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<ペンリレー>

発行日2023/10/10
中通総合病院  久米 佑
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青春の詩
 
 皆さま、はじめまして。中通総合病院1年目研修医の久米佑と申します。私は秋田県秋田市広面出身で東小学校、城東中学校、秋田高校、秋田大学と半径1㎞の生活圏内で生きてまいりました。秋田を出たいと思ったことも人生で一度もなく、この秋田で楽しく生活し、25年目になります。今回のペンリレーは、同じく中通の三澤先生から渡されたバトンですが、私には趣味や、好きなこともあまりなく、バトンをいただいても何を書こうか迷走していました。考えた結果、私は『青春』をテーマに文章を書かせていただこうと思います。

 青春の意味のとらえ方は人それぞれかと思いますが、私にとっての「青春」という言葉は『没頭する時間、またそれにかける情熱』という意味です。
 私の愛読書に『青春とは心の若さである』という青春に関する詩をまとめた本があります。その内の私の好きな詩の一部を紹介させていただきます。
『青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方を言う。バラの面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、たくましい意志、豊かな想像力、燃える情熱をさす。青春とは人生の深い泉の清新さをいう。』
 一般的には青春とは『若い時代』を指す言葉とは思いますが、では人生の中盤、後半には青春はないのでしょうか。この詩では青春を時期ではなく、精神的な様相と捉えています。

 私も残りの人生で、いつまでも青春を感じていたいとも思います。しかし、まだ24才でありながら、歳を重ねるにつれて、青春に距離を感じつつあります。
 私のこれまでの人生の中で一番の青春を振りかえると、それは大学生時代の部活動であったと思います。たかが医学部生の部活動、されど部活動。高校時代との一番の違いはその自由度の高さ、プライベートでの先輩・後輩・同期とのつながりです。何かにつけてはイベントを開催し、飲み会を開催し、旅行を企画し、忙しくも充実した毎日でした。他人から見たら無駄とも思えるすべてが青春の大事な一部でした。
 1年生時は初めて参加する東日本医科学生総合体育大会(東医体)の熱量の高さに驚きました。国体、西医体に次ぐ規模の大きな大会で、髪を染める学生やコスプレに近い格好の学生も参加しており、本気でありながらどこかお祭りの空気をまとった東医体が私は大好きでした。(昨今、そういった雰囲気が周りから非難され、禁止事項ばかりが増える医学部界隈ですが、個人的にはそのような風潮はどうかと思います。)
 学年が上がるにつれて、後輩との関わりが増えて、高校生までは感じたこともなかった責任感も生まれました。部活動をどう発展・継続させていくのか、時には先輩と衝突し、後輩をなだめ、より良い方向に進めるよう奮闘しました。今思えば恥ずかしくなるような小さな悩みもありましたが、それも青春だと思うのです。
 新型コロナウイルス感染症の流行も重なり、最後の3年は大会もなく終わりました。最後の1年は大会開催のために東日本の医学生たちと一致団結し様々な開催の形を検討し、最後まであがき続けました。これも他人から見たら医療ひっ迫を無視した医学生のわがままであったのかもしれません。しかし、顔も知らない主将たちと大学の垣根も超えて、同じ目標に向けて費やした時間は何ものにも代えがたいものです。
 今思い出してもどの思い出も自分の中できらきらと輝く青春の思い出です。ただ終わったことにいつまでも縋り続けるわけにもいきません。ここからは今後の医師生活について考えたいと思います。
 ある夜中仕事をしていると、「学生の仕事は遊ぶことだけど、医者の仕事は遊ぶことじゃないんだよね・・・」ととある先生から言われ、その通りだなと戦慄しました。
 ふと、では今後自分はどこに青春を見出せばよいのだろうかと考えました。もう大学生は卒業し、いつの間にか研修医になっていました。社会人のバレーボールクラブに所属してみても、同じような熱量、時間をかけることはもうできません。そう考えると、自分が熱量をかけられるのはもう医学だけなんだなと気づきました。これは格好をつけているわけではなく、趣味もない、頭も足りない限界研修医の私にはそれしかないとふと思ったのです。つまり医学が今後の私の青春なのです。
 大学生時代のすべてを部活動に注いでしまった弊害か、自分の医学知識は本当に貧しい状態です。しかし、逆に考えると、今は何を勉強しても知らないことだらけで面白いことばかりですし、臨床という意味ではどの研修医も0からのスタートですので、平等なはずです。ここが自分の人生の転換点だと考え、日々の仕事に青春を見出していきたいと思います。
 『医学=青春』は今の自分が出した無理やりの結論ですが、いつか医者の仕事を振り返ったときに、自分にとって青春と呼べるものになるよう、日々精進したいと思います。今は日々の救急業務や内科外来など、リアルの患者様を前にしてわからないことも多く、教科書とにらめっこの毎日ですが、少しでも早く、地域に貢献し、全人的に患者様を捉えることができる医師になりたいと思います。
 長々と自分語りを続けてきましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
 過去を振り返る発言が目立ちましたが、中通での研修は本当に充実した毎日です。良き同期、先輩に恵まれているなと感じます。その中通総合病院でともに切磋琢磨している同期研修医である佐藤花音先生にバトンを渡し、自分のペンリレーを締めさせて頂きます。
 
 ペンリレー <青春の詩> から