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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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1984
秋田県立脳血管研究センター 石川 達哉
 無理に脈絡をつけて、1984について考えてみました。
 1984と言っても、ジョージ・オーウェルの小説のことでもありませんし、Qと9の字は異なりますが村上春樹の昨年刊行されたベストセラーのことでもありません。この西暦年は私が医学部を卒業した年であり、すなわち医師免許を手に入れた年でもあります。すなわち、履歴書などを書くときには、私にはこの年は私にとって最も重要な年号になります。医師にとっての属性の中で、専門科、卒業大学、卒業年はまさに最重要事項(それだけで判断ができてしまうような)のようです。
 さてそんな印象深い年号ですが、はっと思い出そうとしても、実際のところ社会で何が起こっていたかは全く記憶に無いのです。それまでのぬるい学生生活とは全く違って、医師としての社会人生活が始まり、毎晩いつ終わるとも知れない土日もない大学医局での研修生活が辛かったこと、先輩から怒られたネガティブな感情が主に、辺縁系のあたりで思い出されます。あまり視覚的あるいは叙述的な細部にわたる記憶はネットワークの中に残っていないようですが、簡単に計算してもすでに25年余、ちょっと硬い言い回しでは四半世紀以上が経っているわけですから無理はありませんよね。
 ではこの年に社会で何があったか?ちょっと気になったので調べてみました。Wikipediaに1984と入力するだけで、ごっそりと情報が帰ってきます。当然昔はネットなんてありませんでしたが。
 そう、オリンピックの年でした。
 日本中が金メダルを期待したマラソンの残念な結果は、若い医者の詰めている部屋で見たことは覚えています。その頃はマラソンといえば男子だけの種目でした。
 他にはこの年には、あっと驚くような社会的事件というのは無かったようです。オリンピックのことを思い出したら、それに関連して印象深い、これは1984年の出来事だというのにめぐり合いました。
 まず医者になって働き始めて緊急の呼び出しで必要になるということで、電話を自分の部屋に引いたのは、その年がはじめてです。それから25年で電話はめいめいがポケットの中に入れているものになってしまいました。固定電話はもうつけていませんが、電話の権利ってけっこう高価でしたよね。
 他にも、手術場にあった自動販売機のカップヌードルを1~2日くらい食べ続けて飢えをしのいだ(といっては大げさですね)ことを記憶しています。お金がなかったわけではなくて、お盆の時期で入手が足りない中、家に帰れないばかりか外にも出られず、大学の周りにある食事の出前をしてくれる店が全部休みになり、病院の売店も休みになり、弁当屋も来ず、看護師さんにすがるというアイデアも浮かばず、食料を手に入れる手立てが無くなってしまったのです。あの頃には、すでにコンビニらしいものはあったそうですけど、どこにでもあって、終日営業しているということはありませんでしたし、お盆には大概のお店は休みになるものでした。今だったらお盆に食事に困るということはありえないのでしょうけれど。
 またテレビの録画をビデオで行うことが、ビデオデッキが安価になって庶民の手に届くようになったのもこの頃であったような覚えがあります。この年に私もはじめてビデオデッキを買って、その恩恵(内容は想像通りです?)に浴した記憶があります。
 さてどんな未来を私たちは予想できるでしようか。
 オーウェルの「1984年」は1948年に刊行されていますが、36年後を近未来として予測しています。一方で1984年の人類は25年後の2010年がどんな時代になると考えていたのでしょうか。「2010年宇宙の旅」はアーサークラークが1982年に発表したSF小説で、その後映画にもなりましたが、人類が土星の惑星に行ったり、アメリカとソ連が最終戦争の瀬戸際だったりと、大分今の現実とは異なって描かれています。ただこの映画と同じように未来は楽観的で、かつ予測可能と考えていたと思います。でも私個人としては、大層に社会の事まで考えて未来を展望したりはしていなかったことは確かです。私個人としては早く一人前の医者になって、先輩から罵倒されないようにしようという、扁桃体に由来する念願だけがあったような気がします。情けないですけれども。
 現在は1984年の頃に比べたら著しく社会の閉塞感が強く、日本という国をみても対外的にそれほど希望や自信がもてない事を感じます。(マスコミをはじめとするみんながあまりにそう言っているから、そのような気分になるのかも知れませんが。)あと25年後には何がどうなっているのでしょうか。
 人間が、その社会のカオスの中で、実際にリアルに確実に予測できるのは、明後日くらいまでのことかもしれません。それが1984という数字からの脈絡で考えさせられたことです。
 せいぜい明日も楽しくやろうっと。



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