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医療を考える集い
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第32回医療を考える集い
「 介護サービスを考える 」
平成22年2月6日(土)午後1時30分~午後4時30分
秋田ビューホテル・4階
入場無料
 「家で介護せってが? なんとせばいいべ?」
 「父さん、認知症? なんとせばいいべ?」
 「早く退院せってが? んだばどごさいけばいいべ?」

 さて、どうしたらいいのでしょうか。

 近年、国では、病気発症間もない急性期の患者さんは病院で治療し、そのあとの慢性期となった患者さんは病院ではなく「暮らしの場」で家族の介護を受けながら療養するようすすめております。

 この「暮らしの場」はまず自宅、療養するのは患者さん自身。患者さん一人で困難な場合は家族の介護をうけ、さらにその患者さんや家族をサポートするのが医師、看護師、薬剤師、ケアマネージャー、ヘルパー、理学療法士、作業療法士、行政スタッフということになります。そうしたサポートを受けてもなお自宅で療養することが困難な場合、それに替わる特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホームなども「暮らしの場」ととらえ、そこで療養することもできます。そこで行われる療養も広い意味での「在宅療養」と言えるでしょう。

 今回の「医療を考える集い」では、慢性期の患者さんが在宅で療養するにあたって、どのような介護サービスがあるのか。また多岐にわたる介護サービスをうまく利用するにはどうしたらいいのか、皆様と考え、討論したいと企画いたしました。

 多数のご参加をお待ちしております。
プログラム
総合司会   並木 龍一
あいさつ    秋田市医師会長  福島 幸隆
祝   辞   秋田市長 穂積 志 様
         秋田県医師会長 小山田 雍 様
-基調講演-
 「介護サービスと秋田市医師会の関わり」  秋田市医師会副会長   高 橋  正 喜  

