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第37回医療を考えるつどい
【 医療とケアの最前線 】
秋田で元気に過ごすには?
~あなたは、秋田で元気に過ごすにはどうしたらよいとお考えですか?~
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平成27年2月28日(土) 午後1時30分~午後4時40分
秋田ビューホテル・4階
近年「地域包括ケア」が注目されておりますが、
「地域=街」、「包括=ぐるみ」であり「街ぐるみのケア」は、
かつて当たり前に行われていた仕組みです。
街の主人公は住民ですが、今後その住民の高齢化が進むと予測されています。
日本の高齢化は世界でも類を見ないスピードで進んでおり、
県庁所在地である秋田市が2040年消滅可能性都市としてあげる報告もあります。
秋田市は北東北最大の都市で産業や交通の要所であり、様々な可能性を秘めています。
秋田が元気になるためには、
住民の私たちが元気でなければなりません。
そこでテーマを「医療とケアの最前線~秋田で元気に過ごすには~」としました。

それぞれの立場で最前線におられる方をパネリストとして、
みなさまのご意見をとりいれながらこれからの秋田についてディスカッションします。
 みなさま、こんにちは。広報担当理事の田中秀則です。
 この2月28日(土)に、「第37回医療を考えるつどい」を、開催しました。
 前日は、ものすごい強風が吹いて、基調講演の先生が、秋田に到着できないのではと、とても、心配しましたが、無事、開催できて安堵しました。
 さて、今回のテーマは、「医療とケアの最前線」でした。肝移植、地域包括ケア、など様々な内容がちりばめられて、有意義な会であったと思います。
 また、今回は、聴力障がい者向けに、はじめて、手話通訳士の手話サービスも行いました。それでは、「つどい」の記事のはじまりです。
プログラム

総合司会   秋田市医師会広報委員会委員  市 原 利 晃
あいさつ    秋田市医師会長  松 岡 一 志
祝   辞   秋田市長       穂 積    志 様
         秋田県医師会長   小山田   雍 様

-基調講演1-
「自分らしく暮らし、あなたらしく生きるを支える~地域包括ケアシステム・医療、介護」 秋田大学医学部 保健学科教授 中 村 順 子 氏  

-基調講演2-
「秋田を元気にする“深いい話”と肝移植の話」 京都大学医学部 臓器移植医療部准教授 海 道 利 実 氏


-パネルディスカッション-    司会  秋田市医師会広報委員会 担当理事 田 中 秀 則  



パネリスト
● ABSラジオ「みんなの健康」パーソナリティ
                               堀 江 千 景 氏

● 京都大学医学部臓器移植医療部准教授
                               海 道 利 実 氏

● 秋田大学医学部保健学科教授
                               中 村 順 子 氏



アンケート結果
総合司会 (秋田市医師会広報委員会委員・市原 利晃)

 本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございます。総合司会を務めさせていただきます秋田市医師会広報委員会委員長の市原利晃と申します。よろしくお願いいたします。秋田市医師会主催で「医療を考えるつどい」市民公開講座を37回、開催しております。近年は世界的に高齢化社会となり、秋田は非常に高齢化が進んでおります。そこで秋田がいつまでも元気でいるためには我々市民も健康でなければならないということで、「秋田で、元気に過ごすには?」というテーマをつけました。今回は様々な分野の方々をパネリストとしてお招きしております。秋田で皆様が医療に期待することはどんなことでしょうか。おそらくいつまでもいきいきと自立した生活を送れるように、ということだと思います。我々には寿命がありますので、いつまでもというのは難しいと思いますが、いきいきと生活するために今からでも始められることがあると思います。そういったことをパネルディスカッションで討論し、ヒントをいただきたいと考えております。これから医療を考えるつどいを開催しますが、皆様のお手元にアンケート用紙と、質問用紙を配らせていただきました。ご記入いただいた用紙は休憩時間に回収させていただきます。参加者のアンケートは来年度の医療を考えるつどいのテーマの参考にさせていただき、質問用紙に関しては、パネルディスカッションの際にディスカッションでとり上げさせていただきます。質問用紙の全てにお答えすることは時間の関係上難しいと思いますが、出来る限りテーマの中で取り上げていきたいと思っておりますので、ぜひご記入をお願いいたします。
それでは秋田市医師会長 松岡一志よりご挨拶申し上げます。
松 岡 一 志 秋田市医師会長

 皆さんこんにちは。
 昨年6月より秋田市医師会長を務めております松岡です。どうぞよろしくお願いいたします。
 秋田県全域では大雪のところもありますが、秋田市では今冬は例年に比べて暖かく雪も少なく、このまま春になればなどと思っておりましたが、昨日から急に大荒れとなり心配しました。幸い、今日は大分回復しておりますが、皆様には月末、年度末でお忙しいところ多数お集まりいただきましてありがとうございます。
 本日の基調講演講師の海道先生には遠路はるばる京都から昨日の荒天の中を秋田までお越しいただきありがとうございました。無事ご到着いただき一同ほっとしております。
 この会は37 回を迎えましたが、年に1回、大体今頃の時期に開催されている秋田市民と秋田市医師会とをつなぐ催しです。これまでそのときどきの問題を取り上げてパネルディスカッション形式で開催してきました。
 今回の主題は「医療とケアの最前線」となっております。副題として「秋田で、元気に過ごすには?」~あなたは、秋田で元気に過ごすにはどうしたらよいとお考えですか?~となっております。これは今大変にホットなテーマであります。
 本日の基調講演で中村先生にお話しいただきますが、地域包括ケアシステムというのは最近厚労省が打ち出したものであり、秋田市医師会でも現在取り組んでいる課題です。
 厚労省は、2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進するという構想を掲げております。最近は医療と介護の境目が判然としない場合も多く見かけられるようになってきました。地域包括ケアシステムは医療・介護が一体になったようなイメージだと思います。
 地域包括ケアの構築は決して簡単なことではありませんし、先例がたくさんあるというものでもありません。その地域に合った方策を探していかなければなりません。
 海道先生のタイトルは非常に魅力的でありまして、このタイトルに引きつけられて参加している方も多いのではないでしょうか。アップトゥーデートなお話がいただけるものと楽しみにしてまいりました。
 本日のテーマはなかなか重いテーマでありますが、皆さんと一緒に考え明日へと踏み出せればと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 これをもちまして私の挨拶とさせていただきます。
穂 積   志 秋田市長 (鎌田副市長代読) 

