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<春夏秋冬>

発行日2011/05/10
中通総合病院  清澤 美乃
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震災後、今出来ること、そしてこれから・・・
 
あの震災で…
「仙台にいる娘と連絡が取れないので、探しに行ってきます。(術後の)母親の退院は延期して下さい。」と言って3月15日に仙台に向かった女性。
「南三陸町の娘と姑は高台に逃げて助かった。でも家は流されたので、呼び寄せて3家族と生活している。」と、安堵と大変さを語った60代の患者さん。
「3月10日に盛岡から帰秋したが、初めての出産だったので運が良かった。31日に女の子が生まれました。」と嬉しそうに初孫の報告をした50代の患者さん。
「生家は全て流された。でも親父の写真が1枚だけ見つかった。町は壊滅したけれど、自分の育った町なので可能な限りのことをしたい。」と毎週のように被災地に行っている男性。
「浦安の液状化ほどではないけれど、八景島(シーパラ)周囲もあちこち道路の盛り上がりや亀裂が生じた。」とメールフォトを送ってくれた横浜在住の実姉。
 このように東日本大震災後、私の周囲にも多くの方々が多くのことを語っていました。驚き、不安と恐怖、体調の不良や生活の不便さ、そして将来への心配と希望や期待など。
では、私は何が出来るのか。今の勤務状況では被災地に行くのは不可能。だから義援金には可能な限り協力し、節電、節水のエコ生活(もったいない、という言葉が大事にされるご時世。)の心がけ。でももっと何か出来るのでは…
 そこで考えたのは、患者さんの心を癒す工夫でした。1昨年来数人の方から絵や写真をいただいたので、狭い外来ですがミニギャラリーを作りました。
 まず【オランダ旅情】と題された押し花絵は、チューリップ、千鳥草、フジバカマ、セイタカアワダチソウ、紫陽花、花ワラビ、かすみ草、トウモロコシの皮など、こんなに!というほど多くの素材を用いてオランダの風車と、その周囲にたくさんの花を描き、実際に眼前に広がっていそうな素晴らしい作品です。もう1枚は無題ですが、ガーベラ4種類、菊2種類、銀ポプラとダイコンやニンジンの薄切りを使って、押し花絵なのに花達の瑞々しさが感じられるような見事な作品です。さらに、アマチュア画家ですが、個展を開けるほどの作品を描いている患者さんは、夢の中で女の子が跳ねているようなフワッとした色彩の作品を2枚届けてくださいました。
 また写真部門では、数年前お孫さんをモデルにして県展で最優秀を取った方が、関節リウマチで痛みを伴いながら撮影して下さったトンボ近接写真が、ホッとさせてくれます。そうしたら、何人もの方々が見入ってくださいました。
 今、被災各地は復旧に向けて進み始めています。その東北にもうすぐ桜の時期が訪れます。青い空に満開の桜…今年の桜は被災者の方々にも復旧に携わる方々にも確実に癒しを、そして希望をもたらしてくれるものと信じます。日本人の心遣いや思いやり、また日本的な美意識も大きな力になると信じます。
 
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