-演 劇ー
 「家族の絆 ~老いを迎えて~」    劇団  河辺わさび座のみなさま

-シンポジウム-  司会  加賀谷 学   

シンポジスト
● ケアマネージャー代表
      秋田市医師会訪問看護ステーション管理者  石川 京子 氏

● ヘルパー代表
      やさしい手 本店店長  鈴木 富美子 氏

● 行政代表
      秋田市福祉保健部 介護・高齢福祉課 介護サービス担当 主席主査  丸山  進 氏

● 医師代表
      秋田往診クリニック 院長  市原 利晃 氏

● 医師会介護保険担当
      秋田市医師会 理事  松岡 一志

質 疑 応 答
総合司会(並木龍一)
この様なお寒い中、非常に足元の悪い中に関わらずご参加いただき秋田市医師会として厚くお礼を申し上げます。
 今回のテーマは「介護サービスを考える」ということです。介護というのは突然降りかかってきて、とてもお困りになる場合が多いと思われます。また長期にわたるということも問題点の一つだと思います。今回は介護サービスと医師会の関わり、どうすれば良い介護を受けられるか、色々な立場の方々からお話をしていただくことを考えております。また、在宅医療についても触れてみたいと思っております。基調講演、シンポジウムの後には皆様と活発に意見を交わす時間も設けております。その際には是非積極的なご発言をよろしくお願いいたします。そして今回は会の半ばに劇団河辺わさび座の皆様から介護をテーマにした演劇のご披露がありますのでお楽しみください。
 それでは最初に秋田市医師会会長福島幸隆より挨拶があります。
福島幸隆秋田市医師会長
 皆さん今日は。秋田市医師会の福島と申します。本日は年1回秋田市医師会主催で市民の皆様向けの講演会であります「医療を考える集い」にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。今週は2日までは良いお天気でしたが、3日からは非常に寒い日が続いています。本日はまた一段と悪い天気の中多くの市民の皆様にお運びいただきまして、重ねて御礼申し上げます。さて、本日のテーマは介護サービスを考える~上手に利用して明るい未来~であります。私たちは長生きしますと、間違いなく身体障害者になる日が参ります。前日まで元気にして、翌日亡くなっているのが発見されるいわゆる「ぴんぴんころり」が理想ですが、なかなかそう思い通りにはなりません。人に迷惑をかけてまで生きていたくないと元気なうちは誰でも思いますが、結局は人の助けを借りて生きて行かなければならない時期は長短の差こそあれ、誰にでもあることと思われます。ここでちょっと脱線しますが、1月31日のNHKテレビで夜9時から「無縁社会~無縁死3万2千人の衝撃」という番組が放映され、ご覧になった方も多いと思います。身元不明や親族が引き取りを拒否した遺体が、一昨年32,,000体にも及んだということです。紹介された第1例目の方が、本籍が秋田市川尻の男性で確か60代でアパートで孤独死しているのが数日経てから発見されたとのことで、興味を引かれ最後まで見てしまいました。見終わってから何か寒々とした気持ちになり、奥さんや家族を大事にしなければならないと改めて思いました。また、人が生きるということは、ただ単純に健康であるということ以外に人との絆で支えられているような気がしてなりません。人の絆が蜘蛛の糸のようになって自分を生きている世界に留まらせてくれているといったイメージです。特に男性は、会社と家庭の2つの絆に支えられていますが、退職と同時に会社の絆が断ち切られ、本当なら妻や家族との絆で支えられるはずが、結婚できなかったり、あるいは離婚をしていたりすると自分を支えてくれるはずの蜘蛛の糸が非常に細くてもろいため、簡単に転落してしまうように感じられます。人との絆というのは、我々の発する言葉に置き換えることができると思います。従って、地域において、家庭において、その他いろいろな場所においていろいろお話をするということは、絆を形成するためにも非常に重要なことと思います。さて、ここで話は本題に戻りますが、介護サービスを受けるというのは、これまで家庭内の絆を大切にしてきた人が享受できるものと位置付けられるかもしれません。
 我々は医療を通じて介護を知っているつもりでも、時の流れと共に制度も変わり、新しいタイプの施設が次々と出現してきて、実際知らないことはたくさんあります。今もって介護殺人・心中事件が後を絶ちません。ニュースだけの報道から推測しますと、こういう事例は家に閉じこもり、行政や地域の人とも話しをしない人に多いような印象を受けています。誰かと話をして何らかの絆を持とうとする努力があれば、こうした悲惨なことは起きなくて済んだことなのかもしれません。認知症の夫を抱え、介護する妻は夜も安心して眠れない日々が続いても、夫を施設に入れることは罪悪かのように感じている妻や、施設に入れたとしても、施設の介護に不満な家族、施設に入所した利用者は入浴の日や時間が決められて自宅にいるような自由が制限されること、人数の多い施設では仲良しグループに分かれて心情的な対立もあったり、一非常識な入所者がいたり、介護人の利用者に対する態度等介護に関する問題には枚挙に暇のない状況です。また、最近では介護付有料老人ホームも続々新設され、しかし経営に失敗すると入居時に支払った多額の入所費が戻らない等の報道もされています。こうしたことは知らないでいると不安が大きくなり、心理的に圧迫されます。内情を知ることにより、少しでも不安を小さくすることができると思います。本日は在宅介護・施設介護、そして介護一般に関するサービスについて、介護に関わるケアマネージャー、ヘルパー、行政、医師が一同に会して、介護の現状や今後の課題についてお話しをする予定になっています。フロアの皆様には介護サービスを受けている利用者代表、あるいは在宅介護担当者代表として、シンポジウムに加わっていただきますようお願いいたします。また、途中で家族の絆をテーマに演劇もご覧いただく予定となっています。本日は、どうぞゆっくり楽しんで、勉強していってください。そして、介護サービスの現状を知っていただき、より良い介護サービスを受けるためのヒントを何点か持ち帰る事ができますよう祈念しまして、挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
穂積 志 秋田市長 (代読:伊藤千鶴秋田市保健所長)
 秋田市保健所長の伊藤でございます。本来であれば穂積市長がご挨拶申しあげるところではありますが、所用のため出席できませんので、市長から預かってまいりましたメッセージを代読いたします。
 「第32回医療を考える集い」の開催を心からお喜び申しあげます。また、秋田市医師会の皆様、ならびに本日ご来場の皆様には、日頃から、市政全般にわたり格別のご支援・ご協力をいただき、厚くお礼申しあげます。
 さて、秋田市民のおよそ4人に1人が65歳以上となった今、高齢者は、もはや支えられる側ではなく、他の世代とともに、地域コミュニティの核として社会参加が求められる時代となりました。
 しかし、本市においては、平成20年度に要介護認定者数が約1万5千人に達するなど、支援を必要とする高齢者は年々増加傾向にあります。健康で生き生きと長生きをしてもらうため、なるべく要介護状態にならないようにと、行政と地域包括支援センター等の法人事業者が連携して、様々な介護予防の支援体制を整えておりますが、残念ながら、要介護者の増加抑制には結びついていないのが現状であります。
 ひとくちに介護と言っても、高齢化の加速、世帯構造や家族観の変化など、多くの要因が絡み合っており、介護保険制度の見直しのみで、全ての問題が解決されるわけではありませんが、本市としましても、医療機関や関係事業者、そして地域の人々の協力を得ながら、より効果的で充実した介護サービスを提供してまいりたいと考えております。
 結びに、本日のシンポジウムが、幅広い視点から介護について考える有意義な機会となることを期待いたしますとともに、主催者である秋田市医師会のますますのご発展とご来場の皆様のご健勝を祈念申しあげ、あいさつといたします。
小山田雍秋田県医師会長(代読:斎藤征司秋田県医師会副会長)
 秋田県医師会副会長の斎藤でございます。代読させていただきます。
