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会長挨拶
 
 秋田市医師会長 福島幸隆
ついに来た!新型インフルエンザ
 秋田市医師会のホームページにアクセスしていただき、ありがとうございます。当ホームページは困った時参考になる確実で身近な情報を提供できることを目指しておりますので、皆様の忌憚のないご意見をいただければ幸いに存じます。

 さて、予期されていたこととはいえ、ついに新型インフルエンザが4月下旬発生いたしました。5月9日成田空港の検疫で国内初の感染者3人が確認され、16日には海外渡航歴のない高校生の感染が確認され、国内発生第1例となり、その後兵庫県、大阪府を中心に感染者が相次ぎました。その後、当県においても6月11日仙北市の女性が新型インフルエンザに感染し入院いたしました。同日WHOはフェーズ6に引き上げ「パンデミック」が宣言されました。7月13日になって秋田市の男性が新型インフルエンザに感染していることが確認され、その後同じ社員旅行の参加者から感染者が相次ぎました。ここに至るまでの秋田市における新型インフルエンザの疑い患者さんと今回の秋田市における発生については4中核病院(秋田組合病院、市立秋田総合病院、秋田赤十字病院、中通総合病院)の発熱外来で対応されていました。秋田市医師会は昨年4月より新型インフルエンザ対策委員会を立ち上げ、菅原担当理事を中心に医師会の採るべき道を行政と協議しながら検討して参りましたが、残念ながら実効性のある方策を立てることができませんでした。新型インフルエンザの毒性や感染力等全く未知のものであり、国の運用指針は示されたとは言え、実際は細かい部分になると財政的支援や医療関係者の罹患時の補償等全く不明であり、こうした点から実質的な行動計画は作れませんでした。我々は新型インフルエンザがH5N1型の強毒性を予想していましたが、実際はH1N1型の弱毒性であり、今回の流行を振り返ってみると身体にとまった蚊をたたくのに手ではなく物差しかスパナでたたき自分の身体にも少なからず傷を作ってしまったかのような印象を受けます。いずれにしろ、この問題の対処は行政が握っており、我々はどういう事態になろうとも市民の健康を守るという使命のもとに一致団結して行政に出来るだけの協力をすべきと考えております。6月19日決定した厚労省の「改訂版運用指針」では、原則としてすべての一般医療機関で診療を行うということになりました。また、新型インフルエンザ患者数は7月23日現在で5,038名となり、ついに5、000人を突破しました。8月7日現在で秋田県内での累計感染者数は43人となっています。この新型インフルエンザ患者の全数把握は省令改正により7月23日をもって終了し、7月24日以降は集団発生と重症者に報告は限定されます。これを受けて県も新型インフルエンザの発生段階を「感染初期」から「感染まん延期」に引き上げた上で、9月から①現在は受診前に発熱相談センターで電話相談を受け、感染が疑われる患者を各地の感染症指定医療機関などに割り振っているが、9月から原則として一般医療機関での診療に切り替える、②すべての疑い患者に行ってきた遺伝子検査をやめ、集団生活を行っていた患者などに限定することになりそうです。しかし、このインフルエンザが変異を起こし人体内で急速に増殖する能力を獲得したり感染力が増強することも考えられ、状況に応じた対処が必要と考えています。新型インフルエンザが発生してから我々医療関係者はずっと精神的に緊張を強いられた状況にあります。弱毒性ながら感染力は通常の季節型インフルエンザより強く、今年秋から冬にかけて襲ってくるであろう新型インフルエンザ第2波にどう対処するか、現在も医師会内で協議が続けられ、市保健所との打ち合わせを経て、市民の皆様にとって最適と考えられる対策を立てたいと考えています。新型インフルエンザを必要以上に恐れることなく、しかし侮らず、新型インフルエンザに関する情報には十分注意を払って、乗り切っていきましょう。
