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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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C型肝炎とともに
市立秋田総合病院 中根 邦夫
  原因不明の肝炎が1989年C型肝炎ウイルス(HCV)発見により、その原因が明らかになりました。この年は昭和天皇が崩御され、平成の元号が始まった年です。この時よりC型肝炎との戦いが始まりました。C型肝炎患者数は約150万人と試算され「国民病」とまで言われていました。1992年バルセロナオリンピックで水泳の岩崎恭子さんが金メダルを取った年に、C型肝炎に対してインターフェロン治療が初めて承認されました。それ以前は肝庇護療法のみでしたが、インターフェロンにより抗ウイルス療法が可能になりました。そのため今まで根本的な治療法がなかった多くのC型肝炎患者さんが治癒を目指してインターフェロン治療を行いました。当初のインターフェロン治療は1~2週間連日投与を行いその後週3回注射を24週間行う治療でした。この頃私は秋田大学を卒業し、第一内科に入局いたしました。当時第一内科では5つの診療グループがあり、現市立秋田総合病院理事長の小松眞史先生が肝臓グループを率いていました。私も肝臓グループに入れて頂きC型肝炎の患者さんにインターフェロン治療を行いましたが、副作用との戦いでした。高熱と食欲不振で体力がないと続けられない治療でした。副作用に耐え週3回、24週間、インターフェロンの注射に通っても、ウイルスが消えて治癒した患者さんは1割にも満たない悲惨な結果でした。そのため外来にはインターフェロンで治らなかった患者さんやインターフェロン治療できない患者さんが強力ネオミノファーゲンCの注射に多数来ていました。10年間はインターフェロン単独療法が続き、連日投与期間の延長やインターフェロンαとインターフェロンβの組み合わせ、インターフェロンβの1日2回分割投与など様々な投与法の工夫が試みられましたが治療効果に大きな改善は見られませんでした。この間新規の肝炎ウイルスの探索が盛んに行われ、HGV, TTV, SENVなど新たな肝炎ウイルス候補が発見され、その都度ワクワクしながらPCR(polymerase chain reaction)を夜中まで行っていました。しかし、いずれも肝障害は起こしますが肝炎ウイルスとは認められませんでした。2001年インターフェロンとリバビリンの併用療法が認められ治癒率は20%まで上昇しました。リバビリンは内服薬で、作用機序がはっきりしない薬ですがその後のC型肝炎治療に2つの事で大きな意味を持ってきます。一つには治療効果を向上させる点、もう一つは副作用で貧血をきたすことです。この貧血で治療に難渋させられる結果となりました。2004年Peg-IFNとリバビリンの併用療法が認められ、治癒率は著明に向上し50%になりました。Peg-IFNはインターフェロンにポリエチレングリコールを付加し、体内で分解されにくくした製剤であり、週1回投与で済むようになりました。また、以前のインターフェロンと比べて副作用も軽くなり、患者さんにとっては、格段に治療が楽になりました。しかし治療期間は48~72週と延長され、治療効果は向上しましたが、リバビリンによる貧血に悩まされ、リバビリン減量せざるを得ない症例が増えました。また治療期間が長くなったことで患者さんの経済的負担も大きくなりました。この頃私が経験した患者さんで40代の女性患者さんがいました。Peg-IFNとリバビリン療法を開始し、治療は順調に進みHCVRNAも陰性化していましたが、突然受診しなくなりました。心配になり自宅に電話したところ、子供が進学するので経済的に治療を継続することができないとのことでした。やむなく治療を中断し、その後も受診することはなく、苦い思い出になってしまいました。その後2008年よりインターフェロン治療に対する医療費助成制度が開始され、経済的にも治療受けやすくなりました。HCVの研究も進み分子生物学的手法を用いてインターフェロン治療の効果予測するISDRやcore領域のアミノ酸変異などが報告されるようになりました。2011年には直接作用型抗ウイルス薬であるテラプレビル、2013年にはシメプレビルが承認され、Peg-IFNとリバビリンとの3剤併用療法が行われるようになりました。治癒率は88%まで向上しましたが副作用も多く、私の経験した患者さんはうつ状態になり、幸い治癒しましたが、今でも当時は大変だったとおっしゃっています。治癒率は向上しましたが、Peg-IFNとリバビリンによる副作用があるため、高齢の患者さんや貧血のある患者さんは依然として治療できないのが現状でした。2014年にインターフェロンフリーの治療であるダクラタスビル/アスナプレビルが承認され、内服薬で治療ができるようになりました。この年がC型肝炎治療の大きな変換点でした。その後毎年新たな薬剤が承認され、現在マヴィレット、ハーボニー、エレルサ/グラジナ、ヴィキラックス、ジメンシー、ソバルディなど、いずれも治癒率は95%以上と著明に向上しました。また副作用も少なく、高齢者でも安全に治療ができるため、当院ではインターフェロンフリーの治療を行った患者さんの半数以上が70歳以上の高齢者の患者さんです。平成元年にHCVが発見されて、当初1割未満であった治癒率が、平成の終わりには95%以上になり、C型肝炎の治療法はほぼ完成したと言えます。平成の時代はまさにC型肝炎との戦いの歴史だと思います。一つの疾患の克服する過程を実際に診療に携わりながら経験できたことは非常に有意義でした。次の時代は残された数%のC型肝炎患者さんと多くの肝細胞癌患者さんのために診療に励んでいきたいと思います。
  次回はいつも大変お世話になっているくらみつ内科クリニックの倉光智之先生にお願いしました。


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