 本日は皆さんにおかれましては、くつろぎの週末にも拘わらず、この秋田市医師会主催の「第32回医療を考える集い」にご参集賜りましてありがとうございました。本日のテーマは「介護サービスを考える」でありますが、これまで国は、医療費抑制のため医療療養病床25万床の削減と介護療養病床13万床の廃止を決めましたが、昨年の政権交代で新政権与党の公約では、これら療養病床38万床を確保することが掲げられておりました。また、日本医師会では2002年から3回に亘って「日本の医療に関する意識調査」をおこなってきました。第1回と第2回の調査では国民が考える重点課題で最多の項目は「夜間・休日の診療や、救急医療の整備」でしたが、2008年の第3回目の調査では「高齢者などが長期入院するための入院施設や介護老人保健施設の整備」で、56.5%を占め、この課題の重さが際立ってきていることが窺えます。一方、厚労省は「高齢者は在宅へ」という流れを作りつつありましたが、しかし、地域ケア整備構想、その中での在宅医療の受け皿が未整備のまま家庭へ帰されることには甚だ不安があり、国民に精神的、経済的負担を強いる懸念もあることから、安易、拙速に在宅へと流れることには慎重な議論が必要と思われます。さて、介護保険による在宅サービスを利用するためには、介護サービス計画(ケアプラン)を作って、要介護度に応じて在宅サービスに対する保険給付の限度額が決まります。利用者の費用負担は、かかった費用の1割ですが、限度額を超えるサービスを利用する場合は、超えた分を自己負担することになります。在宅サービスには、自宅で利用する訪問介護(ホームヘルパー)や看護、訪問入浴、訪問リハビリなどがあり、施設への通所では、デイサービス、デイケア、また短期入所のショートステイがあります。また、外出の付き添い、買い物など、援助する人を派遣したり、食事を家庭に配達したりする、介護保険以外のサービスもあります。しかし、それでもなお自宅での療養が困難な場合は、施設での療養となりますが、急性期の治療後、長期の介護と医療が必要な人への「療養病床」、病状が安定し、リハビリなどが必要な人への「介護老人保健施設」、常に介護が必要で自宅生活が困難な人への「特別養護老人ホーム」、認知症の人などが小人数で生活する「グループホーム」、そして有料老人ホームなど、どのような人が、どのようなサービスで、費用はいくら掛かるかなど、適切な情報や知識が必要と思われます。本日の集いは、副題にも掲げられているように、このような二一ズに対して「上手に利用して明るい未来へ」と繋がる有意義な集いとなることを期待して止みません。主催する秋田市医師会の関係各位に敬意と感謝を、そして市民の皆さんの健康を心からご祈念申し上げ、挨拶といたします。
- 基 調 講 演 -
介護サービスと秋田市医師会の関わり
秋田市医師会 副会長  高橋 正喜
 早いもので介護保険が始まり今年で10年になります。皆さんにはすっかりおなじみの制度になったようです。では、介護保険が始まる前の時代の介護はどのようなものであったのでしょうか。今日はそこら辺の所からお話を始めたいと思います。
 昭和の30年代は、身体の不自由な方の介護はその家族がやるというのが基本でしたが家族ができない場合に限り市町村から家庭奉仕員(今でいうヘルパーさんでしょう)という方が身の回りの世話を行うために派遣されてくるという制度が細々と行われておりました。昭和38年になり老人福祉法という法律が制定され、日本における公的な高齢者介護対策が始まることになります。
 常時介護を要しかつ居宅では介護を受けることができない人のための施設、特別養護老人ホームが作られました。また、この法律で初めて「介護」という言葉が使われました。施設に収容するか、家庭奉仕員を派遣するかは、市役所の判断による措置制度でした。そしてその費用は措置費といわれておりました。
 昭和43年に民間団体による「寝たきり老人調査」が行われ、全国に約40万人にも及ぶ寝たきり老人がいることが判明し、高齢者介護が社会的な関心を呼ぶようになりました。昭和50年代に入ると在宅福祉サービスが開始されます。ショートステイやデイサービス、入浴や洗濯サービスなどが次々に事業化されました。昭和55年には「呆け老人をかかえる家族の会」が結成されました。このころから立ち遅れていた痴呆老人対策に本格的に取り組むことになります。昭和57年には老人保健法が制定され、医療よりも看護、介護を重視する老人病院などの医療機関が登場してきます。
 昭和60年代に入ると急速な高齢化社会の進展、核家族化、不可逆的に増大する社会保障費に対応した制度創設の準備が始まります。高齢者のための施設として特別養護老人ホームに加えて、老人保健施設、療養型病床が続々と建設されました。
 平成の時代になり、2年に高齢者保健福祉推進十力年戦略(ゴールドプラン)が策定されました。これが10年後の介護保険制度につながります。社会保障に消費税を充てるかどうか議論された時代です。平成5年には寝たきりや認知症の高齢者が100万人、平成12年には140万人、平成22年には200万人に増加し、そして家族で介護する期間の長期化、たとえば3年以上も介護している介護者が全体の半数を超えるという調査、介護者の50%以上が60歳を超える女性であるという調査もありました。
 少子化と急速な高齢化社会の進展や核家族化の進行に伴う高齢者世帯の増加(昭和55年に433万世帯、その15年後の平成7年には867万世帯)への社会としての対応、男女平等な介護への参加、介護地獄の解消等を謳い、平成12年4月に介護保険制度が開始されたのです。
 介護保険の仕組みですが、40歳以上の方が保険料を納め社会全体で介護を支えます。保険料と公費(税金)で運営され、サービス内容は利用者自身が選ぶことができ、保健・医療・福祉に分かれていた介護サービスが一体的に受けることができるようになりました。しかし、介護保険のサービスを受けるには介護認定を受け、サービスを受ける資格があるかどうか、認定されなければいけません。身体に障害があり、サービスを受けたいときには市役所へ要介護認定申請をします。すると、認定調査員が自宅を訪ねていろいろ聞き取りなどを行っていきます。同時にかかりつけの医師に主治医意見書を書いてもらいます。
 この二つの書類で認定審査が行われるのですが、一番大事な書類が主治医意見書なのです。そして介護認定する審査会には必ず医師が入っていて医学的な見地から介護度を判定していきます。そして主治医意見書は介護サービスを受けるときの医学的な資料として多方面で活用されていきます。軽い介護度から重度の介護度まで、要支援1、2、要介護1から5までに判定され毎月の介護サービス費用の上限が決められていきます。
 どのような介護サービスを受ければいいのか、ご自身ではなかなか分かりにくいでしょう。そこで介護保険制度ではどのようなサービスを受ければいいのかを調整してくれる職種があります。よく聞くと思いますがケアマネさん、介護支援専門員が正式な名前ですが、この方々とよく相談されてサービスを受けるのがいいでしょう。
 さて、介護サービスには在宅サービスと施設サービスがあります。在宅サービスでも自宅で利用するサービスや施設に出向いて受けるサービス、電動ベットなどの用具を借りるサービスや自宅の改修サービスもあります。
 また、施設サービスは特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設があり、ある程度重度の介護度がないと利用できない仕組みになっております。
 私たち秋田市の現状はどうでしょうか。
 高齢化が着々と進み、65歳以上の高齢者は平成20年には77,500人、高齢化率23.2%、要介護認定者は14,800人に達し、要介護1.2.3で55%ほどを占めております。
 サービスを受ける資格のある要介護認定者のうち、2割の方々は介護サービスを受けておりません。その理由は、ご本人の利用拒否、利用方法が分からない、家族介護で我慢している、経済的な問題等を理由に挙げております。
 利用されているサービスで最も多いのが、訪問介護です。ヘルパーさんに家事や買い物を手伝ってもらうサービスです。次いでデイサービス、福祉用具貸与やショートステイです。もっと利用して欲しいと思うのが訪問看護や在宅でのリハビリです。病状の悪化や生活動作の悪化を防ぐのに有効でしょう。
 ところで、秋田市医師会では訪問看護ステーションを運営しています。
 介護保険制度が始まる5年も前の平成7年の開設です。現在は看護師12~14名、理学療法士1名で業務にあたっており、訪問看護は毎月100名ほどに延べ750回の訪問を、そして訪問リハビリは昨年の春から仕事を初め、毎月14名ほどの患者さんに60回の訪問先でリハビリを行っています。ともに、需要に追い付かないほどに多くの方々に利用されております。
 介護保険が始まりあっという間の10年でした。開始当時よく言われたのが、「保険あれどもサービスなし」で施設サービス、在宅サービスの不足を指摘したものでした。また、当初から介護報酬の低いことが問題になっておりました。介護保険料に跳ね返ってくる問題であり、政治的に低く抑えたのでしょうか。
 そして10年後の今言われているのは「施設、サービスはあれど、働く者なし」です。介護職はやりがいはあるのに、3K職場といわれさらに低賃金の中での労働です。介護職が生業として成り立つような制度の再設計が必要に思います。
 最後に、いま日本は介護先進国です。これから韓国、中国が高齢化社会に突入するでしょう。我々がいま日本で経験していることが将来、韓国や中国といったこれから介護高齢化社会に向う国々でも役に立つことが期待されるでしょう。
-- 質疑応答 --
総合司会 介護保険に至るまでの歴史、現行の介護保険制度の仕組みについて詳しくわかりやすく説明していただきありがとうございました。まだ少し時間がありますので、皆様からご質問、ご意見ありましたらお受けいたします。

