留学時に撮りためた８mmビデオを10年経ってようやく整理できた。留学先はアメリカ中西部のうねるように広がる大平原、コーン畑に囲まれた学園町アイオワ・シティ。
その気候は大陸性で、寒暖の変動が激しい。寒い冬を経て４月になると突如暖かくなり、緑が広がる。人なつこいリスたちや新緑を眺めながら春を満喫して歩いていると、向こうからも気持ちよさそうに歩いてくる白人男性、親しげに声をかけてくれる。「二一ハオ」。
ある朝の地元紙トップ記事には、街のシンボル、Old Capitalの屋根が何者かにピンクに塗り変えられてしまったことがカラー写真入りで報じられた。出勤するや同僚に早速その珍事件を話すが、妙に笑っている。0ld Capitalの眺められる部屋に行ってみると、なんと屋根はいつものように金色に輝いているではないか。そうだ、4月1日、April Fool。
秋田に慣れた自分にとってはアイオワの夏は長く、蒸し暑い。コーンの生育には適しているのだろう。映画「Field of Dreams」の舞台となる野球場を訪ねると、外野越しに人間より遙かに背丈の高いコーン畑が広がっている。映画のように、そこに足を踏み入れると消えるのではと、子供たちと恐る恐る入ってみた。ちなみに帰国後のニュースでは、土地を所有する２家族が観光商売で対立し醜く争ったとのこと、失笑。
10月になり急激に気温が下がるためか、一面に鮮やかな紅葉が広がる。屋外でのバーベキュー・パーティーは憩いの定番であるが、紅葉時には晴天でもかなり冷え、豚汁の鍋に人気が集まった。パーティー後の帰宅中にスピード違反でパトカーに止められた。車中の一家を見て「明日の夜、家族でレストランに行き、50ドルを寄付するのなら見逃してあげよう」と微笑んでくれた粋な警官であった。
北国出身ながら初めて経験したFreezing Rain。冷雨が地上に落下するや急激に凍りつく。屋外の車は全体に厚い氷で覆われ、坂道の多い市街路は鏡状となり起立静止もままならぬ。緊急警報がでて子供たちは休校、窓外ではてんやわんやの光景。
冬は極めて寒いが雪は少なく、晴天が多い。コロラドのスキー場への足慣らしにと地元スキー場に向かったが、遂に駐車場に着いてもゲレンデが見えない。なんと、すり鉢状の谷底に向かって滑り降りる、大平原地帯ならではのスキー場であった。
日本にアイオワが報道されるのは、大統領予備選がこの州で口火を切って始まる時のみ。その舞台、州都ディモインをご存じの方は少ないだろう。「マジソン郡の橋」の屋根付きの橋はその近郊である。アメリカ中西部といえば大都市シカゴ、ミネソタ、セントルイスが有名だが、アメリカ農耕地帯の純朴な雰囲気を味わえるのは何といってもアイオワかと思う。
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春夏秋冬
秋田市医師会報のあとがき「春夏秋冬」のご紹介です。
2024年度