 皆様こんにちは。秋田市副市長の鎌田でございます。本来であれば、穂積市長が出席し、皆様にあいさつを申し上げるところでありますが、あいにく他の公務により出席がかないませんので、代わって私から一言ごあいさつ申し上げます。本日、多くの皆様のご参会のもと、「第37回医療を考えるつどい」がこのように盛大に開催されますことを、心からお喜び申し上げます。
 また、秋田市医師会の皆様をはじめご参会の皆様におかれましては、日頃から医療・保健・福祉のみならず、市政全般にわたり多大なるご支援とご協力を賜っておりますことに、厚くお礼申し上げます。
 さて、今、国や地方において、最も重要な課題は少子高齢化に伴う人口減少社会への対応、そしてもう一つは地方の活性化をいかに行っていくかということになると思います。そういった中で少子化の問題につきましては子どもを産み、育てやすい環境を整備することだけではなく、雇用環境の改善など様々な課題がございます。高齢化については、我が国は平成25年の段階で男女ともはじめて80歳を超える平均寿命となっており、今女性が86.6歳、男性が80.2歳という状況です。そのなかで秋田県に目を向けますと高齢者の数が県全体では3人に1人、市の場合は4人に1人が65歳以上という現状であります。今後少子化が進んでいく中で、本市としましては、もちろん子育てに関する課題の解決等も重要ではございますが、一方で高齢者の方々の社会参加、特に生涯を通じて元気でいかに暮らしていくかということも非常に重要であるととらえております。我々といたしましては高齢者の方々が社会参加をして、自分の意思に基づいてできるだけ長い期間社会に関わられているということが、結果として秋田市の魅力を高めるということだと考え、いろんな策を講じているところでございます。今、市の特徴的な取り組みとして「エイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)の実現」を掲げております。WHO(世界保健機関)で提唱しているエイジフレンドリーシティグローバルネットワークに秋田市は2011年に日本ではじめて参加し、様々な取り組みをしております。そのなかで最もキーポイントとなることが2つありまして、1つは高齢者の方々の社会参加、もう一つは高齢社会に見合った社会システムの構築です。そういった側面から市が行っておりますのは、地域包括支援センターの充実、あるいは高齢者の方々が社会参加しやすいように市内は100円玉1つでバスを利用してどこにでも行けるようにするための整備を行っています。行政としてもいろんな取り組みをこれからさらに加速してまいりますが、主役はやはり皆様一人ひとりでございます。特に健康を保つということは個人の努力がなければできないことだと思いますので、今後とも私ども行政もいろいろと頑張ってまいりますが医師会の方々、関係者の方々とともに本日ご出席の皆様におかれましてもお力添えをお願い申し上げます。今日はこの後「医療とケアの最前線」“秋田で、元気に過ごすには?”というテーマでパネルディスカッション等もございます。今日一日最後まで参加いただいて、自分の健康について改めて考えてみる日にしていただければ非常にありがたいと思っております。
 結びになりますが、秋田市医師会のますますのご発展とご参会の皆様のご健勝、ご多幸をお祈りしまして、あいさつといたします。ありがとうございました。
小山田 雍 秋田県医師会長

 皆様こんにちは。土曜日のさぞおくつろぎの時間だと承知しております。これだけ多くの方々にご参会を賜りまして誠に感謝申し上げます。私どもは常に活動として、県民の皆様、住民の皆様に資する活動をしていくことを第一に考えております。そのためにはこのようなつどいを皆様と同じ目線、同じ土俵でともに考えていこう。そして共通な知識を持とう。そのためには医療を提供する側と受けられる住民の方々との共通の理解と信頼と共同作業が必要で、それがないと成果は出てこないものだと思います。今までいろいろお話がございましたが、私達はまだ経験したことのない超高齢社会を歩んでいるわけです。そういう中で秋田で住みやすい・過ごしやすい、そういうことを考えた場合にやはり住み慣れた場所・住まい・人間関係というものが大変重要なんだろうと思います。高齢になりますと、老老世帯、一人住まい、極端な例を言いますと認認世帯という言葉も最近出てきております。年を重ねていくこと自体が認知症の1つの因子といわれています。したがいまして、高齢になればなるほど要素が深まってくるということを覚悟して、皆様恐れおののいたり心配したり、自分の身内だったり近い関係の方が非常にお悩みになる世の中です。住み慣れたといいましてもいろいろな人間関係や環境がございます。そうしますと在宅という言葉もございますが、在宅というのは必ずしもご自分の自宅でというだけではないと思います。今申し上げましたように認認の世界、老老の世界では在宅といってもなかなかそうはいかない場合もあります。また、適当ではないかもしれませんが、肉親のご家族、世帯と言いましても、その人間関係は複雑だったり、いろいろな事情をお持ちのご家庭がありますから、いくら肉親であってもよい関係が日常続けられないことだってありうるわけです。そうすると必ずしもご自宅でなくても非常に自分と相性の良い施設、あるいは別の住まいということだって在宅と言えるのではないかと思います。認知症の方は、あまり好ましくない関係の中で住まわれますと、好ましくない行動が出てくることが知られております。そうするとご自分の家庭でなくても相性の良い、やすらぎのある施設や住まいが他にあれば、そういうところで住まわれるとそのような心理的な事象が良くなることが知られております。したがいまして、必ずしも自宅ということに私はこだわらなくてもいいのではないかと、これからの高齢社会を考えているところでございます。今日はいろいろな話題がありまして、海道先生からは肝臓のお話ということで、肝臓と見ますと私はすぐにC型肝炎や肝硬変、肝がんという話をすぐ思い浮かべてしまうのですが、あるいはiPS細胞や移植ということにいきがちですが、このサマリーを見ますとどうもそれだけではなく、非常に多彩な、例えばニーズの話もあるようです。私どものニーズはどうなのか。今日本では医学部の定員がどんどん増えてきていますが、ここ何年かで1500人ずつ毎年医者が多く生まれてきております。そうすると100人定員の大学が15校くらいできたことに相当します。そうすると需要、ニーズが頭打ちになって過剰な状態が来るのではないかとも考えるわけです。私は必ずしもそうではないと思っております。本県の場合は、必ずしも一定のところでストップして過剰になるという風には思っておりません。そのようなことも考えながら、非常に興味深いお話だなと思いますし、最後はマスコミの方を交えたディスカッションもあるようですので、私たちの広報という、こういうマスコミのメディアの方を通じた皆様の共通の理解、信頼関係、共通の情報を重要視しています。メディアに出られる私ども医療従事者はそれぞれそのときに相応しいテーマでより皆様と情報をともにするために努力してまいります。そこには話だけではなくて、その方の演じられる、あるいはお話されるその方そのもののお人柄、考え方、魅力、そういうものが話や映像に出てくるのだと思います。そういう意味では皆様とより身近なところでメディアは非常に重要だなと思っております。私ども常に皆様に資することをこれからも一層歩んでまいりたいと思います。ともに共同作業の成果を挙げていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
総合司会 それでは基調講演を始めます。基調講演は中村順子先生、座長は秋田市医師会副会長の三浦進一先生です。
今回は一人でも多くの方にご参加いただきたく手話の通訳も行っております。では、三浦先生よろしくお願いいたします。
座長(三浦副会長) では、第1部の基調講演を務められます中村順子先生をご紹介いたします。先生は昭和50年に秋田県立秋田高等学校をご卒業され、昭和54年に聖路加看護大学をご卒業です。その後聖路加国際病院、世田谷区の訪問看護師、日本訪問看護振興財団の訪問看護師・ケアマネージャー、平成19年から日本赤十字秋田短期大学の准教授になられております。その後聖路加看護大学大学院、青森県立保健大学大学院を卒業され、博士号を取得されております。平成25年4月から現在の秋田大学医学部保健学科の教授を務められております。
 今日の基調講演のテーマである「自分らしく暮らし、あなたらしく生きるを支える~地域包括ケアシステム・医療、看護」、中村先生らしいお話が聞けるのではないかと大変楽しみにしておりました。では、中村先生お願いいたします。
- 基 調 講 演 -