質問A 「施設サービスあれど、働く者なし」との話がありましたが、最近インドネシア人の介護士を日本で教育し、日本の試験に合格したら実際に介護士として採用するとの話が出ています。インドネシア人にとって、日本人と同等に日本語を習得するというのは非常に難しい話で、そこを何とかしないと折角日本に来てもらっても意味が無いと思います。インドネシアの方は英語などが流暢なのであれば、英語での試験の受け方もあると思いますがいかがですか。

高橋氏 あれは経済協力から出た話で、医療や介護から出た話ではありません。実際に留学されて秋田でも働いている方がいるみたいですが、日本語での試験に合格して日本に定住出来るのかというのは甚だ疑問だと私は思います。当時の状況と今の状況は違いますが、日本人が介護の現場でもっと働けるような時代になってほしいと私は思います。

質問A 全く同感です。

質問B 老人が多くなるのに対して介護する人が少なくなるというのは非常に先行き不安な感じがいたします。これからどのような制度でもって、介護する人を確保していくかというのが問題であると思いますが、いかがですか。

高橋氏 介護保険が設計された段階ですでに低賃金は予想されていました。介護保険料を抑えたことと、国からの補助を低く設定したことで、介護保険が始まる時から介護職員が低賃金にあえぐことは予想されていました。現在も低賃金で3Kと言いますか、厳しい職場なのでなかなか介護を目指す若者が出てこない現実があります。介護職員の給料では一家を構えて子どもを養っていけないような低賃金です。

質問B 民主党が政権を取りまして、現在内政・外政と問題となっております。今後介護の問題に積極的に取り組んでいただきたいと思います。

質問C 自分の親が認知症になりつつあります。その問題を抱えているもので今日来ました。医師会の方々にお願いしたいことは、折角スライドショーで良い講演をなさっているのであれば、スライドショーの内容をコピーしたものを資料としていただきたい。と言うのは、これからどのようにして介護認定の手続きをしたらいいのかよくわからないからです。話だけされても書き取れないし、全て頭に入るわけではないので、今後検討よろしくお願いいたします。

総合司会 本日の内容は秋田市医師会のHPに詳しく掲載されます。高橋正喜先生のスライドもHPをご覧になると検索できるようになっておりますので、ご利用していただければと思います。

質問D ここにいる大半の人は年配者で、HPを開くことが出来る人がどれほどいるのかと思います。要望として資料を配付することを今後検討していただきたいと思います。

総合司会 貴重なご意見ありがとうございます。今後スライドー覧を配付資料としてお届けしたいと思います。少し時間も押して来ましたので、シンポジウムの後にご意見・ご質問をお受けいたします。
- 演 劇 -
「家族の絆~老いを迎えて~」  劇団河辺わさび座のみなさま
○河辺わさび座について
 平成12年に旧河辺町岩見地区コミュニティ祭りの際、全県的にこの地区の子供達の肥満が目立って多いということが話題になり、女性有志が子供の健康について寸劇で啓蒙しようと演劇サークルを立ち上げました。
 劇は毎年、非行、健康、男女共生、介護などその時々のリアルな話題をテーマにしてきました。
 本日は、「家族の絆」という寸劇です。
 今、全国的に家庭のあり方が問われています。私たちの身近でも様々な問題が十分起こりうる状況です。
 家族と一緒に過ごす時間を大切にし、地域の生活もみんなで楽しむ社会になってほしいとの願いを込めて「河辺わさび座」は公演しております。一人一人が、自分を見つめ直し家族の有り様を考える機会にして頂ければ幸いです。
- シンポジウム -
司会(加賀谷学)
 秋田市医師会広報委員の加賀谷です。よろしくお願いいたします。今回のテーマは「介護サービス」です。患者さんがご自身の自宅、つまり在宅で療養するにあたってどのような介護サービスがあるのか、また多岐にわたる介護サービスを上手く利用するためにはどうしたらいいのか、その答えを見つける一助になればと思い選んだテーマです。高橋秋田市医師会副会長より介護の歴史から介護保険の概略等について基調講演がありました。また先ほど河辺わさび座の皆様から劇を演じていただきました。これで会場の皆様も介護を取り巻く現場についてイメージが湧いてきたのではないでしょうか。あるいは実際に介護に関与している方はご自身と重ね合わせてみたかもしれません。
 では更に理解を深めるためにシンポジウムを開始いたします。シンポジウムではケアマネージャー、介護ヘルパー、行政、医師それぞれの代表の方に参加していただき多方面からの提言をいただくこととしています。そして皆様との討論につなげたいと思います。この医療を考える集いは会場にいらっしゃる市民の皆様が主役だと思っておりますので、皆様も積極的に討論に参加していただき、色々な意見をぶつけていただければと思っております。
ケアマネージャーの立場から  秋田市医師会訪問看護ステーション管理者  石川 京子 氏
 皆さんこんにちは、私は秋田市医師会訪問看護ステーション並びに居宅介護支援事業所の管理者をしております石川でございます。普段は訪問看護師として走り回っていることが多いのですが、今日はケアマネージャーとしてお話しをさせていただきます。
 ケアマネージャーは、介護保険制度の要といわれております。ケアマネが偉い仕事をしているとは思いませんが、介護保険制度の中では無くてはならない存在です。
 では、ケアマネージャーをどんな形で利用していくのか、ケアマネージャーの仕事も紹介しながら話を進めたいと思います。
 皆さん、ご自分が、家族や知り合いが、病気や怪我などで介護が必要になったとき・・、認知症で目が離せなくなった時どうしますか?・・。家族だけで頑張ろうと思えば限界があります。そこでケアマネージャーの登場です。ケアマネージャーは居宅介護支援事業所といわれるところで働いています。現在秋田市には100カ所余りの居宅介護支援事業所があり数百人のケアマネージャーが働いております。連絡をしてくれれば、どこにでも出かけて行き、話を聴き相談にのります。
 入院中で、そろそろ…と退院の話があるけれども家に帰ってからどうやって介護していったらいいのか不安に思っている方、ご相談ください。病院に出向いていってお話を聴きます。貴方や家族・主治医・看護師・相談員の方たちなども交えて話し合い、自宅に帰ってからの生活をサポートするために相談してプランを立てます。必要あれば、サービス事業者といわれる方たちにも連絡して、カンファレンスに参加してもらいます。
 自宅で元気にしていたけれど転んでしまって動けなくなってしまった・・・、買い物にも行けないし、食事もトイレもままならない、どうしようと思っている方・・・、連絡してください。ご自宅に伺ってお話を聴き相談にのります。
 介護保険制度を利用するために、まず第一にしなければならないことは、介護申請です。65歳以上の方であれば、どなたでも介護申請できます。また、40歳~65歳未満の方であれば、特定の病気を持っている人に限定されますが、申請できます。保険者と呼ばれる、秋田市でいえば市役所の介護保険課の窓口に介護保険証を付けて申請します。申請する人は、本人でも家族でも知人でも誰でもOKです。ケアマネージャーも代行できます。介護度が出たら、それに見合った介護サービスが利用できます。
 では、介護保険を利用して在宅では、どのような介護サービスが受けられるのでしょうか?もう皆さんすでにご存じのこととは思いますが・・・。

