秋田県の医療と医療制度改革
秋田市医師会のホームページにアクセスしていただき、ありがとうございます。せっかくアクセスいただきましたのに、内容の更新が思うようにはかどらず、ご迷惑をおかけしています。ただ、困った時参考になる確実で身近な情報を提供できることを目指しておりますので、皆様の叱咤激励の声をいただければ幸いに存じます。
さて、6月4日の厚労省が発表しました人口動態統計によりますと、本県の自殺率は37.5と前年比5.2ポイント減となりましたが、13年連続で全国ワースト1位となりました。出生率も6.7で、これも13年連続で全国最下位、がんの死亡率は352.1で11年連続全国ワースト1位、脳血管疾患が175.6で2年連続ワースト1位と、惨憺たる状況が続いています。医療保健分野を担当するものとして、内心忸怩たるものがあります。平成18年12月に「21世紀の医療を守る県民の集い」が開催されましたが、この時のテーマは「秋田のがん医療は誤解されています」というものでした。がん死亡率がワースト1位でかつ地域がん診療拠点病院がその当時1つもないことが、秋田県のがん診療が低レベルではないかとの疑問に答えるべく企画されたものでした。原因の究明には全がん登録のデータが必要となりますので、現時点では不明と言わざるを得ませんが、秋田県で実施されている胃がん登録と大腸がん登録のデータからは秋田県のがん死亡率が高いのはがん患者が多くて、かつより進んだ状態で診断されるためであることが分かっています。従って、塩分、喫煙等の生活習慣を改善させることでがんの罹患率を低下させること、検診の受診率を向上させること、全がん登録の実施が必須であります。全がん登録は平成18年9月から秋田県地域がん登録として始まっておりますが、前2者については住民の意識改革が必要です。しかし、問題解消のための特効薬はなく、息の長い取り組みが必要です。自殺率につきましては全国ワーストであったものの、前年に比べて全国最多の63人の減少となり、官学民が一体となった自殺対策の成果と評価されています。秋田市においても今年度から「自殺予防ネットワーク会議」を立ち上げ、総合的な対策を講じることになっていますが、秋田市医師会も遅まきながら自殺予防対策を正式な業務とし、その委員会を立ち上げたところです。 平成20年4月から後期高齢者医療制度、特定健診・特定保健指導が導入されました。前者につきましては、年金からの天引き過誤問題や一般的に低所得者で負担が減り高所得者は増えるとの説明であったにも関わらず、実際は負担増となる世帯の割合は低所得であるほど高いとの問題が判明しました。また、地域差も顕著であり、野党から提出された後期高齢者医療制度廃止法案が6月6日参院で可決されました。診療報酬においても後期高齢者診療料が新設されましたが、後期高齢者は複数の疾患を有することが多いことや比較的多くの病院・診療所の存在する秋田市にあってフリーアクセスが大きく阻害されるとの判断から当医師会としては、算定には慎重に臨むように会員にお願いしております。いろいろ問題の多い制度ではありますが、政府は骨格を維持して運用面での改善を目指していますので、その動きに注視しているところであります。特定健診につきましては、7月1日よりいよいよ実施に移りましたが、基本健康診査と比べて検査項目の少なさに物足りなさを感じる受診者は少なくないようです。特定健診・特定保健指導はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策として、生活習慣の改善と予防重視への転換が推奨されています。従って、健診よりは保健指導により重点が置かれ、特定健診は特定保健指導の対象者を絞り込むために実施されるものと規定されており、従来の基本健康診査より大分簡素化されているのは事実です。 地域医療崩壊は解決の糸口がつかめず、静かに進行しています。県内では医師数が突出して多い秋田市においても中核病院では、医師確保と病院運営は薄氷を踏む思いと伺っています。特に、産科・小児科の勤務医の疲弊は続いており、秋田市内での里帰りお産はもちろん通常のお産の予約についてもままならない状況にあるようです。これでは出生率の改善は望めません。政府は年間2,200億円の社会保障費自然増の削減を中止しない限り、医療界の過酷な状況に変化はなく、それは市民への医療保健サービスの低下に直結しています。しかし、政府は7月29日の臨時閣議で、社会保障費の自然増2,200億円削減などを盛り込んだ2009年度予算の概算要求基準(シーリング)を了解しました。今後ますます地域に医療崩壊は進んでいくものと思われます。もう医療人の個人個人の献身的努力だけでは何ともしがたい状況に追い込まれています。残された道は、来るべき衆議院選挙において我々の断固とした意思表示をするしかないと考えています。 秋田市医師会は、救急医療体制、各種健診・検診、予防接種、広報、健康教育等様々な事業を行っています。こうした中でも、毎年1月に実施しています市民向け講演会の「医療を考える集い」は秋田市医師会が力を入れている一大イベントです。毎年、一つのテーマを決めて、講演・シンポジウムを行い、市民の皆様からのご質問やご意見をいただいています。本年1月は「認知症を考える」をテーマにして開催しましたが、約400名のご参加をいただき大盛況でした。今年度は来年1月24日(土)秋田ビューホテルで開催予定ですので、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。 (平成20年8月10日)
平成20年8月10日
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