 次に自殺予防対策についてです。6月3日の厚労省が発表しました人口動態統計によりますと、本県の自殺率は37.0と前年比0.5ポイント減となりましたが、14年連続で全国ワースト1位となりました。しかし、県人口が減少する中にあって自殺者数の減少基調を維持できたのは評価されてよいと思われます。秋田市は昨年度から自殺予防対策庁内連絡会議を立ち上げ、この対策の中心に秋田市自殺予防対策ネットワーク会議を置きました。当医師会も昨年度から自殺予防対策を正式な業務とし、早速このネットワーク会議に参加し、一般市民向けミニ講演会や会員向け研修会、掲示ポスターの作成等活発に活動して参りました。秋田市の対策では自殺率を平成28年度までに24.2以下に減少させるということですが、ネットワーク会議での連携を大事にして、当医師会としても努力を続ける所存です。
 次に昨年度から開始された特定健診ですが、秋田県における受診率が市町村国保で29.3%、社保で28.9%であり、平成19年度の基本健診受診率の53.9%から大幅に低下しました。秋田市国保では平成20年度は22.9%と全県に比較して低く、平成19年度の基本健診受診率の43.7%から大幅に低下したのも全県と同様の傾向です。また、秋田市の大腸がん検診は前年度比16.3%減、前立腺がん検診が同じく8.9%減と、特定健診受診率の低下と大きな相関が認められています。ご存知のように秋田県の昨年のがん死亡率は355.4で12年連続全国ワースト1位となっています。そのため、特定健診並びに各種がん検診の受診率向上は喫緊の課題と思われます。しかし、ここで特定健診を改めて考えてみます。特定健診は特定保健指導対象者を選別するための健診と位置づけられ、従来の基本健診のように各種疾病の早期発見・早期治療とは趣を異にしています。特定保健指導が期待通りの効果をあげてメタボリック症候群の該当者及び予備群の減少につながれば、制度の維持に反対するものではありませんが、この事業はもともと医療費適正化計画(医療費の伸びの抑制)の基に立案され、目標値が設定されて、その目標値をクリアできなければ後期高齢者医療支援金の最大10%減という保険者へのペナルティが課されます。このようなペナルティ制度は民間企業で実施するならいざ知らず、国が実施するのは国家による保険者いじめ以外の何物でもないと思います。小泉元首相による経済財政運営と構造改革の結果、現在の医療崩壊がもたらされましたが、この特定健診はがん検診受診率低下をもたらしている意味においても、現時点では国民に新たな健康被害をもたらしていると言っても過言ではないと考えています。ここ数年の健診受診率と特定保健指導の評価を見た上でのことですが、効果が芳しくないようであれば、速やかに廃止すべきと思われます。
 秋田市医師会は、救急医療体制、各種健診・検診、予防接種、広報、健康教育等様々な事業を行っています。一部報道で医師会はいまだに自分たちの権益を守るだけの圧力団体かのように喧伝されるのには、腹立たしいことと思っています。医師会は地域住民の方々にとって一番重要な医療福祉に関して、患者さん、介護保険利用者さんからいろいろお話を伺い、行政に対して不備な点や是正すべき点を代弁しているという自負をもって仕事をしています。また、学校では学校医、さらに職場では産業医として常に身近にいて、市民の健康管理に勤めています。このように医師会活動は多岐に渡りますが、こうした中でも、毎年1月に実施しています市民向け講演会の「医療を考える集い」は秋田市医師会が力を入れている一大イベントです。毎年、一つのテーマを決めて、講演・シンポジウムを行い、市民の皆様からのご質問やご意見をいただいています。本年1月は「アンチエイジングってなんだべ?~若々しく、楽しくいきるには~」をテーマにして開催しましたが、約270名のご参加をいただき盛況でした。今年度は来年2月6日(土)秋田ビューホテルで「介護サービスを考える~上手に利用して明るい未来を~」をテーマに開催予定ですので、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。
(平成21年8月10日)
平成21年8月10日 

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