*まずは、訪問介護です。自宅にヘルパーさんが来て援助してくれます。詳しくは、この後、鈴木富美子さんの方からお話しがあると思いますので省きますが、介護タクシーの利用もこの訪問介護サービスに入ります。ただし介護タクシーの利用は、通院時のみに限ります。買い物や友達の家に行くなどという時は利用できません。
*2つめに、訪問看護です。看護師が主治医と連携を取りながら、自宅に伺って病状観察や医療的な処置・療養上の世話・相談などを行います。
*3つめは訪問入浴です。自宅の浴室を利用して入浴やシャワー浴ができる方は、ヘルパーや訪問看護師の援助でいいのですが、それができない人が対象です。係りの人が湯舟を持って、お湯はタンクに積んで運んでいきますので、寝たままお部屋で入浴ができます。
*4つめはデイサービスです。自宅に車が迎えに来ます。デイサービスセンターや施設に行って、入浴や食事・レクリエーションヘの参加、場合によってはリハビリなども受けられます。一般的には9:00頃~16:00頃までの利用となりますが、利用者の事情や病状によっては、短時間にしたり時間延長して利用できるセンターもあります。
*5つめはショートステイです。今、家庭の事情で長期でショートステイを利用している方もいらっしゃいますが、基本的には、冠婚葬祭の時や、介護者の介護疲れや病気・用事・リフレッシュなどの時に、期間を決めて泊まっていただくサービスです。
*6つめは訪問リハビリテーションです。通院や通所のリハビリが困難な方に、理学療法士・作業療法士などが自宅に伺ってリハビリを行います。
*7つめは福祉用具の貸与です。介護用ベッドや車椅子・歩行器・床ずれを予防するマットレスなど買わなくてもレンタルで利用することができます。ポータブルトイレや入浴時に利用するイスなどはレンタルできませんので購入していただく用品になります。購入の場合も物によっては、介護保険適用となります。
*それから住宅改修です。手すりの取り付けや段差の解消・ドアを引き戸に・和式トイレを洋式トイレに・・などが対象となります。福祉用具の購入や住宅改修は、自分でやってしまってからでは、介護保険を使えない場合がありますので、行う前にケアマネージャーにご相談ください。

 今まで説明した介護サービスですが、ただではありません。利用すると、利用者は、すべてのサービスにおいて一割の自己負担金を支払うことになります。利用者の状態や希望に合わせて、予算も含めて相談しながらケアマネージャーは、プランを立てていきます。その時、主治医やそれぞれの専門家の人に相談をしたり、集まっていただいたりしながら、利用者も含めてケアカンファレンスというものを行います。利用者の方が、在宅で安心して過ごせるように話し合いをするのです。ケアプランは、何度でも変更ができます。一度決まったプランだから・・・、ケアマネージャーに悪いから・・・と我慢せず、何度でもケアマネージャーを呼んで相談してください。そして自分の希望をしっかり話し、納得のいくプランを作ってもらってください。
 サービスが利用者の希望通りに、プラン通りにきちんと提供されているか監督したり調整するのもケアマネージャーの仕事です。
 ケアマネージャーは、どんなときも公正・中立の立場で物事に対応しています。苦情・トラブルなどがあった場合は、遠慮せずお話しください。きっと良い方向に導いてくれるはずです。
 介護保険サービスを利用する時は、介護度が出ているに越したことはありませんが、出ていなくても、暫定でプランを作成してサービスを利用できる場合があります。極端に言うと、介護申請したその日から、介護度を予測して暫定でプランを立てサービスが利用できます。ですから、何もあわてて介護申請をする必要はありません。
 資料もなく、ただべらべらと色々なことを述べてきましたが、とにかく、介護が必要になったとき、一人で悩まず、まずご相談ください。貴方の地域に、お近くに、ケアマネージャーがたくさんいますので『よろずや・何でも相談員』と思って、まずは相談してください
 最後になりますが、今の制度では、秋田市にある100カ所余りの居宅介護支援事業所の中から、一つの事業所を選択して依頼することになっています。せっかくですから、話しやすい、自分に合う信頼できるケアマネージャーを選択してください。もし、自分に合わない、信頼できないと思うケアマネージャーだったら、いつでもケアマネージャーや事業所の変更ができます。我慢せず、遠慮せず、かしこい選択をして、どうぞ自分にあったケアマネージャーに出会い、皆さんが在宅で、安心して、笑って生活できることを願って発表を終わりたいと思います。
 ご静聴ありがとうございました。
ヘルパーの立場から  やさしい手 本店店長  鈴木 富美子 氏
 こんにちは。皆様のお宅に訪問して、皆様の出来ないところをお手伝いするヘルパーの会社「やさしい手」の鈴木と申します。今日は、皆様の中で、「家で介護せってが?なんとせばいいべ」「早く退院せってが?家で見れるべが」こんな心配をお持ちの方、また、「どごさ相談しに行ったらいいんだべ?」「どんな事、手伝ってけらんだべが?」こんな疑問をお持ちの方々の参考になればと思いながらお話させていただきます。

介護保険を利用出来る方は、
*65歳の誕生日を過ぎた方で、介護や支援が必要であると、「認定」を受けた方
*40歳以上64歳未満の方で、介護保険で対象となる病気が原因で、「要介護認定」を受けた方です。
 今年は、昭和20年生まれの方でお誕生日が過ぎた方が、65歳に、また、昭和45年生まれの方でお誕生日が過ぎた方が40歳になられます。皆様は、何歳になられましたか?最近、私共の会社でも、病院から退院して自宅で療養生活をしている方のお手伝いが増えました。
 自宅に、お医者様に来てもらい、診察をうけ、お医者様の指示で訪問看護師さんが療養の手伝いをし、ヘルパーが、本人の生活面のお手伝いをしています。ご家族・お医者様・看護師さん・ヘルパーとの連携で、在宅で療養生活を支えるケースが多くなりました。皆様、「介護の手伝いをしてもらいたいな」と思ったらまず、ケアマネージャーのいる事業所に相談に行きましょう。

