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<春夏秋冬>

発行日2019/10/10
いちかわ内科クリニック  市川 喜一
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てんやわんや
 
 人生何が起こるかわからないものである。ほんの数年前まで「一生勤務医として過ごして、副院長とかになれるといいな~」などとお気楽なことを考えていたのに、ふとしたきっかけで開業プロジェクトが動き出し、日々加速し、今や連日怒涛の打ち合わせ、何かを決めて、契約でハンコ押し、書類作成、将来構想の検討などなど、「あれ、俺たしか医者だったよな?」な状況である。診療所を開設するため保健所に出向いた際は緊張していたが、これまで真面目にお仕事をしていたご褒美か、多くのお知り合いに声をかけていただき、落ち着いて書類を提出できた。名刺交換の仕方、健康保険制度、年金保険制度、設備基準、放射線機材装置に関する基準、購入とリースの違い、「人を雇用する」ということ、挨拶状の常識と封筒への入れ方の違い...毎日が初体験尽くし。前職への週に一度の診療応援で逆にほっとしている始末。勤務医時代は自らの医療スキルを高めることのみに集中すればよかった、ということに気づかされた。大きな組織に属しているということは、種々の仕事を分業できて、より専門性を高めることができる(あるいは高めなければいけない)ということである。親離れしてから親のありがたみがわかるように、組織を離れて、今更ながら組織というもののありがたみを感じている。それとともに、これまでいかに自分が世間知らずだったか、ということも痛感している。社会常識を勉強していけばいくほど「あの時、よく先輩は笑って許してくれたな」とか、「目上の方へのあの挨拶、まずかったよな」と数年前の景色とともに冷や汗が出まくっている。これからは後輩にやさしくしなければ、と思う。いかに自分が「医学・医療」という小さな“たこつぼ”の住人であったか。多くの職種が努力して協力して初めて一つの事業、そしてひいては社会の営みが成立しているのである。自分が開業に向けて進めることができているのも、周りで協力し、助けていただける皆さんがあってのものと本当に感謝している。助けてくれるのはともに働く人ばかりだけではない。未来が見えず苦しい時も、調子に乗っている時も、常にそばにいて、時に励まし、時に諫め、ともに喜び、ともに悲しむ家族がいるからこそ、日々を過ごせているのだ。いつもは恥ずかしくて口にはできない心からの感謝を、ここに記したい。
  働く人の誰一人が欠けても、それをやさしく支えてくれる家族のだれ一人が欠けても、この社会は成立しえない。社会に要らない人などいない。
「鈴と、小鳥と、それからわたし、 みんなちがって、みんないい」
みすゞさん、私も今そう思う。
 
 春夏秋冬 <てんやわんや> から