「自分らしく暮らし、あなたらしく生きるを支える
           ~地域包括ケアシステム・医療、看護~」
中 村 順 子(秋田大学医学部 保健学科教授)

介護が必要になったら自分が望まなくても施設へ、病気で入院したけれど治療の必要がなくなっても帰る場所がないから病院にいる、それは自分の人生の最終章として納得がいくでしょうか?できるだけ自立して自分らしく暮らすことはもちろん、介護や医療が必要になっても自分らしく最後まで暮らすことを支えるのが地域包括ケアシステムです。自分はどのように暮らしたいのか、家族だけでなく地域の多様なささえあいによってその願いを実現します。でも自分をもっと大切にしようと考えることは、自分の周りのあなたを大切にすることです。自分もあなたも大切に。互いにそれぞれの生き方暮らし方を認め支えあう地域、それはケアリングマインドを持った地域です。地域包括ケアシステムが目指すところは結局そのような地域づくりと言えるでしょう。
座長(三浦副会長) ありがとうございました。地域包括ケアシステムのことやご自分の老後、近い将来医療・介護を受けなければならなくなったときのイメージを持つことができた方が多かったのではないでしょうか。中村先生にはこの後のパネルディスカッションでパネリストをお務めいただきます。中村先生、ありがとうございました。
総合司会 どうもありがとうございました。引き続きまして第2部の基調講演を始めたいと思います。第2部の講演を海道利実先生、座長を松岡一志先生にお願いしております。
座長(松岡会長) それでは第2部の基調講演に入りたいと思います。第2部の基調講演は京都大学医学部 臓器移植医療部准教授・海道利実先生です。海道先生は大変ご高名な先生ですので皆様ご存知かと思いますが、ご紹介させていただきます。海道利実先生は1963年3月に福井県福井市のお生まれです。1987年京都大学医学部を卒業、同年5月京都大学外科学教室に入局なさっています。1988年4月公立豊岡病院外科、92年4月京都大学大学院医学研究科博士課程に入学、96年にご卒業なさっています。98年4月日本学術振興会リサーチアソシエイト、99年2月京都大学腫瘍外科(旧第一外科)の助手になられています。2001年4月大津市民病院で外科医長、2007年4月京都大学肝胆膵移植外科・臓器移植医療部助教、2010年10月から京都大学肝胆膵移植外科・臓器移植医療部の准教授になられています。今日のタイトルは「秋田を元気にする“深いい話”と肝移植の話」です。海道先生、どうぞよろしくお願いいたします。
「秋田を元気にする“深いい話"と肝移植の話」
海 道 利 実(京都大学医学部 臓器移植医療部准教授)

 “マネジメントの父”と呼ばれるP.F.ドラッカーは、マーケティングとイノベーションの重要性を説きました。医療も例外ではありません。医療の現場におけるニーズを抽出し、それらに対し問題解決を行い、よりよい方向に変えていくことが重要です。
 たとえば、肝移植領域では、術前低栄養状態が予後不良因子であることから、周術期栄養療法を積極的に導入しました。また、筋肉量や筋力の低下を意味するサルコペニア状態である患者さんは移植後の予後が不良であることより、2013年よりサルコペニアを考慮した新たな移植適応を樹立しました。さらに周術期栄養・リハビリ療法を行うことで、飛躍的に移植成績が向上しました。また、「患者さんに良いことは積極的に導入する。患者さんに良くないことは躊躇無く止める、変える。」の方針から、術前経口補水療法を他の国立大学病院に先駆け、いち早く導入しました。
 外科医のニーズにつきましては、教授だけが手術するのではなく、多くの医局員に執刀の機会を与えたり、学会発表や論文作成のコツを指導したりして、外科医のモチベーション向上のために、様々な取り組みを行っています。
 最後に、「仕事や人生が楽しくなる“深いい話”」として、松下幸之助氏や稲盛和夫氏など、偉人や創業者の金言も紹介させていただきました。本日の講演の中に、医療従事者のみならず、秋田の方が元気になるヒントがいっぱい詰まっていたことと思います。
- パネルディスカッション -

司会(秋田市医師会広報委員会担当理事・田中 秀則)
総合司会 それではお時間になりましたので、パネルディスカッションをはじめさせていただきます。パネリストに堀江千景さんをお迎えいたしました。前半でご講演いただいた中村先生、海道先生、堀江さんを交えてパネルディスカッションを行います。座長は田中先生です。よろしくお願いいたします。

司会(田中) はい。よろしくお願いします。第1部では中村先生、第2部では海道先生のお話を聞きました。「みんなの健康」というラジオ番組は20年続く長寿番組で、私もお世話になっています。そのパーソナリティである堀江さんから最初にお話しいただきます。お話を聞いた後にパネルディスカッションを開催いたします。それでは堀江さん、よろしくお願いいたします。