ケアマネージャーは、
 ①介護認定を受けた方
 ②予防と判断された方
などに、お手伝いできる事や、介護予防の方法などのたくさんの情報をお持ちです。
 相談を受けたケアマネージャーは、在宅で介護するための方法や、一人で暮らしていく為の方法を見つける為に、本人・ご家族・ケアマネージャーとの間で、話し合いによる「仕分け」を行います。
 「仕分け」の内容は、お医者様の意見や、訪問調査の結果を参考にしながら、今、自分が出来ることは、何なのか。では反対に、自分が出来無くなった事は、どんなことか。これから先、どんな生活をのぞんでいるのか。など・などです。
 一つ一つ確認しながら、誰に手伝ってもらうのが一番良いか決めてまいります。この話し合いは、政府による事業仕分けのように、「時間が来たので終了します」とか、「これを手伝って貰う方がずーっといいよ」とか押し付けられる事はありません。
 あくまでも、お手伝いをしてもらう「本人」の思いが尊重されます。
 その「仕分け」で、本人が困っていることが見えてきますので、自宅で「手伝ってもらう事」が決まります。
 その中で、「ヘルパー」の手伝いが必要と判断された時、ケアマネージャーを通じて、ヘルパーがいる事業所に依頼が来ます。ヘルパーの事業所がお仕事を請けたら、まず利用なさる方の担当を決めます。サービス担当責任者と呼ばれていて、「○○さんの担当の○○です」と、挨拶に伺います。
 ヘルパーが訪問する為に必要な手続きや、訪問するヘルパーを決める役割や、現在手伝っていることが、的確なのかと、考える役割を持っています。
 また、ヘルパーのお仕事が始まる前に、重要事項説明書で、ヘルパーの仕事をご理解いただいた上で、本人と事業所との間で、訪問介護サービス契約書と守秘義務についての、書類が取り交わされます、次に「こういう風に暮らしたいな」という思いを実現させる為に、ヘルパーが訪問したとき、どんな手伝いをするのか、その手伝いには、どのくらいの時間が必要なのか、月に何回ヘルパーが来てくれるのか、ケアマネージャーがたてたケアプランと、ヘルパーが手助けする内容に、間違いがないのか確かめます。確認後、訪問介護計画書(ヘルパーが来たときは、こんなお仕事をしていきます。ヘルパーは何曜日の何時に来ます。という事を書いた書類)を作成し、本人やご家族に確認していただきます。
 これからの説明は、いよいよヘルパーが手伝う内容になります。
 ヘルパーは、要支援・要介護の認定を受けた方の日常生活のお手伝いをする為に、本人が住んでいる自宅を訪問して「身体介護」「生活援助」「相談・助言」をいたします。
 皆様のお手元には、「サービス内容の区分」という名称で、資料が届いているかと思います。参考にしてください。
 資料の内容は、ヘルパーが行える内容となっています。手伝ってもらいたい内容によって、受けられる時間が異なりますので、自分が手伝って貰いたい事は、どんな区分なのか、時間はどのように決められているのか、納得いくまで説明を受けてください。最後にヘルパーを代表して、助言させていただきます。
 ご自分で出来ないことは、頼みましょう。頼むことで、生活が「楽」になります。ご自分で出来ることは、今までどおり続けましょう。
 続けられるということは、「元気」な証拠です。
 無理せず、自然体でお暮らし下さい。
 安心して、安全な生活をしていただくためにも上手に介護サービスを利用して明るい未来へ、一歩進んでみませんか?その道の先で、もしもヘルパーが必要になった時、一生懸命お手伝いさせていただきます。
----厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知----
(資料1)

 「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」より

身体介護
1.利用者の身体に直接接触して行う介助サービス
  例)入浴介助・着脱介助・おむつ交換
2.利用者の日常生活動作能力や意欲の向上の為に利用者と共に行う自立支援のサービス
  例)見守りながら洗濯などの家事をお客様と一緒に行う
3.その他専門的知識・技術を持って行う、利用者の日常生活上・社会生活上のためのサ ービス
  例)糖尿病・腎臓病食作りきざみ食・ミキサー食作り

 1.見守り、2.ベッドメイク、3.調理、4.外出介助(買い物)、 5.外出介助(通院)、
 6.外出介助(その他)、7.体位交換、8.移乗、9.移動、10.食事介助、11.水分補給、
 12.服薬介助、13.排泄介助(トイレ)、14.排泄介助(ポータブルトイレ)、
 15.排泄介助(尿器/便器)、16.排泄介助(おむつ)、17.全身浴、18.シャワー浴、
 19.手浴・足浴、20.洗髪、21.清拭、22.更衣介助、23.洗面介助、24.口腔ケア、
 25.身体整容、26.起床介助、27.就寝介助、28.その他の介助

・生活援助
 身体介護以外の訪問介護であって、掃除・洗濯・調理などの日常生活の援助であり、利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるもの

 1.掃除、2.洗濯、3.ベッドメーキング、4.調理、5,配膳・下膳、 6.買い物、7.薬の受け取り
  8.その他の家事


(資料2)

     一般的に介護保険の家事援助の範囲に含まれないと考えられる事例

1.直接本人の援助に該当しない行為
 *主として家族の利便に供する行為
   又は、家族が行うことが適当であると判断される行為
   例)利用者以外のものに係わる、洗濯・調理、買い物・布団干し
 *主として利用者が使用する居室等以外の掃除
 *来客の応接(お茶・食事の手配等)
 *自家用車の洗車・掃除等

2.目常生活の援助に該当しない行為
 ①訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為
  *草むしり
  *花木の水やり
  *犬の散歩等ペットの世話等
 ②日常的に行われる家事の範囲を超える行為
  *家具・電気器具等の移動・修繕・模様替え
  *大掃除・窓のガラス磨き・床のワックスがけ
  *室内外家屋の修理・ペンキ塗り
  *植木の勇定等の園芸
  *正月・節句等のために特別な手間をかけて行う調理等

・訪問介護員が行えないサービス
  *あらかじめ訪問介護計画書できめられたサービス以外は行えない
行政の立場から  秋田市福祉保健部 介護・高齢福祉課 介護サービス担当 主席主査  丸山 進 氏
介護サービスを考える ~上手に利用して明るい未来へ~

