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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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愛すべき生り木
秋田赤十字病院 神 敏郎
 庭や街の緑が季節とともに移り変わってく姿に、心が癒される。郷里、弘前市の実家には生り木がある。梅、イチジク、柿、梨、実はつけないが琵琶もある。昔はサクランボ、栗、胡桃、リンゴ、ブドウ、クコもあった。古い家では生り木を植える習慣があった。凶作の時でも、生り木があれば、飢えをしのげるからと聞かされた。子供のころはよく手伝わされた。親が年をとり再び手伝うようになり、今では私ども夫婦に収穫、加工の役目が回ってきた。なかなか大変である。秋田市から160km離れた弘前へ当番が当たっていない週末、時間を見つけて出かける。伝来の方法に耳学問、本を参考に格闘する。
 7月に入ると、梅の収穫である。味梅と豊後の2本の木があり、味梅は老木で巨大であるため、実が落ちるのを待って、収穫する。両親が元気だったころは毎日収穫し、梅干しにしていた。現在は、たまの週末に出かけ拾うだけなので収穫量は少ない。そのまま食べたり、料理に使う。豊後梅は短時間に熟れることがなく、また樹高が高くないため、梯子を使ったり登ったりして、一度に収穫する。収穫したあとが大変である。梅酒や梅干しに加工する。梅酒用3L瓶5本分確保したあと、豊後梅全てを梅干しにする。多い年では50kgほどあり、数日間塩漬けの後、1個ずつ叩いて種を取り、再び2、3週間紫蘇の葉とともに塩漬けにし、この間、焼酎を噴霧しカビが発生しないように気を配る。土用のころの天気の良い日に3日間ほど強烈な日光に曝す。最後に昔より使用している甕に漬ける。津軽地方の梅干しは他と異なり、梅を1個ごとに紫蘇の葉に丁寧に包んで漬ける。収穫の多い年では2、3年分の量になる。私の毎日の弁当のお結びの中に入っている。梅酒は風邪の薬として、または料理に使う。梅は我が家では代々健康食と信じられている。
 7月から秋にかけてはイチジクが実る。年により生育が異なり、また鳥の好物にされることもあり、年により収穫量の差が大きい。イチジクの枝はよくしなるので、鉤を使い枝を手もとに引き寄せて採る。熟した実はそのまま食べても甘いが、一度に食べられないほど大量な時は、甘露煮にするが、砂糖を加える必要がないほど糖度が高い。保存がきき、年末、翌年まで楽しめる。ありふれたお菓子よりよほど美味しい。お茶の友として、手間をかけたことを思い出しながら味わう。
 庭には4本の柿の木があり、種類が違い、収穫時期が約1カ月半に分散される。どうしても1度だけで全てを収穫しきれない。いずれも高さが5mを超えるので、梯子で十分カバーできないため、木に登らなくてはならない。ご存知のように柿の木は折れやすく、危険を伴う。一度、木が折れ、2mの高さから転落した。幸いなことに普段の庭の手入れが悪いため低木や下草がクッションになり、かすり傷で済んだ。2本は甘柿で熟れるまで待てばそのまま食べられるが、月に多くて2度しか弘前へ行けないため少し早めに採る。残りの2本は渋柿である。結論として、少ない帰郷時間に早めに収穫し、渋対策をする。アルコールで渋を抜くか、干し柿にするかである。アルコールによる渋抜きは割と手間はかからないが、抜けた後長期保存がきかず、1,2週間で食べてしまわなくてはならない。ご近所、知り合いに分けるのだが、もともと柿の木のある人には、もう沢山だと断られ、ない人は、同じ時期知り合いから既にもらっているので、迷惑そうな顔をされる。うまくいかないのである。こういう事情を考えると干し柿にすることがベストである。毎年500個以上の柿の皮を剥くのは大変である。二人で半日ずつ4日間ほど時間が必要だ。包丁で剥いていると、親指の皮が薄くなりヒリヒリしてくる。皮を剥いた後ひもで括り干す。大量の柿を干す場所がなかなかなく、確保するのに難儀する。せっかく干したのに年により、雨天が続きカビが生え失うこともある。雪が降るころには柿の表面に白い粉がつき美味しそうな顔つきになる。半分は赤ワインに漬け、程よく柔らかくして食べる。干し柿の方は知人にさし上げると喜んでもらえる。勿論、ワイン漬けは自分が当番で車を運転する可能性のある日は食べられない。
 梅、イチジク、柿は春先にアメシロ退治の薬剤散布は必要だが、あとは手間をかけなくても育ち、我々でも容易に収穫できる。このように手間がかからず保存がきくので昔の人は凶作に備え、生り木を植えるように子孫に伝えていたのだろう。
 最近、野菜作りをする人が多いようだが、生り木と付き合うのと楽しみ方が違うだろうか。
 人に「どうして日焼けするのか」と問われることがある、答えは分かっていただけたと思う。
 収穫は楽しいことが多いが、時には自然の速さに急かされていると感じる時もある。これからも愛すべき生り木との会話術を磨いて楽しむつもりでいる。

 次のランナーを木村洋元先生にお願いしたいと思います。当院の軽音楽部のボーカルであり、隠れた音楽評論家でその博学ぶりは専門家はだしです。とくに、マイケル・ジャクソンについては尽きることを知りません。ご期待ください。



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