堀江氏 こんにちは。皆さんお元気ですか?堀江千景です。みんなの健康を聴いたことのある方はどのくらいいらっしゃいますか。手が挙がって嬉しいです。ありがとうございます。私がこの番組を担当したのは38歳のときでした。今年で21年目に入りますが、県内くまなく一人で回りました。延べにして2500人あまりの先生方からお話を伺ってまいりました。医師会の先生、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士、放射線技師、栄養士、本当に様々な医療に関わる方々から出演していただきました。お医者さんでも内科、外科、小児科、婦人科、整形外科、ありとあらゆる専門の先生方から病気の原因、検査の方法、治療の仕方、予防について等詳しく教えていただきました。ときには、雪道で転ばない歩き方やダイエット、しみ・しわ等女性の私たちが今すぐ知りたい情報も放送してきました。そして私自身もたくさんのことを学びながら自分の健康は自分で守る、セルフメディケーションという考え方をリスナーの皆さんに医師会の先生方とスタッフとともにお伝えしてまいりました。それから気軽に受診できる、そして相談できるかかりつけのお医者さんをイメージしていただけるように、番組の中で、ときには先生方の趣味の話も交えてお人柄が伝わるような放送を心がけてきました。最初に小山田県医師会長がおっしゃったことを同じ思いで伝えてまいりました。そして日本人の2人に1人が罹るといわれているがんについてもたくさん放送しました。病気そのものの説明はもちろんですが、リスクを減らす生活習慣、緩和ケア、もし自分ががんにかかったらどうしましょう?そういうお話もしました。もちろんがんは怖い病気です。でも、病気のことを正しく知って、自分や家族が患者になったことを少しだけ考えておくと大きな動揺をすることなく、迷いなく病気と向き合っていけるのではないかとも感じています。避難訓練と同じようにご家族で話し合っていただけたらと思います。何より大切なことは、自分は絶対にがんにかからないなどという意味のない自信は持たないでください。そして定期的に検診を受けていただきたいと思います。これからもみんなの健康を聴いていただいて、家族や自分の健康について一緒に勉強していきましょう。
 皆さん、何か運動はしているでしょうか。内閣府の調査によると週3回以上スポーツをしている高齢者は70歳代で60%を超えるそうです。働き盛りの方々の2倍強だそうです。ウォーキング、水泳、ゴルフが人気とのことです。かつての高齢者スポーツの代表といわれたゲートボールは上位から外れ、私のように大会に出て頑張ろうという高齢者が増えているそうです。
 実は私は趣味でテニスをやっています。私が参加している大会は全日本予選を兼ねたベテラン大会で、往年のプロも参加します。男子は35歳から80歳以上、女子は40歳から75歳以上で、5歳刻みでそれぞれ戦うのですが、例えば50歳から55歳クラスに上がると、「あなた、ニューフェイス?」と必ず聞かれます。ちょっとした優越感を感じます。新鮮な気持ちで戦うこともできます。70歳でも80歳でも「あなた、ニューフェイス?」と言われるんですよ。ちょっと嬉しいですよね。あちこちで行われていますが、東北6県はもちろん、関東、甲信越、北海道、沖縄まで試合に出かけます。同じ年代で戦うので、テニスのレベルも分かりますが、体力レベルがよく分かるんです。ただ、レベルアップのためには若い人とも戦います。この写真は高校生と一緒にテニスをしている写真です。仕事をしているときよりも若々しく見えるのはどうしてなのでしょうか。不思議な気がします。本当に私はテニスが大好きです。全国の仲間と、あちこち痛いね~、腰が痛いと言いながら80歳になってもテニスするんだ。そして生き残って全日本選手権に出るんだ、とみんな競争しながら頑張っている状況です。指導員の資格を持ってジュニアの育成だとか、高齢者のスポーツについても講習があり勉強しています。それが今の私の元気の源、モチベーションになっているような気がします。皆さんも何でも良いので楽しく日常生活にスポーツをとりいれてみませんか?

司会 堀江さん、ありがとうございました。ではパネルディスカッションを開始いたします。司会を務めさせていただきます秋田市医師会の田中です。昨日は強風だったため海道先生の乗られる伊丹空港発の便が欠航になるのではないか、中村先生も静岡にいましたので心配しておりましたが、無事に飛行機も飛びました。さて、海道先生、秋田にどんなイメージをお持ちですか。海道先生はてっちゃんということでしたが。てっちゃんについてもご説明いただければと思います。

海道氏 はい。私が秋田に来るのは今回で3回目になります。最初に秋田に来たのは学生時代です。ボート部でしたが、部活が休みのときは日本中を旅行していました。3人兄妹でそれぞれ下宿をしていましたので、私は仕送りをもらわず、バイトをして生活費や授業料を払った残りの貯金で全国を旅行していました。そのときに来たのが1回目です。2回目が約10年前の、秋田で学会があった時です。7月の天気のよいさわやかな日で、ずっと乗りたかった五能線に乗るため、弘前に行き、岩木山を見たり、日本海の景色を見たりしてきました。今回3回目ですが、到着した時間が夜だったので、景色はあまり見えませんでした。

司会 昨日、海道先生と食事をご一緒したのですが、お店の人に秋田の地物を出して欲しいと依頼していました。そして出てきたのはカスベでした。次に出てきたのはヒロッコととんぶりでした。海道先生にとっては目新しい食材だったようです。そういえば、海道先生は1箇所だけ鉄道で行ったことのない場所があるそうですが、それはどこですか。

海道氏 電車に乗るのが趣味でしたので、線路がない沖縄には行ったことがありませんでした。

司会 では、今日はパネルディスカッションと、皆様から質問をいただいております。時間の関係で全部はご紹介できないと思いますが、時間の許す限りご紹介したいと思います。では1つ目は中村先生への質問です。「看護師養成資格にはカリキュラム訪問看護はどのくらい入っているのでしょうか。また看護学生の中で訪問看護師を目指す人はどれくらいいるのでしょうか」という質問です。

中村氏 今、看護師を養成する大学が全国に増えてきていて、秋田にも3校あります。その他にも専門学校がございますが、2015年春で全国に241校くらいの大学がございます。ちょうど静岡県看護協会で訪問看護のカリキュラムのお話をしてきましたが、在宅看護論というものがカリキュラムに入ってから今年でちょうど20年目です。日本が高齢化になっていく、医療の場が在宅になっていくということでそういうものが入って来ているのですが、周知がなかなか難しいところではあります。今、学校を卒業してすぐ訪問看護師になれるようなプログラムを作っているところも少しずつ出始めてきましたが、まだそこのところが整っておらず、イメージとしては長く病院で経験してきてからでないと、訪問看護師になれないと思う方も多いと思いますが、そんなことはないです。2、3年、1、2年経験していただいたらすぐ訪問看護も大丈夫ですので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

司会 中村先生、ありがとうございました。会場の皆さんは堀江さんは「健康だから元気だからテニスができるんだ、80歳までできるなんてすごいな」と思っていらっしゃるかと思いますが、実は堀江さんは不屈の人です。手術を多く受けているのですが、さてここで問題です。堀江さんは何回手術を受けているでしょうか?では堀江さん、正解をお願いします。

堀江氏 実は8回受けました。もちろん大小さまざまで、命に関わるような手術はしておりません。18歳で左肩に腫瘍ができ、摘出手術をしました。それをはじめにして乳腺症、腰痛ヘルニア等、最近は強剛母趾の手術をしました。先ほど海道先生が講演会で手術のときの絶食の話をしていましたね。私がまさにそのようにお水もご飯も口にしていいという、全身麻酔だったんですね。ずっと前に受けた手術のときは食べちゃいけない、飲んじゃいけないという状態だったので辛かったのですが、飲んでいいという話で、今回の病院は胡散臭いな、大丈夫なのかな?と思いました。正直少し控えめに飲んだり食べたりしました。でも先生のおっしゃったことを聞いてそういうことだったのかと思いました。

海道氏 科学的に考えて絶飲食は意味がないんですね。悪影響がないわけですから、だったら体にとっていいことをしようということで、術前水分摂取を許可しました。2012年に麻酔科のガイドラインも変わりましたから、今は全国どこの病院で手術を受けられても前日の24時までは食事OK、手術の2時間前まで水分OKとなっていると思います。

中村氏 手術のときだけでなく、介護予防も栄養と脚です。栄養状態がしっかりしていないといけないということと、脚の筋肉がしっかりしていると呼吸状態や内臓のリハビリにもなるということですので、やはり健康寿命を延ばすためには脚の筋肉を衰えさせないということと、しっかり栄養を摂るということですね。

司会 会場の皆様からうってつけの質問がありました。「健康は軽運動が必要だと思います。秋田は冬期間の運動が少なくなるので体力が落ちるのではないかと思いますが、何か対策はありますか?」というご質問です。お三方に聞きたいのですが、まずは海道先生、ここ秋田で冬期間できるような運動はありますでしょうか。