1.年々増え続ける介護人口
 要介護認定者数 平成16年度12,406人、平成20年度14,766人(+2,360)、65歳以上の2割が認定
 要介護申請者数 平成16年度16,459人、平成20年度19,163人(+2,704)
*65歳以上人口平成16年度68,731人(20.6%)、平成20年度75,438人(23.2%)+6,707

2.介護認定を受けてもサービス利用なし?
 認定を受けても利用していない人が全体の2割(H20年度2,982人)。
*介護サービス受給者数(H20)居宅8,802人、密着694人、施設2,288人、合計ll,784人
①本人が利用拒否、②サービスの利用方法が分からない、③家族介護が可能で我慢
*ケアマネと相談し、適切なサービス利用で介護者も本人も快適生活を継続。

3.介護認定審査会って何?
 介護認定の仕組み①申請、②主治医意見書依頼、③認定調査、④コンピューターによる判定(1次)、
⑤審査会での判定(2次)、⑥認定結果送付
*認定結果に対する不服申し立て可(年1、2件)県介護保険審査会に審査請求(20年全県15件)
 介護に要する手間(時間)によって介護度が決まる。審査会委員5名による合議体での判定。
*利用者の年齢、サービスの利用状況、家族の状況等は考慮してはならない(国配布のテキスト)
*秋田市では30合議体、150人の委員、医師会から40名。開催は平日の夜。各合議体にもそれぞれ特色がある。辛い甘い?認定結果に対する不服申し立てが多い合議体。
*申請から認定結果の送付まで32.5日(11月)。最近は調査が早く終わるが、意見書が遅れ気味。
*更新申請は60日前から可能。あまり早いと結果が出てから状態の変化で区分変更申請の例も!

4.介護保険料と介護費用の関係。
*介護保険料は40歳以上の人が負担。全体での割合は、公費(50%)、40~64歳(30%)、65歳以上(20%)
*サービス利用費用は利用者が1割負担。介護費用が約2倍に!、平成12年度96億円、平成20年度188億円(秋田市)、在宅サービスの費用が全体の6割デイサービス、ショートステイの利用が増加。

5.介護を一人で背負わないで一介護の社会化へ
*58歳の女性が98歳の同居義母の介護について「週2回のデイサービスを受けている。『楽しかった。食事もおいしかった。全部食べたよ』との会話を交わすたび、ホッとし、介護保険のおかげでこんなサービスを受けられる。(中略)東京で介護に疲れた51歳の娘が81歳の母親を殺害した容疑で逮捕されたが、『介護の社会化』が叫ばれる中で、介護を一人で背負い、自滅する人を作ってはならない」(2009年2月10日・朝日新聞)
*俳徊認知症の地域を巻き込んだ大捜索
*介護の現状を隠してはならない。家族の問題から地域の問題へ
医師の立場から  秋田往診クリニック 院長  市原 利晃 氏
 厚生労働省の発表によると、今後は年々死亡数の増加が予想されておりますが、病院の病床数はそれに見合っただけの増床が今後大切になってくると考えられています。そこで、往診に特化したクリニックとして現在行っている医療についてまとめます

在宅医療
経皮内視鏡的胃痩造設術の術後管理:内視鏡を用いて胃に栄養を送るための痩孔を作る手術の術後管理とそれを用いた栄養管理

在宅中心静脈栄養管理:皮下に埋め込んだ器具を用い、安全に高カロリー輸液をポンプにて投与する治療法

在宅酸素療法:継続的に酸素の補給が必要な方を対象

在宅人工呼吸療法:呼吸の補助が必要な方を対象

在宅緩和ケア:癌患者の疹痛コントロールをはじめとする諸問題の解決を目標とする治療 その他にも在宅で可能な治療は増えてきています。

 治療実践の場である入院医療とは異なり、在宅医療は患者の希望を医療的に支援する事が重要です。しかし、在宅では迅速に検査を行うことが難しく、急性期の対応には注意しなければなりません。それを補うため、ご家族だけでなく訪間看護、訪問介護、薬剤師、ケアマネージャーなどとの十分な連携が大切です。今後も連携を充実させ、秋田に合う形の地域連携ネットワークが必要だと考えています。
--質疑応答--
司会 私ども医療を担う人間も出来るだけ良い介護サービスを提供したいと思っております。この場で我々も皆様から良いアイディア、アドバイス、叱咤いただきまして勉強したいと思っております。介護サービスを受けた経験のある方、これから介護サービスに関わっていきたと思っている方、介護サービスの恩恵を受けたいと思っている方の中で、我々介護担当者、医療担当者に何が足りないか、もしお気付きの方がいらっしゃれば遠慮なくお願いいたします。

質問E 5月に妻を亡くしました。5月7日に入院し手術の予定でしたが、相談した結果入院を止め自宅に連れて帰ったので、すぐに介護が必要でした。翌日ケアマネージャーさんにお願いし、医師に意見書を書いてもらいました。そこまでは良かったのですが、その後の市役所の対応が遅く、21日でなければ調査に来れないとのことでした。妻は17日に亡くなりました。ケアマネージャーさんもお医者さんも確実に介護認定を受けられると言うのでベッドを借りたりしましたが、調査の前に亡くなったので1割負担になりませんでした。行政に対して緊急の場合とそうでない場合の区別を付けて欲しいと思います。緊急を要する場合には早急な対応をお願いしたい。
 二つ目は私自身のことですが、医師やケアマネージャーから確実に介護申請を受けられるとのことで介護申請を出したが、受けられませんでした。不思議に思い審査会の資料を見せてもらったところ、書類には必要なことが書かれていませんでした。これでは審査を通るわけがありません。このようなことが無いように正確に対応してもらえるような方策は無いのでしょうか。再調査の結果、介護認定を受けられましたが、行政には正確に対応していただきたいと思います。

丸山氏 お亡くなりになった奥様の調査が間に合わなかったということに私も非常に驚いております。審査会に行く過程で調査済みなら介護認定は可能です。主治医意見書が遅くても調査さえ済んでいれば良かったケースですので、私も残念に思っております。調査員に詳しく内容の精査を求めたいと思います。再申請の件については、審査会では主治医意見書と訪問調査の内容が加味されますが、実際には訪問調査よりも主治医意見書の方が重視される傾向があります。不服を申し立てる前に再調査を命じて再度認定されたということで、その点に関しては良かったと思いますが、先ほど不正確な訪問調査を受けたという件に関しても、再度詳しく精査したいと思っております。この件については、私どももどのようにしたら改善できるか検討してまいりたいと思います。

