2023年7月の大雨、幸い自宅は被災を免れたが、家内の自家用車が水没し買い替えを余儀なくされてしまった。もう一台のSUVは車高が高く難を逃れたと思っていたのだが、年末の定期点検で下回りの腐食が相当進行しており、一度でも泥水に浸かった結果のようで、余命半年の宣告を受けた。延命には多大な費用を要するため、続けて2台目の更新と相成り大きなダメージを食らった。とはいえ、久しぶりの新車はやはり気持ちのいいもので、安全機能、運転支援の充実などテクノロジーの進歩にも目を見張った。運転中の楽しみの一つに音楽鑑賞があるが、最近の車にはCDプレーヤーが装備されていない。準備なしで聴けるのはラジオだけであり、自分が聴きたいものはスマホやタブレットをUSBなり、Bluetoothなりで接続してどうぞ、というシステムである。医師として働き始め、給料をためて初めて買った新車にCDプレーヤーが装着されていて、とても感激した頃とは隔世の感がある。レコードからCD、MP3そして現在のストリーミングやダウンロード等、音楽の媒体の変化がある。流通経路もサブスクリプションが主体となり、併せてカーオーディオも変化してきた訳である。ストリーミングで音楽を流し続けると通信料が莫大となる心配がある。そこで、まずは音楽アプリを通して好きなポップミュージックをダウンロードすることにした。ところがいざ始めてみると、聴きたい曲が極めて少ないことに気付き、わずか50曲前後で好みの曲が思いつかなくなってしまった。音楽の聴き方は人それぞれだが、自分の場合はお気に入りをひたすらヘビーローテーションするタイプなのでこのようなことになってしまったのだろう。一方クラシック音楽も好きなのだが、一つ一つが長大で、スマホの容量も相当食いそうなので早々とあきらめた。もともとクルマではラジオを流しっぱなしにしていることが多かった。そこで最近ではポッドキャストの番組をダウンロード、通勤の行き帰りに種々の情報収集をすることが楽しみの一つになった。 音楽だけではなく書籍もデジタル化が進み、概ね全ての学会雑誌も電子配信になった。勤務先で毎年発行している年報も数年前から冊子の配布をやめてオンラインでの配信にしている。電子化によるメリットはいつでもどこでも入手出来ることや省スペースと保存性、索引やアーカイブの形成による検索性の向上、そして経費と資源の削減効果があげられる。ネット配信により配布先は全世界になり、理論的には読者の増加も期待出来るだろう。しかし、学会誌にしても書籍が配付されていた頃よりも明らかに読む量が減ってしまっている向きも多いのではないか。冊子への愛着やページを捲り読み進む楽しさには捨てがたいものがある。本医師会誌報もデジタル化、電子配信への動きも時々取りざたされているが、自身としては紙ベースでの配付を続けるべきと思っている。
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