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<春夏秋冬>

発行日2020/03/10
並木クリニック  並木 龍一
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少子化を考える
 
  開業して25年となりました。月並みですが「あっという間」というのが実感です。でもさすがに四半世紀ですから産科事情も随分変わりました。そこで今までを振り返り今後の問題を提起してみたいと思います。
 出生数の減少:私が開業した平成7年には秋田市の出生数は3000人でしたが2000人に減少しました。当時14診療所がありほぼ全てが分娩を扱っていました。現在11診療所ですが分娩取り扱い施設は2施設だけです。
  望まない妊娠の減少:人工妊娠中絶数は約1/2になりました。低用量ピル、緊急避妊薬の解禁など女性が自ら身を守る時代となりました。また妊娠中パートナーと離別しましたが、婚外子を産む選択をした「シングルマザー」が増えたことも要因だと思います。
 飛び込み分娩の減少:以前は、妊婦健診をほとんど受けず陣痛発来で初診というケースが稀にありました。今では妊婦健診の公費補助制度が充実しており、飛び込み分娩や妊婦健診未受診妊婦は皆無となりました。
  医療訴訟の減少:訴えられる診療科として悪名高い(?)産科ですが、全国的に訴訟は減少しました。平成21年に運用開始された脳性麻痺児に対する「産科医療補償制度」が大きく起因していると思われます。
  良くも悪くも減少ばかりですが、中でも出生数の減少、少子化が今後の問題であり深刻です。日本の人口動態は平成17年に死亡数が出生数を上回る人口の自然減に転じました。昨年は51万人の自然減です。(1年間で一つの自治体が消失!)秋田県の出生率が全国ワーストであることは皆様ご存じだと思います。秋田県では10000人だった出生数が5000人と半数に減少、秋田市も徐々に減少し昨年は初めて2000人を切りました。
  少子化に伴う人口減少は地域の衰退を招きます。これまでは、仕事と育児の両立支援、保育サービスの充実、不妊治療の助成などが重点施策として取り組まれてきました。しかしこれらは既に出産が高齢化している現状に対する支援であり、少子化に対する効果は得られませんでした。
  最も効果が得られるのは若い世代の出産を増加させることだと思います。その一つは若い世代(特に20代)に特化した経済対策です。県内就職希望率が50%を切っている現状ではお先真っ暗と言わざるを得ません。若い世代の出産が経済面で優遇される施策が必要です。現在の年功序列給与制度の改善、出産における制度設計を見直し、20代に対する収入面での支援が必要不可欠です。もう一つは「シングルマザー」に対する概念を見直すことです。この勇気あるお母さん達を温かく見守る社会環境も必要だと感じます。若い世代が定住し、安心して働き余裕をもって産み育てられる「育みの国秋田」になることを願います。
 
 春夏秋冬 <少子化を考える> から