改善させたのでしょうか、いかにして、世界最長の平均寿命を実現したのでしょうか、日本は果たして、今後も高い健康水準を維持できるのでしょうか。ロンドンオリンピックが盛会のうちに幕を閉じたイギリスの医学雑誌〝ランセット〟が、このような日本に注目して発刊した、〝日本特集号・国民皆保険達成から50年〟、が昨年9月発刊されました。その中で、「今までの日本」の最大の成果は、低コストで国民の良好な健康指標を実現し、国民の間での公平性を徐々に高めてきた結果、と結論づけています。しかし「これからの日本」の財政的持続可能性は、人口・経済・政治の諸要因によって脅かされていること、更に将来、健康長寿維持のキーワードは3つ、1,高血圧管理、2,禁煙、3,プライマリケア、と書き記していました。今回は医学生の来訪にあわせてプライマリケアに焦点をあわせてみたいと思います。国の医療の根幹はプライマリケアにあり。その役目は、長年各国共に一般開業医が担ってきました。数々の偉業を成し遂げた日本ですが、しかしこれからの問題点も山積みです。あまりに細分化された診療体制もまた、患者側に不利益であるばかりでなく、医療費の膨大な増加を招いている要因の1つでもあります。体のケアと心のよりどころを併せ持った家庭医の方向性が、今後の日本を変えるといっても過言ではないのです。
 8月23日医学生の来訪の日が来ました。彼女は、両親が医師という家庭に生まれ、この職業の大変さもやりがいも日常生活で肌で感じて育ってきている医学部3年生です。 患者さんに紹介しながら、外来診療が進んでいきます。〝聴診させて下さいますか?〟〝どうぞどうぞよーく聴いて勉強して下さいよ〟と皆さんとても協力的で、なごやかに時間が過ぎていきました。しかし中には、入院が必要な患者さんもいて、病院や診療科の選択、担当科長への電話依頼、引き続き紹介状の書き方、など慌ただしい場面もあります。咳や痰で受診する方の中には、一見風邪かなと思っても肺炎を併発している方や、よくあるお腹の痛みも、中には急性虫垂炎のように緊急外科治療が必要な病態も混在しているのがプライマリケアです。しかも日本のプライマリケアの他国との決定的な違いは時間的制約です。短時間で効率良く正確に、しかも生命的な危機を回避できるような身体所見を得る訓練は、大学病院の入院病棟では学ぶ機会は少ないのが現状です。そんな2日間に彼女は、プライマリケアの中に医療の本質を見抜いてくれました。
 実習後のレポートから:今までの病院実習でお世話になった大学病院とは違って、先生と患者さんの間には長い間の信頼関係があって、その中で先生が患者さんの発する小さな信号にも注目し耳を傾けてきたからこそ、今どんな言葉をかけるべきか、即座にどんな対処をすべきか、ということがわかるのだなと思います…。そして患者さんにとって、検査やお薬以上に、長い間お世話になっているかかりつけ医の言葉の影響力は大きく、同じ内容でもどのように伝えるかということが患者さんのモチベーションを左右し、結果的には患者さんの治療効果にも関わってくるのだなと思いました。
 同門の秋田大学医学部長谷川仁志教授は2年前から精力的に医学教育改革に着手しています。雑誌「AERA 7月号」で、全国の5人の教授に注目し〝本当に力がつくおもしろい大学の授業?日本のサンデルを探せ?〟を掲載しました。その冒頭に長谷川教授の、〝医は仁術〟と銘打って、プライマリケアについての1学年目からの力の籠もったロールプレーイング授業風景が取り上げられました。記事には、秋田県からもう1人、国際教養大学のケネス・キノネス教授も熱いメッセージを投げかけ、秋田県の教育レベルの高さが偲ばれました。同じ頃、プライマリケア領域の3つの学会が合併して日本プライマリケア連合学会が誕生しました。この学会の大きな目的は、家庭医・病院総合医を日本の医療システムの中にしっかり根付かせることです。では、諸外国事情はどのようでしょうか。家庭医先進国のオランダでは、国民のほとんどが家庭医が1番質の高いケアを提供してくれると考え、登録医制度を利用し、結果的に保険医療件数の95%をカバーし、その費用は全医療費の7%に過ぎない現状にあります。日本では〝登録医はアクセス制限につながる〟〝病院の方が医療の質が高い〟見方が根強いようですが、しかし登録制度は裏を返せばアクセス保証でもあり、またプライマリケアだけで90%以上の病態がカバーできる実際や、更に医療費削減実績も鑑みると、今こそ、国民皆保険を崩すことなく〝病気が治る力・健康になる力〟を伸ばしていく医療制度を、国民・医療人双方から再構築すべき時がきたと考えます。
 〝これからの彼女の医師人生に幸あれ、そして日本の医療に幸あれ〟
我が後輩と過ごした2日間は、思い起こせば、自身にとって最も実りあるひとときとなりました。
次回はながぬま内科の長沼晶子先生にお願いしました。


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