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<春夏秋冬>

発行日2024/04/10
秋田赤十字病院  下田 直威
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卒業の春
 
 3月そして4月。卒業や進学、あるいは就職や移動の季節である。何となく寂しいが、何らかの達成感や期待感もあり、複雑な情緒ある季節である。それが、ここ秋田では雪が消えて、まだ肌寒いが時々陽気に見舞われる解放感とともに訪れる。心に残る人生の節目がある。
 幼稚園の卒園式では、担任の先生が泣いていた意味がわからないでいたら、帰りの幼稚園バスの中で同級の女の子が教えてくれた。おませな子だった。私はといえば先生の涙の意味も解らない幼さだった。
 小学校の卒業はちょうど昭和49年豪雪後の春で、冬の重圧からの解放感と中学進学への期待感で胸が膨らんだ。進学記念に母親と当時秋田駅前にあった村越時計店に行き腕時計を買ってもらった。カットガラスが流行ったころで、ショーウィンドーの中で照明にきらきらと輝く時計がそのころの気分を象徴していた。
 中学校ではほぼ今の身長にまで伸びた、充実した3年間だった。高校受験と卒業は、仲間がそれぞれの道を歩み始めるという別れの寂しさを伴って「なごり雪」や、なぜかキャンディーズの「微笑み返し」と重なって思い出される。
 高校卒業時は確か卒業式後に大学入試二次試験の発表があったように覚えているが、まだ雪が残る中で発表を見に行き、自分の番号を見つけたときは、それはやはりうれしかった。ロッキーがアポロと15ラウンドを戦い抜き、もみくちゃにされるリング上でエイドリアンと叫んでいる気分だったのだ(?)。残りの春休み、解放感と大学生になれる嬉しさを感じながら、中型自動二輪の免許を取るために自動車学校に通った。思い出のBGMは庄野真代の「ルフラン」だったりする。「人生はまわる白いらせん階段」、「人は自分の道を登り始める」という歌詞が心にしみた。
 大学卒業の春は当時3月だった医師国家試験とほぼ重なる。医学部に入った以上は通り抜けねばならない関門。試験勉強での長時間の座位が原因か、試験後に痔が爆発。解放感で街ブラしようにも痛くて苦しくて冷や汗が出た。BGMとして思い出すのはブルーススプリングスティーンの「Born in the USA」や「Dancing in the dark」といったところか。就職してからは音楽を聴くことも少なくなり、記憶にはあまりBGMが流れなくなってしまった。
 振り返ると、卒業の春には、それぞれにセンチメンタルな想いがある。この歳になり、そんな想いにも縁が無くなったかと思いきや、昨年3月、末娘の高校卒業式に出席して、久々目頭が熱くなった。卒業生退場に吹奏楽部の下級生が演奏。「3月9日」という曲があることを実はこのとき初めて知った。この季節の情感にマッチして、「3月の風に想いをのせて 桜のつぼみは春へとつづきます」、「花咲くを待つ喜びを 分かち合えるのであればそれは幸せ」
 
 春夏秋冬 <卒業の春> から