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<ペンリレー>

発行日2024/01/10
城東整形外科  水谷 嵩
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タンポポと椎間板の成長
 
 文章を書くのが苦手なもので、ペンリレーが来ても必ず断ろうと思っていたのですが飯田純平先生と焼き鳥屋で飲んで酔っ払っている時に来たキラーパスを不意に受け取ってしまいました。普段から急患を快く引き受けてもらっている手前断ることもできず、特にこれと言って人に語れるような趣味もエピソードもないのですが最近心境の変化がありそれを書き留めようと思います。
 私は現在整形外科の開業医で毎日患者さんを見ていますが、腰の手術を担当していることからたくさんの腰痛患者さんを診察しています。「重いものを運んでから痛めた」や「転んで痛めた」といった誘因はよく聞く話ですが、頻度が多い割になかなか理解できない誘因がありました。それが「草取りして痛めた」というものです。私はこれまで自分から進んで草取りをしたことがなかったこともあり、「そうですか、大変ですね。」と共感的態度を取りながらも「草なんか放っておけばいいのに」と思っていました。
 今年、私も新居を建てることになりました。小さいながらに中庭を作り植栽を植え、人生で初めてのガーデニング(というほど大層なものではありませんが)を始めました。全くの素人でしたので、個人的に前から植えたかった金木犀を希望した以外はほぼ全ての植物を外構業者の庭師さんにお任せしてしまいました。結果的にはやはりプロに任せて正解で、庭師さんは素晴らしい仕事をしてくれました。「まだ木は若く細いのですが、数年後には立派に成長するので水やりや肥料を与えるのをここ1?2年は頑張ってください」と言われ、今年は毎日の日課として中庭の植栽の手入れを慣れないながら夫婦で頑張りました。
 今年の夏は記憶に新しいかと思いますがこれまでにないくらいの酷暑で、1度でも水やりを怠ると一気に木が枯れてしまうため大変でした。水をあげてもあげても葉が枯れていきます。写真を撮って庭師さんに相談すると、水の量が足りないようです、とのことで水の量を増やしてみたり、元気がなくなった枝を切ったり。なんとか枯らさないよう必死に世話をしました。
 ところが、木は黙っているとどんどん枯れてくるのに足元には青々とした雑草がどんどん生い茂ってくるのです。庭師さんからも雑草は大きくならないうちに定期的に取るようにしてください、と言われていたので気がついたらむしっていたのですが、雑草の生命力の恐ろしいこと、アラフォー2人の力を合わせても追いつかないくらいどんどん増え続けていきます。なぜ育って欲しい草木は弱っているのに、増えてほしくない雑草たちはどんどん元気に育ってくれるのでしょう。それでもなんとか土の養分を大事な木々に分配するため(?)必死で草むしりを続けました。今年の夏が暑かったせいか、水やりと肥料やりを頑張ったせいか、ちょっと目を離すと1m以上も成長するものもあり、もともと植えた植物が成長したのか雑草が成長したのか判断できなくなることもしばしばありました。その度に庭師さんに写真を送り「これは雑草ですか?植えた植物ですか?」と尋ねますが、すべて雑草でした。(写真:ほったらかしにして腰まで成長した雑草を抜いたところ)
 これまで気にしなかったのですが、雑草にも様々な種類があります。よく公園などで見かけるイネ科のような雑草やスギナ(根こそぎむしるのが大変でした)、シロツメクサなど。中でも厄介だったのがタンポポでした。これまで私もタンポポは子供と遊べるし花は綺麗なので嫌いではなかったのですが、いざ雑草を取り除く立場となると印象がガラリと変わりました。砂利の中からもアスファルトの隙間からもどこにでも生えどんどん成長していく生命力。せっかく植えた植栽の場所に置き換わる厚かましさ。むしろうとしても葉っぱからちぎれてなかなか根が抜けず、綿毛を飛ばして拡散する狡猾なその生態も憎々しく感じました。
 そんな中、草むしりを続けているといくつかのことに気がつきました。雑草は根本からつまむと根こそぎむしれること。茎をちぎると根が残り一向に雑草が減らないこと。根こそぎとった方が結果的に楽で、終わった後の爽快感もあること。そしてその作業をするためには整形外科医がみんなダメだとわかっている「しゃがんで中腰になる姿勢」を続けなければいけないこと。今年の夏、草取りを乗り越えた私の椎間板の繊維輪も急激な成長(退行性変化)を遂げました。前屈動作で腰の奥に重苦しさを感じるようになり、椎間板性腰痛(推測)を発症してしまいました。その結果私はタンポポが嫌いになり、草取りをして腰を痛めた患者さんの気持ちが自分のことのように理解できるようになったのです。来年の夏に向け、草取り対策をしっかり検討していきたいと思います。
 次のリレーは今年から当院顧問として今も現役バリバリご活躍されている阿部栄二先生にお願いしたいと思います。

 
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