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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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あきた東内科クリニック 成田 琢磨
 あきた東内科クリニックの成田琢磨です。今回、ふくおか内科クリニックの福岡勇樹先生からペンリレーのバトンをいただきました。福岡先生は、私の出身医局、秋田大学 糖尿病・内分泌内科の後輩で、また、自治医大の後輩でもあります。
 今回は、私の趣味である音楽鑑賞(クラシック、ジャズ)に関連したお話を書くことにしました。最近、当院を受診されている1型糖尿病患者さんが、ヨーロッパを旅行されるとのことで相談を受けました。治療内容を記したカードをお渡しし、時差7時間あり、インスリンの使い方を指導しました(ベースの持効型インスリンを行きは時差分継ぎ足し、帰りは削るのですが)。ワルシャワ経由でプラハ、ブダペストなどに行かれるとのことでした。このことをきっかけに、遠くに押しやられた記憶が鮮明に呼び出されました。2009年、大学医局時代、ヨーロッパ糖尿病学会がウィーンで開催されたとき参加できたことです。一度はウィーンに行きたいと思っていて、幸運にも演題がポスター発表で採用され、クラシック音楽の“聖地中の聖地”を訪れることができました。
 ウィーンを中心に活躍した作曲家でマーラーという方がおります。私は中学時代にマーラーの曲に出会い、衝撃を受け、本格的にクラシック音楽を聴くようになりました。中学、高校と吹奏楽部、大学時代はビックバンドでトランペットを担当していたので、金管楽器が大活躍するマーラーの交響曲は魅力満載でした。しかし、クラシックファンでなければ恐らく知らない方も多いと思いますので、マーラーについて少し解説します。マーラー(Gustav Mahler 1860-1911)はボヘミア生まれ、ユダヤ人で、後期ロマン派に分類され、かのウィーンフィル、アムステルダム・コンセルトヘボー、ニューヨークフィルの指揮者もつとめた作曲家です。交響曲や歌曲が有名ですが、特に交響曲は1曲1時間30分以上かかるものもあり、第8番は“千人の交響曲”のタイトルのごとく、オーケストラと合唱で数百人の演奏となり、一般の方が耳にすることは少ないかと思われます。ヴィスコンティの“ベニスに死す”に、第5交響曲の第4楽章のアダージェットがBGMで使用されたのは有名です。小中学校の音楽室にある、有名作曲家の年表に出ることもない、また、クラシックファンでも好き嫌いがはっきり分かれる作曲家です。妥協を嫌い、ウィーンフィルの楽団員とも対立する事しばしと、伝えられ、晩年はニューヨークに渡り、溶連菌による弁膜症や敗血症を患い、最期はウィーンに戻って亡くなっています。神経症(妻のアルマ・マーラーの浮気が主因かとのこと)とも伝えられ、フロイトの診察も受けていたと、伝えられています。
 私がマーラーに心酔するようになったのは、中学校2年の時です。吹奏楽部の友人との休日練習(コンクール近くになると日曜も練習)の帰り道、時々寄り道する喫茶店兼オーディオ屋さんで店主から奨めてもらったのがきっかけと記憶しています(私の出身は秋田県大館市)。今考えると店主が道楽でオーディオ並べて、音比べをして愛好家が集まっているお店、昔は地方の街にもこんなお店が何軒かありました。カセットデッキなど、新製品が出るとマラソン再生して、耐久性どうこうとか述べる。吹奏楽やっているのだったら、マーラーの1番交響曲聞くといいと、レコードをかけてくれました。今まで聞いたことのない大編成、金管楽器が思う存分暴れまわる、しかも重厚長大な曲構成、もちろんモーツァルトやバッハのような洗練さはなくワーグナーをさらに過激にした感じ。一瞬で心酔してしまいました。以降、約50年間、音楽を聞く時間のかなりはマーラーのシンフォニーで占められるようになりました。マーラーのファンは男性が圧倒的に多いといわれており、彼の音楽の特性を言い当てているように思います。
 時は流れ、2009年ヨーロッパ糖尿病学会に演題が採用され、ウィーンに行けることになり、小躍りしました。ところが採用されたのはいいのですが、この年は新型インフルエンザが流行した年でした。はじめは対応が大変で、学会(国内もふくめ)行って来たら、1週間診療禁止などの対応ありました。もちろん新型コロナのパンデミックのことを考えると、雲泥の差ですが。
 学会は9月末で、そのころは致死率も季節性インフルエンザと同程度と分かり始めており、渡航してもOKということになりました。実はウィーン滞在中、演題発表終わった夜発熱してしまい新型インフルエンザに罹患したのかもしれません。翌朝には解熱、まあ時効ですか。学会期間中、折角ウィーンに来たので生のクラシックということになりました。ウィーン国立歌劇場では学会期間、チャイコフスキーの“スペードの女王”がなんと小澤征爾(ウィーンフィル、国立歌劇場の音楽監督最終年)の指揮で演奏され、拝聴しました。言葉がロシア語(前の椅子の背もたれに英語の字幕が出てなんとなく筋はわかったが・・・)でしたが、音響、圧倒的な歌劇場の雰囲気は感じられました。最終日にこれもウィーンフィルのニューイヤーコンサートで有名なウィーン楽友協会大ホールのチケットを入手し、これも超有名な会場(ハプスブルグ家の財力も含め)に圧倒されました。オケはウィーンフィルではなく、営業用に集められた演奏家集団という感じで、一般受けする、モーツァルトの魔笛、ヨハン・シュトラウスの美しく青きドナウ、ラデツキー行進曲などでした。ウィーンの雰囲気を満喫しました。
 “地球の歩き方”を読んでいたら、マーラーを含む有名作曲家のお墓の場所が書いてあり、マーラーの墓地を尋ねることにしました。ベートーベンが遺書を書いたので有名なハイリゲンシュタットの近くのグリンツィング墓地ということで、路面電車と歩きでたどり着きました。生前マーラーは「私の墓を訪ねてくれる人なら、私が何物だったか知っているはずだし、そうでない連中にそれを知ってもらう必要はない」と話していたそうで、唯我独尊の彼をよく表した言葉です。墓は(写真:成田撮影)質素で、実は、かの妻アルマと背中合わせに配置されておりました。埋葬されている方のリスト、お墓の位置が入り口に案内されていましたが、ドイツ語で今一つわからず何度か見直してようやく探し当てました。その日は小雨ふる、冬の走り、といった日でしたが、マーラーのお墓に辿り着いたら、教会の鐘がカランカランとなりだし、“ようこそはるばる日本からの客人”とマーラーが歓待してくれたように思えました。
 徒然なるままに書き連ねたお話にお付き合いいただきありがとうございました。次回は同じく秋田大学糖尿病・内分泌内科の医局の後輩で、ほいずみ内科クリニックの保泉学先生にお願いしてあります。


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