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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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秋田赤十字病院 木村 洋元
 Twiceの名曲「Feel Special」を披露し終え、息も整っていない4人の練習生を前に、途中目を潤ませながら食い入るように見入っていたJYPark氏は、感極まった沈黙ののちマイクを持った。
JYP「13人の練習生の中に、私が一番気にしていた練習生がいました。彼女は練習生の期間が一番長く、自分が一番上手くやらなければいけないというプレッシャーがあったと思います。」
自分のことだと気づき、唇を噛みながらきょろきょろと落ち着かないユナ。
JYP「そのプレッシャーが完全にストレスとなって様々な良くない状況を引き起こしたんだと思います。一番長く練習していたのに、最後まで自分の実力を見せられずに、デビューメンバーに選ばれなかったらどうしよう、と。」
うつむき、前に組んだ自分の手をぎゅっと強く握りしめるユナ。
JYP「しかし、曲が始まって、ダンスから全然違いました。とてもリラックスして自信をもってダンスを大きく上手に踊っていました。」
大粒の涙が零れ落ち、指で拭い続けるユナ。
JYP「そして歌い出したとき、細くて不安定な声ではなく、とても力強い声がでました。ユナさんがどれだけストレスを受けて辛かったのか、僕は想像できるので、急に僕が泣きそうになりました。今まですごくこの言葉をいってあげたかったんですが、『本当に上手でした』。」
とうとう顔を手で覆い、声を出して泣き出したユナ。「ありがとうございます」を絞り出す。チームメイトの3人、控室でモニター越しに見ていたライバルチームの全員が同様に涙を手でぬぐい続けている。

 冒頭から何のことかわからないと思いますが、これは、日本人メンバーだけによるKPOPアイドルグループ「NiziU」を生んだオーディション番組「Nizi Project」で私が最も気に入っているシーンです。Nizi Projectはコロナ禍が始まった2020年、暇な夏休み中にドはまりして何度も嗚咽したコンテンツです。以下、WithU(NiziUのファン)にしかわからない形で、なぜNizi Projectが至高のエンターテイメントであるかの考察を挙げて行きたいと思います。
①全員日本人であること。
今どきの女子たちであるが、生来の奥ゆかしさは隠せない。オーディションであるにも拘わらず、俺が俺がの自己顕示は薄味であり、たまに目立っても照れや悲壮感が見え隠れしてしまう。一人一人の背景にもスポットが当てられ、皆「KPOPアイドルになりたい」という強固な決心を秘めて参加しているが、完全な自分本位にもなれず、他者に共感しまくる。そして人のことで全員で泣きまくる。日本人の持つ同調性を全員一定の水準で持っているからか、不穏な波風が立たず、視聴者は安心して参加者たちの純粋さに集中できるのだ。
②最後まで合格人数が明かされていなかったこと。
「他者を蹴落として自分が食い込もう」の真逆の、「なんなら全員で合格しよう」と一致団結させた一番の要因。オーディションにありがちな妨害行為や足の引っ張り合いなど、人間の負の面を一秒も見せることなく、ただただ努力する若者の美しい姿を堪能することができる。参加者中一番の実力者であり現NiziUリーダーであるMAKOの、突出して道徳的なキャラクターも一因になっている。
③JYPark氏の存在。
流暢ではなく、訥々と語られる彼の日本語の金言の数々が、番組の面白さの半分を担っていた。パフォーマンスのスキルについて専門的なアドバイスはいくらでも可能なのだろうが、終始人間性や臨む態度など精神面への言及がいちいち刺さる。自身も現役のシンガーソングライター兼ダンサー兼社長なので、すでに偉人であり、言葉の持つ説得力は尋常ではなかった。
④日本風アイドル観への適応
発表する作品の質の高さを競うのがKPOP界隈であるのに対し、少女たちの成長過程を楽しむのが日本風アイドル観であることは巷で度々話題になる。長く日本で覇権を握ってきたAKB48がその代表で、まだ未熟でか弱い存在の自分だけの「推し」を見つけるのが醍醐味となる。もちろんNizi Projectの参加者たちが目指し磨いているのはハイクオリティなKPOP的パフォーマンスであり、本番における技術的な到達点も見応え十分なのだが、そこに至る練習過程にスポットを当てることで、その進歩や心境の変化を一緒に体験できる。そして悩み、落ち込み、周りが手を差し伸べ、全員の努力でもって打開していくそのカタルシスに、観ている我々の中に親心的な感情が育っていく。そのためNiziUのファン層は女性アイドルグループとしてはあり得ない程幅広い。去年ライブに参戦したが、3世代家族もざらで、小生のような中年でも悪目立ちしないで済んだ。余談だが、強引に連れて行った妻はママさんバレー仲間に「少しMIIHIに似てる」と言われたことに気を良くし、ライブの3時間ひたすら双眼鏡でMIIHIのみストーキング状態であった。
⑤考え抜かれたハイブリッド型楽曲
歌って踊るアイドルなので、音楽的な側面にも触れておく必要がある。Nizi Projectから生まれ、国民に愛される大ヒットとなった「Make You Happy」。可愛らしくも超献身的な歌詞や斬新な高速ラップ、jazzyなアクセントなど見どころはあるのだが、典型的JPOPの範疇に入れるには少しだけ引っかかる感覚があった。何がそう感じさせるのか?前提としてNiziU は「日本人でありながらKPOP事務所所属」、「メインは日本市場だがいずれはKPOPグループのようにグローバル展開したい」、などKとJの間を揺れ動く特殊性を内包してスタートしている。そこで音楽的な一般論だが、KPOPはブラックミュージックのトレンドを意識したような、リズム隊が前面に出た抑揚の少ないBGM的な曲が多い印象。対してJPOPは、A→Bメロから感動的なサビといった王道的な構成が好まれ、聴き手は1曲の中に物語を期待する。更にアイドルジャンルにおいては、KPOPはcoolでJPOPはkawaiiが棲み分けといえる。元々ハイブリッドな存在であるNiziUにおいては、デビューから最新曲に至るまでの全ての楽曲が大概JPOP的ではあるものの、安易に作られてはおらず、端々にKPOPのニュアンスが絶妙に混入されていることに気付く。具体的には、同時に鳴っている楽器の数が少ない、ドラムが重要視されている(オケが打楽器のみのような曲がある、ドラムパターンが複雑である)、サビに歌詞がない曲がある、必ずラップが入る、など。これらはやはりどちらかに全振りしたくない事務所の拘りだと思うのだが、結果的に一アイドルソングでありながらも一筋縄に行かない、音楽通を唸らせる側面になっており、非常に魅力的である。

 以上、50歳にして恥じることなく究極的に趣味全開の文章を垂れ流してしまいましたが、一度思いっきりやってみたかったのでお許しください。これを機会にNizi Projectを観始める方が一人でも増えてくれれば本望です。
 次回、元同僚で5月に開業された辻正博先生にバトンを渡したいと思います。


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