海道氏 私は出身が福井県ですが、どうしても雪が降っているときは外を歩くと滑って骨折してしまうこともありますので、家の中で階段の昇り降りやスクワット、そのような膝の曲げ伸ばしを一日に何回か、例えば3回行うとかするようにすれば、転倒もないし、いいのではないでしょうか。

司会 中村先生、お願いします。

中村氏 実は保健師の実習をした学生が、冬場は全然運動しなくなるのではないかということで運動のメニューを考えながら矢島町で披露したところ、「いやぁ、冬場の方が雪下ろしで大変だから」と言われて、学生は「そうなんだ」と思ったそうです。ですので、雪寄せもある特定の筋肉を使うかもしれませんが、汗をかく運動になっているのかなと思います。

司会 堀江さん、冬はテニスができないと思いますが、どうでしょうか。

堀江氏 そうですね、冬は秋田市内で言えば室内でテニスができるところは限られています。本当に他の県に比べるとそういう室内施設がとっても少ないので、どなたか何とかしてほしいなとは思っています。おそらく他のスポーツをやっている方もそういう行政への要望というのはあるのではないでしょうか。ただ、暮らしの中の雪寄せやお掃除というのも運動だということを番組の中で何度もお伝えしましたので、ぜひお掃除しながら体を鍛えなきゃなと、私自身も思っています。

司会 ありがとうございます。では次の質問です。今日はお二人の大学の先生がいらっしゃいますが、「近年患者数が増えているのはしょうがないと思いますが、データだけを見ていて患者を診ていない医師が多く見られる気がします。どう思われますか?」という、お二人の医師もしくは医学生、看護師、看護学生の教育という話になるかと思いますが、まず海道先生お願いいたします。

海道氏 それは日本全国共通したことで、電子カルテが増えていますよね。電子カルテを入力しながら診察しますので、患者さんはどうしても「自分の方を見てくれない」という思いがあります。やはりホスピタリティーといいますか、本当に患者さんをちゃんと見ておもてなしするという心で診療すべきなんですが、データ重視で本当に患者さんを診ていない頭でっかちな医者が増えているかもしれませんね。だから、私も医学部の1年生に講義するのですが、医師としての講義だけではなくて、今日講演したような内容もお話ししますし、社会人として、人間として当たり前のこと、大切なこと、人との関わりなども教育するようにしています。

司会 中村先生、看護師教育についてはどうでしょうか。

中村氏 看護師は、もともとナイチンゲールという人が「病気を診るのではない、病気を持っている人を診るのだ」と言っております。病気だけに集中していくというのはもともとのケアではないですね。なので、病気を持っている患者さんとしっかり向き合いながらお話を聞くということがとても大事だと思います。例えば外来診療など医師が一人で何十人も受け持たれていて、なかなか物理的に時間が取れなくてじっくりと先生にお話を聞いていただけないということもあるかと思うんですが、そういうところにもっともっと看護が入っていけるのではないかなと思っています。実際にしっかりと看護の方がお話を聞いて、媒介者となって医師に伝えていくということもできると思いますし、さっきお話しした在宅医療なども訪問看護師さんが間をつなぐ役割をしますので、ぜひ看護をそういう役割にしていきたいと思います。

司会 ありがとうございます。堀江さんはこれまで何回も入院生活、手術をされてきたということですが、また、みんなの健康のパーソナリティをされてきましたが、医師や看護師に対する理想像というのはありますか。

堀江氏 理想像、難しいのですが、困ったときにそばにいてアドバイスしてくれる人であってほしいですね。ただ、それをするためには自分からいかないと。お医者さんから、大丈夫ですかと毎日家に来てくれるわけではないですので。そういう関係を持たないといけないんだなというのはつくづく感じます。できるなら、困っているときに何とか助けてくれる、一緒に話し合ってくれる存在でいてほしいなというのが理想でしょうか。

司会 そうですね。また今のような感じもありますし、会場から次のような質問もありまして、「健康なうちからかかりつけ医を見つけるということは難しいと思うが、とても貴重なことだと思う。病気になってから何か医療に対する不安を相談できる場所があればよいと思うが、行政がやるべきものなのか誰がやればいいのか考えなければならない」という質問をいただいております。多分皆さんも今健康であってもあと5年後10年後自分は介護が必要になるのか、また病気になったらどうしようと不安を持っている方がいるかと思いますが、中村先生、どのようなアドバイスがありますでしょうか。

中村氏 はい。今実際にあるかどうかは別として、やはり地域毎にちょっとした健康のことを「これはどうしたらよいかな?」と相談できる窓口や場というものがあればいいと思っているんですね。それは先ほど講演会で紹介した「暮らしの保健室」もそうなんですが、訪問看護ステーションがそういう場になりうると思っています。もっともっと機能が拡大できるのではないかと。現在、訪問看護ステーションでは医師の指示書をもらって在宅で療養している人の家に出向くことにしていますが、地域にもしそういう場があるなら、ちょっと来て血圧を測ったり、「ちょっとこういう状況なんだけど、どうしたらいいのかな」と相談できる場に、これからなっていくといいなと思っております。

司会 ありがとうございました。今日は海道先生から肝移植の話を伺うことができました。秋田ではあまり肝臓移植という言葉はあまり馴染みのないような感じがしますが、会場の皆さんのご家族、またはご友人で肝臓を悪くしているかもしれないということで海道先生に診ていただきたいという方がいらっしゃるかもしれません。京都と秋田では大分離れていますが、海道先生いかがでしょうか。

海道氏 実際、私の患者さんの中にも秋田の方はいらっしゃいますし、全国にいらっしゃいます。普段は地元で診ていただいて、問題があった場合はFAXを送っていただいたり、年に何回かは診察にいらしていただいたりします。もしご家族や知り合いの方で肝臓が悪く、肝硬変が悪化してもう手がないといった場合には、「それでは先生、肝移植という方法はありますか?」と患者さんサイドから言っていただくと主治医の先生が手紙を書いてくださいます。それを京都大学病院に送っていただければ、我々がコーディネートして、面談の日程を調整しますので、どうぞお困りの時はご相談下さい。

司会 ありがとうございます。では、別の質問になります。中村先生、「お母さんの家」の話をしていただきたいとのことですが、私は「お母さんの家」という言葉は初耳なのですが、お母さんの家というのは?

