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<春夏秋冬>

発行日2011/06/10
秋田組合総合病院  木村 愛彦
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30年目の奇跡
 
現在長女は高校生、私の卒業した学校に通っている。約2ヶ月前のある日のことである(これは紛れもない事実であることを強調したい)。
 長女が「大事件大事件!」と言って帰ってきた。聞くと、な、なんと教室のイスの裏に私が在学中にチョークで書いた落書きを発見したというのだ。「またまた~」と思っていたが、証拠で撮ってきた写メを見ると、そこにはまごうことなき私のフニャフニャな字が…しかも丁寧なことにクラスと署名までしてあるではないか!何という奇跡であろうか。あまりにも驚いたので翌日職場で吹聴した。しかし、考えてみれば現在まで幾多の卒業生がこの落書きを見て「バカなヤツ・・・」と思ったことだろう、恥ずかしい。
 それにしても、30年間も消えずに残るチョークの耐久性もさることながら、未だ壊れず使用されているイスの堅牢さ、そして落書きを消すこともなく使い続けているその高校の大らかさ、いろいろな点で驚きである。ここまできたら孫の代まで…などとわけのわからない欲まで出てしまった。
 ということで、身の回りで30年間も使い続けているモノがあるのかどうか考えてみた。つまり高校生の時からずっと使っているモノということである。ない。当時、30年ももつ高級品は買い与えられなかったということもあろうが、全くなかった。そりゃー小屋とか物置とかくまなく捜してみれば、30年前の古いものは見つかるかも知れない。しかし、ずうっと継続的につかい続けているモノとはわけが違う。ちなみに大学に合格したときに祖母が買ってくれた腕時計、これはかなり気に入って一生使いたいものだと思っていたが、とある病院の手術室で紛失してしまい、相当捜したが最後まで出てこなかった。
 そこで実家に行ってみた。何か古くて良いモノがあれば使ってやろうと家捜しをした。実は高校卒業時からあまり体型が変わっていないことがヒソカな自慢なのである。当時着ていた服とかあればいいなあと思っていたが、ぞんなモノ当然処分されているし、今見つかってもダサすぎて着られないだろうと考え直した。
 衣服はあっさりと諦めてあたりを見回してみると、ありましたありました。洗面所の歯磨きのコップ。これは私が中学生の頃から使ていた。
 台所でもう一つ発見した。私が中学校の修学旅行で、父に土産で買ってきた「札幌」とプリントされた常識はずれに巨大な湯飲み茶碗。油でギトギトになりつつも菜箸やしゃもじなどがたくさん突き刺さっていた。今でもしっかり使ってくれていることにうれしさと少しの恥ずかしさ、そして感謝と尊敬の念を覚えた。
 
 春夏秋冬 <30年目の奇跡> から