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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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「古川」をブラ歩き
阿部クリニック 阿部 豊彦
 NHKの人気番組、ブラタモリ。タモリさんが古地図を手に街歩きしながら、街並みに残る歴史の痕跡を探る番組ですが、お好きな皆さんも多いのではないでしょうか。今回は、これをまねて、当院の近所をブラ歩きしてみましょう(草彅剛さん風)。
 当院は国道13号線の十字路(四ツ小屋入口)を仁井田側に曲がり、100m程進んだ位置にあります。この道路に入ってまもなく(当院より手前)、小さな橋があり、その下には道と交差して左右に川が流れています。古川という名称で、幅10m程度、普段は川底も見えそうな浅く穏やかな小川です。天気が良く余裕がある時には、私も気分転換がてらこの川辺をブラブラするのにちょうどいい位置にあります。人通りも少なく、季節により川魚、サギ、アヒルなども見られたり、周囲の庭木の変化などを味わうことができます。
 ところが、ひとたび豪雨となるとこの川は一転、水位が急上昇し浸水被害となりやすいのです。数年前にはこの十字路付近の国道も冠水して、主要交通幹線である国道自体も通行止めとなったことをご記憶でしょうか。その際、すぐ横の秋田南消防署前の国道部分は下を古川がくぐって流れる構造になっているのですが、国道が洪水で浮かないようにダンプ数台を重石代わりに国道上に並べて置かれていたのは驚きでした。テレビニュースでもこの浸水騒動の動画が流れ、当院の被害を心配するご連絡をいただきご心配をおかけしました。幸い、橋を渡って当院側はやや小高い高低差があり、浸水被害は受けずにすんでいました。
 地図で確認すると古川は四ツ小屋地区のやぶれ沼に発して逆Uの字型を描いて当院付近を通過した後、下流では秋田南大橋の横で雄物川に真っ直ぐに向かい、一部はここで排水機場樋門を介して雄物川に直接排水されています。本流はここで直角に右折するように構築されており、御野場、大住地区を流れて猿田川に合流します。この流路周辺一帯で度重なる浸水被害が繰り返し起こってきました。これに対し、秋田市では排水樋門で排水ポンプ車による緊急排水を行ってきましたが十分な解決策とはなっておらず、現在、新たな治水対策事業を進めているようです。
 ここで、ブラタモリ番組では学芸員にあたる役柄でしょうか、近所のご老人から何気ない一言を数年前に耳にしました。「雄物川本流は昔、ここを流れていて、河川工事をした後に残った川だから、古川という名称なんだよ」。え!知りませんでした。驚いてネットで検索してみると、それを裏付ける内容が様々出てくるではありませんか。
 かつて土崎まで北に延びていて秋田市内で洪水被害を繰り返す雄物川に対して、大正時代~昭和初期にかけて、新屋から直接日本海に注ぐ放水路を造る大工事が行われていたことは知っていました。しかし、今回の古川に関しては、江戸時代初期のことでした。雄物川は上流より全川にわたって蛇行が著しく、古くから流域に水害をもたらしてきました。江戸時代となり佐竹氏が秋田へ転封した頃にも、秋田市付近の流域でも頻繁に大洪水に見舞われ、城下までその被害は及んでいたそうです。そこで、万治2年(1659)、秋田藩家老 梅津半兵衛利忠が藩の許可を得て、仁井田付近を大きく蛇行していた雄物川の河道を真っ直ぐな流路とする堀替工事に着手、15年の年月をかけて付け替えました(秋田河川国道事務所ホームページより)。その際の状況を国土地理院地図・治水地形分類図(図1)で見ていただくと、なんと古雄物川の流れはなんと現在の古川そのものです。岩見川との合流部から大きく蛇行していた古雄物川の根元の部分、つまり雄和芝野付近と現在の秋田南大橋付近の間をショートカットとする流れに造り変えていたのですね。
 さらに地図を当院付近で拡大してみましょう。ちょうど現在の古川から南側には帯状に濃い横縞の「旧河道(明瞭;比高が判別できる)」で表示され、ここに四ツ小屋入口十字路や国道もあります。この領域で浸水被害が著しかったのは、現在もなお地高がやや低く、古雄物川のための高低差の痕跡なのでしょうか。ちなみに当院あたりは薄い横縞の「旧河道(不明瞭;比高は判別できない)」で表示され、現在はやや高く土地が積まれているものの、かつてはやはり古雄物川の大いなる流れの中に位置していたのと推測されます。また    当院より先には「微高地(自然堤防)」の一帯があり、ここにはかつて仁井田役場や商店街があったことなども納得できます。
 当院のあたりを壮大な雄物川本流が流れていたことを想像するだけでも驚きですが、ブラタモリ的に表現すると、次なる専門家が地層を覗きながら待ち受けてくれていました。昨年9月26日付けのさきがけこども新聞の紙面でした。読まれた方も多いかと思われますが、秋田大学の火山学者、林信太郎教授が書かれたもので、「秋田市の地面の下には・・・ 巨大な谷が埋まっていた!」というタイトルの内容でした。数万年前の氷期には海面が下がり、川の流れの勢いが増しての地面がえぐられて、60~90mの深さの巨大な谷ができあがったそうです。その谷は秋田市を南北に走っていましたが、何と仁井田付近の走行はまさしく先ほどの古雄物川、現代の古川そのものでした。その当時の当院あたりの風景を3次元的に想像するだけでも、唖然としてしまいます。
 番外編ですが、コロナ下で巣ごもりの間、日本列島や世界の大陸がどのように形成されたかということに興味を持つようになり、この関連の本やテレビ番組に触れることが多くなっていました。それらによると、日本列島は中国大陸の東縁に存在していましたが、3000万年前頃から背弧開大というメカニズムで海溝に平行に大陸に亀裂が入り、その後これが開大し日本海となるとともに日本列島の形成にいたったそうです。秋田を含め東北日本は沿海州あたりと意外に北の地域から分裂したらしく、また分裂した後は沈降してしばらく深い海の底にあったようです。さらに遡り数億年前の太古には、地球上の各大陸は離合集散を繰り返し超大陸が出現していました。その頃、日本が形成されるあたりの中国大陸は、遠くオーストラリアや南極の近くにあったという説もあるようです(新版絵でわかる日本列島の誕生 堤之恭著)。
 ブラ歩きのはずが、とりとめのない話となってしまいました。何気なく暮らしている現在の場所も自分で知らなかっただけで、江戸時代初期までは古雄物川、それ以前には深い谷の中、遡ると深い海底、太古には南半球に位置していたかも? とてつもなく遙かな時間の流れの中では、現在の土地形態はほんの一瞬のみの存在なのかもしれません。改めて不思議な感覚を覚えてしまいます。
 最後となりますが、今回の内容を既に知っておられた方々もおられるでしょうし、もしくは異なる情報をお持ちの皆様もいらっしゃるかと存じます。よろしければその情報をご教示いただけますと幸いです。
 次回の原稿は、高校の同級生で、当院の比較的近所で開業されておられますが、古雄物川には関わりのないかと思われる能登弘毅先生にお願いいたしました。


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