中村氏 はい。お母さんの家というのは、先の小山田県医師会長のごあいさつの中にもありましたように、この家にいたいけれども老老になったり等で、この家にいられるかと不安を持つということはあると思いますね。でも、その家にいられなかったらもう施設なのか、施設はなぁ…という人もいると思います。そのときに宮崎からはじまった動きで民家を借りてその民家で介護やケアの必要な方、あるいはがんの末期の方とか、必ずしも看取りの人を集めるわけではなく、看取りまでここでしっかり介護をしますよという、自分の家ではないけれども家、民家で5人くらいの方をルームシェアのような形でお引き受けして、そこに訪問介護、訪問看護が行くという形のムーブメントが今宮崎を中心に全国27か所ではじまっています。私がケアマネージャーをしていたときに本当にそういう家が欲しいなと思い、秋田に来たら絶対にしたいなと思って8年目で、昨年やっとNPOを作りました。ホームホスピスくららの家という名前で始めたいと思って準備しています。最後をどのように暮らすのか、いろんな住まい方のモデルがあってもいいと思うんですよね。そのうちの一つとして覚えていただければと思っています。

司会 ありがとうございます。今日はお三方に発表していただきましたが、海道先生は肝臓移植を専門とした先生で大変多忙な生活を送っていらっしゃいます。今回ご講演いただけたことにも大変驚いております。その中でも講演の中に「今でしょ」「じぇじぇじぇ」等の流行語を取り入れておりましたが、どのようにして本業以外の情報も取りこんでいらっしゃるのでしょうか。その方法を教えていただければと思います。

海道氏 どうなんでしょうかね。まずは常にアンテナを広くしている、つまり好奇心が旺盛なんでしょうね。だから、テレビでお笑いも観ますし、今、流行っているものも雑誌や新聞を読むと自然と覚えますしね。あとは、一回きりの人生ですから、常に「向上心」ですね。本業の手術もそうですし、学会発表や論文も、今回の講演についても、前回の講演よりもより面白いもの、より良いものにしようと、常に高めようと思っています。

司会 私も海道先生の気持ち、よく分かります。私も年を取ってくるとなかなか難しくなってくるんですが、年を取ってきたからこういうのが嫌だと決めつけてしまうと自分が老け込んでしまうので、どちらかというと新しい言葉が好きです。私もなるべく流行語を使っていこうと思います。あとは、先生の下には多くのスタッフがいると思いますが、思いやりとしてどのようなことをされていますか。

海道氏 やはりモチベーションですね。若い人を育てようという思いで接する、つまり親が子どもに接するように支えてあげたいという思いで接しています。

司会 先生は厳しいのでしょうか、優しいのでしょうか。

海道氏 自分で言うのもなんですが、表面的には厳しさは表わさずに優しく接していると思います。

司会 ありがとうございます。中村先生、海道先生からはチーム医療、チームという言葉が出てきましたが、チームで生活の質を高めるということでしたが、訪問の現場も難しいと思います。そのうまくいかない状況の中でどのようにチームを盛り上げる、モチベーションを高めていくコツを教えていただきたいのですが。

中村氏 チームを盛り上げる、モチベーションを高めていくには、利用者さんの希望に沿うように頑張ろうという一つの気持ちを作っていくと盛り上がると思います。自分たちだけがモチベーションを上げようというのではなく、特に在宅のチームは、「どのように暮らしたいのだろう」ということを本当にみんな熱心に考えています。訪問看護師さんは夜布団に入ってからも利用者さんのことを考えるので、そのことを布団残業と言うそうです。そういうことがモチベーションになっているのかなと思います。

司会 ありがとうございます。では堀江さんにお聞きしたいのですが、80歳くらいまでテニスをしたいとおっしゃっていましたが、皆さんご存知のように秋田県の平均年齢が84歳です。身体を動かすことに支障がない人とそうでない人とでは介護を受けるまでに10年近く差があると思うのですが、堀江さんは何度も手術を受けて休むと筋肉が衰えると思いますが、またテニスを始めようと思う闘志の源は何でしょうか。

堀江氏 闘志の源、とまではいきませんが、やっぱり全国に友達がいて、みんなが「早く戻っておいで。テニスの大会出るでしょ?」と電話をくれるんです。そうすると、ちょっとまだ痛いけれど頑張って直さなくっちゃ、と思うんですね。それに加えて、自分はこういう風にしたいんだということをお医者さんにもリハビリの先生にも「バカみたいでしょ?80歳までテニスを続けたいんです」と話すと、先生方は笑いながら「じゃあ頑張りましょうよ」と言ってくださるんですね。それに向けて一緒に頑張ってくださるというのがきっかけでしょうかね。

司会 やはりまわりや全国に友達がいるということ、温かく見守ってくださる方がいるということが非常に大事なんだなと思いました。本日は素晴らしい先生がお三方いらっしゃいますのでせっかくですので質問の場を設けたいと思います。どなたが質問したい方はいらっしゃいますでしょうか。

参加者A 質問です。病院の情報を知りたいのです。皆さん患者さんが悩むのは、その病気になったときにどこの病院に行けばいいのか、また地元にどういう病院があり、どんなことができるのかということです。いろんな本や雑誌から情報を探すということは大変なことです。病院のいろんな情報をなぜ公表できないのかという疑問とともに、情報がないために自立しないといけないのに自立出来ないシステムがあるので、やはり情報が欲しいです。

司会 一応私、秋田市医師会広報担当の田中と申します。専門家からのお話の前に私からお話しさせていただいてよろしいでしょうか。今、秋田市の場合はさきがけ新報社と秋田市医師会で病院のマップが出ています。さきがけ新報社のマップは全戸配布になっていますし、医師会のマップはご希望があれば差し上げることもできます。

参加者A 病院の情報というのはそこの病院でどの病気を専門に診ているかという情報です。海道先生の今回の発表ではじめて先生が京都でそういう病気を専門に診ていることや、そういうところまで進んでいるということが分かるわけですね。他の話でも例えば本荘で1箇所、もういらっしゃらないのですが著名な先生がいらして、そこにあるタレントさんが悩みに悩んでそこを探してやっとたどり着いたという話を聞いたりもしました。この病院にこういう先生がいらして得意な病気は○○という情報を知りたいということです。病院のマップというのは当然のことです。

司会 もう一度確認しますが、例えばホームページを確認できればどこの大学病院とか分かりますよね。

参加者A だけど高齢者の方や一人暮らしの方、いろんな方がいらっしゃいますよね。ホームページを見ることができるような若い方と離れて暮らしていらっしゃる方もいます。やっぱり患者さんが今どんな状況なのかということを高齢県秋田で見ていただければ、じゃあどういう情報が患者さん全員に届くのか、そこが大事ではないかと思うんですよね。皆さん自立したいんですよね。他の人に頼らないで自分で出来ることは自分でしたいし、情報があればじゃあどういうことを自分で学んで情報を集めてどういう質問を先生にしたらいいのか、そこまでたどり着けるんです。ただそこに病院があるよというだけでは分からないと思います。もう一歩進んで欲しいなと思います。

司会 先ほど言ったように病院・医院・クリニックのパンフレットがあるということと、訪問看護や看取りなどのパターンも秋田市医師会では用意しております。ただ、県外の場合では例えば海道先生の話を聞くということは秋田ではやはり分からないことです。私どもの役目というのは、秋田の医療は素晴らしいけれども他のところでは海道先生のようなことをやっている方もいること、訪問看護師のプロフェッショナルがいるということ、堀江さんのような不屈のラジオパーソナリティがいるということをお知らせして、なるべく市民の方に情報を提供するということを委員会の立場で行っています。答えになっていませんね。

