昨年、秋田県の熊人身被害は七十人に達し、冬眠しない熊も出没していました。この4月に熊は指定管理獣に追加されましたが、すでに県内でも熊人身被害が出ています。わが家も昨年、熊の食害に遭いました。 玄関前に栗の木があるので、毎年、栗拾いを楽しみにしていました。栗が落ちて拾い始めた10月3日の朝のこと。 「なにこれ。栗、みんな食べられてる!」 落ちている栗の実がみな食い尽くされていました。庭や畑に狸が出没していたので、狸かもと思いましたが、半端ない量です。出勤して、登山好きな歯科の先生に「今朝、栗がみんな食べられていて」と話すと、 「きれいにくるっと中身を出して食べられていましたか?」 「ええ、実をくりぬいたみたいな殻が残ってました」 「それ、熊です。熊は上手に中身を出して食べるんです」 「ええっ、熊!」 熊は山に渓流釣りに行くと見かけますが、まさかわが家の玄関前に出るなんて。そう言えば、前の日曜に「熊出没状況・対応情報」の回覧板が回ってきていたなと思いだしました。町内会長さんに電話すると、「詳しい情報を聞かれるので、直接警察に電話してみて」と言われ、110番通報しました。警察からいろいろ聞かれ、これは「熊の食害」案件になると知り、事の重大さに気づきました。 翌朝も、その次の日も、栗の実が食べられていて、木の下には熊の糞も。熊にとってはレストラン状態だったようで、栗の枝が折られ、いわゆる「熊棚」までできていました。熊は木に登り、折った枝を尻の下に敷いて座る場所を確保し、悠然と栗を食べていたのでしょう。「熊棚」は深山でよく見かけていましたが、これまた、まさかわが家にもできるとは。 その後監視カメラまでつけましたが、熊の映像は撮れず、四日目からは熊が現れなくなりました。胸をなで下ろしていた10月17日、また熊がやってきました。もうこの頃には栗の実はほとんどなくなっており、その後しばらく熊は現れませんでした。 そして11月11日の朝。出かけようと車庫の前を見たら、柿の実がたくさん落ちていて、かじられた痕がいっぱい。大きな枝もバキバキと折られており、今度は柿かと頭を抱えたくなりました。 その後連日熊がやってきたようで、わが家の柿の実はあっという間になくなりました。柿の木は折られた枝が垂れ下がり、見るも無惨な状態に。柿は監視カメラが届かない場所にあるので、結局熊の監視のためにつけたカメラはお役御免になってしまいました。 栗も柿もみな食べられてしまいましたが、もうこれで熊は来ないと思うと、むしろさっぱりした気分でした。けれど、次のシーズンもこのままだと食害必至なので、業者さんに依頼し、2月に木を2本とも伐ってもらいました。 以前は釣りに行くとき、腰に熊撃退スプレーをつけていました。ところがある春、夫が私の車(釣り用のフォレスター)の運転席に座ったとたん、熊撃退スプレーが暴発しました。夫は咳き込み目をやられ、片付けた私も同様で、その後喘息が悪化したおまけつき。「熊がこんなに苦しむのはかわいそうだ」と夫は言い、その後は熊撃退スプレーを持っていくのをやめています。山で出会った熊は、これまでは危害を加えませんでした。川で釣りをしていたら親子熊が水飲みに来たことがありました。釣っているすぐ上の林道を熊が走って行ったことがありました。杉の木の上で「ここにいるよ」と木を揺らして教えてくれたこともありました。でも、今回、夜中に栗の木をバキバキと折っていた熊の勢い(音しかきこえませんでしたが)はすさまじく、はじめて熊が「こわい」と思いました。本当は熊と仲良くしたいんですが。 じつは南側の隣家の敷地に、クルミの木が数本あります。わが家の二階の窓からリスが観察できるので、楽しませてもらっていました。でも、クルミも熊の食害に遭うとか。隣家の木なので切るわけにもいかず、今年もまた熊が来るかもと不安になっています。 次回のペンリレーは、今村記念クリニック院長、合気道の達人である田村康樹先生にお願いします。
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