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<春夏秋冬>

発行日2022/05/10
秋田厚生医療センター  木村 愛彦
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教養エンターテインメント
 
 家で過ごすことが多くなったせいか、読書に費やす時間が以前より十分にとれるようになった。
 もともと本好きであり、小学4年生のときには「怪盗ルパン全集」を読むために学校の図書室から借りまくり読破して、図書貸し出し数ランキングで第一位になった。
 現在愛読する本は非常に偏っており、怪盗ルパンと同様、犯罪者が正義の味方のヒーローになり活躍するものが多い。ドラマでいえば遠山の金さんのような、お約束の勧善懲悪ものである。以前にはクィネルの「クリーシィ」シリーズ、最近はリー・チャイルドの「ジャック・リーチャー」、マーク・グリーニーの「暗殺者グレイマン」シリーズなどは全作を読んでいる。これらは読み始めたら止まらなくなるタイプの娯楽作品であり、格調高い文学作品ではなく、真の読書家からみれば荒唐無稽なフィクションかもしれない。
 ただし、楽しむためといった読書の本来の目的だけではなく、こういった作品、読むと結構ためになる。作中のヒーローが戦う背景は全てリアルな現実の政治や国際問題、国家の内外の紛争や謀略などであり、わかりやすく描かれているため非常に複雑化した現在の世界情勢を理解するのにかなり役立つ。「ジャック・ライアン」シリーズの作者のトム・クランシー氏が打ち立てたとされるこのジャンルは、訳者が「教養エンターテインメント本」と称している。
 同様に「ゴルゴ13」もまた愛読書の一つである。ゴルゴ13を知らない方はほとんどいないと思うが、謎に満ちた、おそらくは日系人と思われるスナイパー、デューク東郷の超人的な活躍を描く劇画で、刊行数でギネス世界記録を更新中の日本漫画界の金字塔である。昨年のさいとう・たかを先生の御逝去は大変残念だったが、さいとう・プロダクションが今後も制作を行っていくとのことで、これからもデューク東郷の世界を読むことは出来そうである。  
 数多く指摘されているように、ゴルゴ13を読むと、これもまた、とにかく「ためになる」。これで政治を勉強したという大物議員の言葉は言い過ぎとしても、題材は政治・経済、紛争・軍事、科学技術や医学、農業問題までにも及んでいる。フィクションとは言え、背景に描かれる世界情勢、地理、舞台設定、事実関係などがきわめて正確に描かれていることも大きく称賛されている。時には、原発事故、パンデミック、経済問題などで、未来に起こることを予言のように的中させた作品もあるようだ。今回のロシアとウクライナの紛争は予言されていなかったが、ウクライナの独立への思いの深さは作品の一つ「アナライズ・ウクライナ」に詳しい。ゴルゴ13なら、この紛争、未然に防ぐことが出来たであろうと思ってしまう。
 
 春夏秋冬 <教養エンターテインメント> から