中村氏 多分欲しい情報の中身が違うということではないでしょうか。ただ今質問された方が、例えば今日これが分かったから京都大学だわ、ということをどこまで広げるかということになりますと、全て全国のどこの病院がどういうことが得意でということをすぐにアクセスできるものを用意するということは物理的に厳しいような気がします。もし秋田県の中で、またはお住まいの地域の中でこの病院ではこんなことをやっているよ、とか、あるいは在宅医療をやっている医師はここにいるとか、これから地域包括ケアシステムの中で必要な情報がどこかにあって、ここにいけばそれが得られるということは先ほどの暮らしの保健室もそうなんですが、どこにアクセスすれば情報を得られるということを地域で考えていって地域包括ケアシステムを作っていくということは情報にアクセスできるということだと思っています。それはこれから頑張っていかなければいけないところではないでしょうか。

司会 よろしいでしょうか。それでは他に質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。

参加者B 今日は貴重なお話をありがとうございました。私の個人的なお話になるのですが、医療の学生の方々を教育されていらっしゃると思いますが、私の身近なところだけなのかと思ってしまうのですが、医療職に就きたいのは安定していて食べるのに困らないからという方が多くて、そういう方のモチベーションはやはり低いように思います。そういう方々を教育されている中で、例えば心変わりをしてモチベーションが上がった等の例があったら教えていただきたいということと、低いモチベーションでやってこられた方に対してどういう対応をされているのかということを知りたかったので、教えていただけるとありがたいです。

司会 ありがとうございました。私は産婦人科医ですが、なぜ産婦人科医になったかといいますと、私は産まれた時に母体の安全のためにもう助からないと言われました。助かったけれども重度の心肺停止傷害が残るだろうと言われ、個人の病院で生まれました。小さいときからその産婦人科の先生と仲良くなってその経緯で産婦人科医になりました。今日は教育のプロフェッショナルの先生がお二人もいらっしゃるので、海道先生、難しいお話ではありますが、京都大学の場合はどうでしょうか。

海道氏 18歳で進路を決めるわけですよね。すごく難しいですよね。全然分からない中で何らかの理由で入ってしまうわけで。不安はあるでしょうが、医学生の場合は早めに病棟で患者さんと接したり、実際の医療現場を見たりすることで、ヒューマニズムが芽生えると思いますね。そうすると、医師としての道を選んでよかった、と実感すると思います。したがって、早く現場に接するようにすることですね。あとは、我々指導者がより良きカリキュラムを作ることと、医学生自身の努力、この両方が大事でしょうね。

司会 中村先生、非常に難しい問題だと思うのですが、看護師を教育する立場としてのお考えをお伺いしてよろしいでしょうか。

中村氏 私は看護大学に入ろうと思う方の理由はいろいろだと思っています。例えば生活が安定するという理由で入ってくる方もたくさんいらっしゃると思いますし、私はそれを間違いだなとは思わないです。ただ、実際に看護師として働くまでの間に大事なのは、どこで「ちゃんと看護と出会えるか」ということです。動機はどうであれ、看護ってこういうものなんだ、もっとこういうことをしたら自分のことを高められるなとか、自分は本当にできるかなとか、とにかく人と出会う仕事なのでその中で看護って深いな、面白いなとどこかで気付けばいいと思っています。私たちのような教員は上から目線でこうだというわけではありませんが、授業では実践していたときの失敗とか、自分が生きてきてこんなことがあったという、いわゆる専門的なことと共に自分の体験をよく話すんですね。そういう中でどこかで看護ということに出会って欲しいなと思いながら教育しています。

司会 ありがとうございました。堀江さんはラジオのパーソナリティをやってらっしゃいますが、なぜパーソナリティをやろうと思ったのですか。

堀江氏 きっかけは中学生くらいにアナウンサーになりたい、ただそれだけでそれに向かって用意周到に放送部に入って、短大に通いながらアナウンサーの専門学校で学びました。夢を叶えてアナウンサーになったら結婚したら退職ですよと言われ、すぐ退職してしまいましたが、やっぱり人と関わることが好きだったので、結婚してからも司会の仕事などをしました。海道先生の話にもありましたように仕事が好きにならないとモチベーションは上がらないんですよね。私はテニスが好きだから一生懸命やっているだけで好きになる、そこにキーワードがあるような気がします。職場が好きでもいいですし、友達が好きになる、あの子とおしゃべりが好きだから明日も行こうということでもいいと思います。
司会 ありがとうございます。参考になりましたでしょうか。まだまだ会場の皆様とお話をしたいのですが、時間が来てしまいました。今日は3人の先生方をお呼びしてパネルディスカッションをさせていただきました。これでパネルディスカッションを終わりにしたいと思います。皆様どうもありがとうございました。

総合司会 海道先生、中村先生、堀江様、司会の田中先生、ありがとうございました。これを持ちまして第37回医療を考えるつどいを終了いたします。非常に有意義なディスカッションだったと思います。今日の副題は「秋田で、元気に過ごすには?」でしたが、元気に過ごすには秋田がいいと言ってもらえるように、自分たちだけでなく私たちみんなでできることをスピーディーに明日からと言わず今からやっていければと感じました。本日はご参加、どうもありがとうございました。

堀江氏 本日ははじめての試みとして手話通訳が入ったのですが、素晴らしかったですね。これからもこういう秋田になりたいなと思いますね。ありがとうございました。お疲れ様でした。
参加者アンケート 感想・意見・テーマなどの回答結果

ご自由に感想、ご意見をお聞かせ下さい。また、今後取り上げてほしいテーマがありましたら、お書き下さい。



①この度はありがとうございました。初めて参加しましたが、とても有意義な時間を過ごさせてもらいました。日々生活していて、医療職の方と我々一般市民の間には何か距離を感じます。それをかき払ってくれるような講演を、今後も期待しております。(29歳以下・女性)

②海道先生の話は、とてもおもしろかった。「3つのNO」は明日から、今からやっていきたいと思いました。(40歳代・女性)

③海道先生の講演に、とても感激しました。あっという間に時間が過ぎ、ずっと聴いていたい、そんな気持ちになりました。肝移植のお話ということで、少し硬くて難しい内容なのかと思いきや、とてもわかりやすく、興味深い内容で、不思議と肝移植を身近に感じました。京大における臨床での海道先生の工夫や、熱心な取り組みが伝わってきて、元気を頂いた思いです。ブレイククイズも絶妙なタイミングで、相当考えられていると思いました。秋田(与えられたポジション)で、手を抜くことなく、ベストを尽くしてくださった海道先生に、感謝の気持ちでいっぱいです。パネルディスカッションは、会場からの質問事項をよく汲み上げながら、パネリストの先生方が簡潔に、的を得た答えをくださってとてもためになる内容だったと思います。今回のつどいは、手話の方が通訳するスタイルで、とても良いと感心しました。今後手話を必要とされている障がい者の方にも、広く宣伝して、よりたくさんの方が来場するつどいになることを望みます。本当にお疲れ様でした。(40歳代・女性)

④海道先生のお話がとても楽しく、頭に入りました。(70歳以上・女性)