石川氏 主治医からケアマネージャーに連絡があってすぐ訪問に行き、調査もまにあいサービスを使った次の日にお亡くなりになった方がいらっしゃいます。ケアマネージャーが緊急性を介護・高齢福祉課に伝えると調査も迅速に協力してもらえるケースがいくらでもあります。今のお話は残念だったのですが、ケアマネージャーも甘かったのではないかという感じがします。皆さんもケアマネージャーをプッシュしたり、介護・高齢福祉課に連絡したりと出来るだけ調査を早めていただけるようにしていただきたいと思います。

質問F 身障者認定について伺います。私の知り合いで難聴の方がおり、私自身も相談を受けました。医師には「身障者認定を受けた方が良い」と言われ、ある病院に行きましたが認定には至らず、別の病院でもう1度診てもらい、再度申請したところ認定を受けました。1度審査会で却下されたものが医師の意見書の違いによって2回目は認定を受けたということです。意見書の内容によって認定になるケースとならないケースがあるということです。市役所に伺ったところ、医師の意見書そのものに曖昧な点があるとのことでした。要するに医師がいかに患者さんを主体とした意見書を書くかということが問題です。医師によって意見の内容が異なるというのではなく、同じく患者を診ていただけるようにしていただきたい。医師の意見書のあり方そのものを是非考えていただきたい。

司会 私も介護認定審査員に入っております。今のご意見は非常に貴重な意見だと思います。現場に持ち帰って出来るだけ公平に判断できるよう動きたいと思いますし、そうするべきだと思います。

質問G 在宅医療についてはすごく満足だったのですが、市役所の対応が遅く、問に合わないか心配だと訴えましたが、「混んでいるので調査に来られない」とのことでした。実際に来たのは主人が亡くなった時でした。この一点だけは不満でした。

質問H 見方を変えた意見ですが、この場を見ても若い人はほとんど来ていません。それでいながら就職先が無いと言っています。職安に行けば求人倍率は0.44倍、介護職については1.33倍あります。ヘルパーの資格を取るとすれば一ヶ月7万円のお金があれば資格が取れます。確かに給料は安くても我慢すれば、3年後には介護福祉士の資格を取れば給料が上がるわけですよね。そういう宣伝をして若者を地元に定着させて、介護をしてくれる人口を増やす運動が出来ないのかと思います。もう一つは「やれることはやらせる」のが介護の精神だとテレビで見ました。私は介護施設に出入りしていますが、ほとんどの人が車イスの生活です。人手が足りないからだと思います。人手が足りて気持ちに余裕があれば「やれることはやらせる」ことが出来るのだと思います。この件に関してどういうお考えか意見を伺いたい。

鈴木氏 私どものヘルパーの会社では従業員で一番若い方は20代半ばでしょうか。あとは40代~50代の方が多いです。介護の現場は各個人のお宅に伺うので、そちらの方の生活に合わせて行わなければならないので大変な仕事です。その中でも若い方を育てたいとは私どもも思っております。色々なヘルパーの養成所がありますが、ヘルパーの勉強はしたけれども仕事として考えていない方が多くて残念です。半分以下の方は仕事をしないで資格をねむらせています。子育ての時間を省いて、自分の出来る時間だけでもお手伝いしてくださいとお願いしておりますが若い方にもそこのところをもっと宣伝して、納得して働いていただきたいと思います。ただ、若い方はそこまで一歩踏み出せていないのが現実ではないかと思っています。登録して何回か働いても合わなかったと辞めて行くのは若い方が多い気がします。若い方にどうやってヘルパーの仕事を浸透させて行くかというのは今後検討していきたいと思います。

司会 会場の皆様からもっとご意見伺いたいと思ったところです。シンポジストの方々も喉まで色々な言葉が出てきて今にも声になりそうな方がいらっしゃいますが、お時間の関係でこれで終了とさせていただきます。皆様がもし介護サービスを受けたいという場合は困り事相談所としてのケアマネージャーがいるということ、相談するのは無料だそうです。それから我々はより迅速に対応するということだど思います。これでシンポジウムを終わらせていただきます。

総合司会 本日は長い時間ご静聴並びに活発なご意見誠にありがとうございました。
総括  秋田市医師会広報委員会 担当理事  能登 弘毅
 「第32回医療を考える集い」が平成22年2月6日ビューホテルにおいて「介護サービスを考える」~上手に利用して明るい未来を~のタイトルで開催されました。当日はこの冬一番の悪天候となってしまいましたが、それでも約180名の方に参加していただきました。今回は介護保険がスタートして10年となったことを機会に、在宅での介護サービスの種類や利用の仕方について理解を深めてもらい、介護を受ける本人や周囲の人たちの負担を軽くするきっかけになることを期待したテーマにいたしました。
 基調講演は高橋正喜市医師会副会長が「介護サービスと秋田市医師会の関わり」と題して行われました。介護保険の歴史やサービスの種類などについてわかりやすく説明した後に、利用されているサービスの中では訪問介護やデイサービスが多く、介護認定を受けている人でも約2割が何らかの理由でサービスを受けていない実情についても報告がありました。
 基調講演の後は河辺わさび座のみなさんによる演劇が上演されました。秋田弁による身近なテーマで、場面ごとに笑い声あり、涙ぐむ人ありで参加者の好評を得ていました。
 シンポジウムではケアマネジャー、ヘルパー、行政、医師の立場からの提言があり、その後討論となりました。シンポジストには当初利用者代表も検討しておりましたが、フロアからの意見がまさに利用者代表になりました。様々な意見が出された中で、介護認定における主治医の迅速な対応に感謝する発言があったことは安堵いたしました。
 当日の様子は、これまでのところ2月7日付毎日新聞「医療を考える集い:市の対応に不満の声も介護現場の課題報告」、2月13日付秋田さきがけ「在宅療養、知識深める」と題した記事が掲載されました。
 介護保険、介護サービスについては様々な問題があることが改めてわかりましたが、その中心となるのが主治医意見書であることは参加したシンポジストの意見の一致するところです。意見書を求められた主治医の先生方は、これからも迅速、的確な意見書の作成をお願いいたします。
 32回を数えた「医療を考える集い」ですが、今回は当日の配布資料に要望が寄せられるなどの課題もあり、広報委員会では次回以降にさらなるステップアップをして完成度を高めていきたいと思います。