⑤私は体操をしていて、海道先生のお話でサルコペニアと言う骨格筋筋肉を落とさない新しい言葉を聞いて、今回参加して納得することができました。今日はほんとうにいろいろとユーモアのある講演を拝聴することができてありがとうございました。(70歳以上・女性)

⑥いろいろなセミナーに参加していますが、今日のはとてもよかったです。療養の件、地域支援の件等、とても参考になりました。(70歳以上・女性)

⑦専門だけでなくビジネスから学んだものを取り入れてわかりやすかった。ユーモアのある講演だった。(70歳以上・女性)

⑧参考になりました。ありがとうございました。(70歳以上・女性)

⑨ほんとうに来てよかった。と思えるほどよかったです。どうもありがとうございました。(70歳以上・女性)

⑩海道先生の話はユーモアの中に真意がある話し方でとても内容がわかりやすかった。いくつかの項目を心にとめて日々の生活に活用したいと思う。(70歳以上・女性)

⑪毎日仕事と家庭で精一杯過ごしていましたが、新聞を見ていたら、今日のテーマが目に入ってきました。両講師の経験、人生を楽しくなる深い話を聞き、元気をいただきました。今老眼が進み、読書も遠のいているので、これから紹介していただいた本を読んで行きたいと思います。(60歳代・女性)

⑫基調講演第1部、第2部とも、とてもすばらしかったです。パッションを忘れずに、いきいきと生活します。(60歳代・女性)

⑬海道先生の講演で元気をもらいました。(60歳代・女性)

⑭中村先生の地域包括ケアシステムの説明は、とてもわかりやすかった。海道先生の話は医療を生活の中から楽しく聞くことができました。講演は、やはり楽しくないと!(60歳代・女性)

⑮本日は参加できてとてもよかったです。元気をもらい前向きにいろいろなことにチャレンジしてみようと思います。ありがとうございます(60歳代・女性)

⑯海道先生の講演は非常に素晴らしくとても感激いたしました。講演の中で、楽しくなければ人生ではない!まさしく、私は今、これからずーっと毎日生かされている以上、一瞬、一時、一日を大事に大事に生きようとしています。(感謝の毎日) また、涅槃像の画像が出たときはうれしく、反面 Steve Jobs のファンでもあり、People with passion can change the world. とても清々しく生きるための深いい話でした。ありがとうございました。(合掌)秋田に又いらしてください。心に栄養を与えてください。好奇心旺盛な高齢者です。Gratitude every day only.(60歳代・女性)

⑰会場内の雰囲気がとてもよかった。難しい話をわかりやすく説明してもらいありがたかったです。次回も参加したいと思いました。(60歳代・女性)

⑱良い学び、考えさせられる研修でした。また、企画をして欲しいと思いました。 (60歳代・女性)

⑲元気になれそうです。わかりやすく伝える大切さを学びました。熱意ある講師に感謝です。 (60歳代・女性)

⑳今日の先生方の話を聞き、少し老後の明るい兆しが、みえたような?気がする。(50歳代・女性)

㉑大変参考になるお話を聞いてとても有意義でした。 京都大学の海道先生のお話は、「しゃれけ」もあって話し方も聞きやすく、とても思いやりのある誠実な先生でした。秋田県人も、もっとしゃれけをもって人に接していただけたらなあと思いました。(60歳代・女性)

㉒基調講演は、とても参考になりました。地域で盛り上げていくことが大事と感じました。パネルディスカッションは、おもしろく、今日から実行させていただきます。(40歳代・男性)

㉓地域包括ケアが早く浸透し、つながれる・つなげられる一員になりたい。海道先生の講演は、ユーモアも交えつつ、今まで聞いてきたどの講演よりも為になり、明日の糧になりました!ありがとうございます。(40歳代・男性)

㉔秋田を元気にするために、よろしくお願いいたします。海道先生の話は非常に参考になりました。(40歳代・男性)

㉕最初の基調講演は楽しかったが、時間が30分は短いと思うし、講師の方に失礼ではないでしょうか?パネルディスカッションは司会と良く、内容も豊富で聞き応えがあった。手話通訳など「つどい」のバリアフリー化は良いと思います。もっと通訳があることを宣伝したほうが良いと思います。DVD化など記録を可視化で残してはどうでしょうか?お疲れ様でした。(50歳代・女性)

㉖まだまだ地域包括ケアシステムは働いておらず、本人の望みを聞くまでも至っていない状況と思う。料金的にも、本人の望む施設に入ることは難しい。(50歳代・女性)

㉗基調講演中村先生の30分は短すぎたと思いました。ごあいさつの10分を中村先生のお話に割いて欲しかったです。海道先生の肝移植の話もタメになりました。面白く聞けてタメになりました。 所々のコネタもよかったです。パネルディスカッション「医療とケアの最前線」「秋田を元気にする」「あなたらしく・・・」から離れてしまって少し残念だったと思います。中村先生がテーマにもどるべく語ってくださっていたように思いました。(50歳代・女性)

㉘口調が速すぎた。パネルディスカッションの司会はもっと簡潔に。(70歳以上・男性)

㉙早口で・・・。内容はとても面白かったです。(40歳代・男性)

㉚情報が少なすぎる。秋田では魁新聞に載せればすべてOKと思っている節がある。今は新聞を取っていない家庭もあり、我が家は他新聞である。秋田市の広報とか、もっと他の情報機関にも情報を載せて欲しい。 (60歳代・女性)

㉛前半は早口で話された方が多く、難聴の私には、聞き取りづらかったのですが、後半のパネルディスカッションでは、話し方の配慮をいただき、聞き取れました。(40歳代・女性)

㉜もっと口を開いて、言葉をはっきりと言って欲しかった。(70歳以上・女性)

㉝講師の方は、少し早口言葉で聞くのも大変でした。(70歳以上・女性)

㉞パネルディスカッションがフロアーの質問がメインだったので、残念だった。3人でお話しし、ディスカッションするのがメインだと思っていましたが、司会者が個人個人に話を振る形式だったので、残念でした。各々のパネリストより司会者が多く話していた。フロアーの質問に対して司会者がまず答えるのは、役割が違うのでは?(40歳代・女性)

㉟マイクが悪いのか、よく聞き取れなかった。(70歳以上・女性)

㊱とても勉強になった。もっとこういう会をやってほしい。(70歳以上・男性)

㊲今後取り上げて欲しいテーマ:医療と介護の連携の充実を図るためへの取り組みなど教えていただきたいと思います。(30歳代・男性)

㊳今後取り上げて欲しいテーマ:認知症になっても、住みやすい町。(40歳代・女性)

㊴今後取り上げて欲しいテーマ:「家で看取るということ」「エンディングノートの前に考えておくこと」「在宅を支える医療訪問診療や訪問看護の実例」「医師とのコミュニケーションの取り方(まだまだ何も言えない患者さんが多く、ドクターから提案してほしいことがたくさんあります)」(50歳代・女性)

㊵今後取り上げて欲しいテーマ:認知症について、家族の対応や暮らし方などの最新の治療も聞きたい。(60歳代・女性)

㊶今後取り上げて欲しいテーマ:予防医学について(70歳以上・男性)