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<ペンリレー>

発行日2022/12/10
秋田厚生医療センター  佐藤 純平
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私のゲーム史
 
 秋田厚生医療センター臨床研修医一年目の佐藤純平と申します。この度は同期の服部苑子先生より執筆依頼をいただきました。
 私は趣味と言えるような趣味を持っておらず、何について書いたものか非常に悩みました。そこでジャズやドライブ、スキーに続く題としては些か子供っぽくはありますが、生活の一部と化している種々のゲームについて書くことにします。ゲームを遊ばない方にはあまり興味の湧かない内容になるかと思いますが、どうかお付き合いください。
 初めて触れたゲーム機はゲームボーイアドバンスで、もっぱらポケットモンスタールビーサファイアを兄と遊んでおりました。交友が広く情報源の多い兄が育てるポケモンは強く、ついぞ勝てた記憶がありません。負ける度に機嫌を悪くして家族を困らせていたことを覚えています。さらに小学生、中学生と成長するのに伴ってゲームキューブ、Wiiなどを買ってもらいましたが、多く遊ぶのはスマブラやWiiSportsなどの家族でできるパーティゲームでした。当時の自分にとってのゲームは1人であるいは家族で遊ぶ、いわば閉じた世界でした。そんな認識を大きく覆したのは大学2年生の頃に購入したSplatoon2です。インクの弾を撃ち出して塗った面積が大きい方が勝ちの陣取りゲームですが、敵プレイヤーにインクを当てて倒すこともできます。発売日は2017年7月21日。さしてオンラインゲームが珍しい時代でもありません。そもそも2015年時点で既に前作が発売されています。しかし極めてライトなゲーマーであった自分はオンラインゲームというものをろくに知りませんでした。こんなに素早い応答が求められるゲームを世界中のプレイヤーと同期しつつプレイできるということに非常に驚かされたのです。顔も知らない人々と戦ったり力を合わせたりすること、予測もつかないリアクションがすぐに返ってくることの面白さ。お世辞にも勉強熱心とはいえなかった大学生の私はこのゲームにすっかり魅了され、文字通り寝食を忘れて遊び呆ける毎日を過ごし、3年生の時分に危うく留年しかけることになりますが、その話はひとまず置いておきます。ちなみに今年9月にSplatoon3が発売されましたが、非常に楽しく、危険を感じております。
 こうして自分のゲーム史を振り返って実感するのは、ゲームという一ジャンルの大きな過渡期の中で自分は生まれ育ったということです。コンピュータ・ゲームは1950年代、白黒の平面での擬似的なテニスに始まったと言われています。それが今や、3Dアクションゲームや全世界のプレイヤーとのリアルタイムなオンラインゲームが珍しくもなんともない時代になりました。ジャンルも細分化されています。ドラクエであるところのラスボスの討伐、マリオであるところの旗への到達というような明確なゴールの存在しない作品が多くなったように思います。スローライフ、育成、サバイバル、謎解き、協力が必須なもの、はたまたゲームの中にゲームが仕込んであったり、仕掛けとして第四の壁を超えてきたりといったメタ作品も目立ってきています。そのような進化の真っ只中に青春期を過ごせたことは得難い経験ですし、今も毎日ワクワクしながらコントローラーやキーボード・マウスを握っています。
 今回はそうしたゲームの進歩の象徴とも言えるような作品を一つ紹介して終わりにしたいと思います。このコロナ禍でモノの配送形態は大きく変わりました。置き配はその一つの例で、配達者と受取手が全く顔を合わせないことも増えたのではないでしょうか。『DEATH STRANDING』はこうした状況をまるで予見していたかのような作品です。舞台は近未来の北アメリカ大陸。天変地異や多発する大爆発により人々は孤立し、インフラは壊滅してしまいました。そんな荒廃した大陸を、主人公のサムは人やモノの輸送を通じて再建していきます。重い荷物を背負って過酷な道のりを歩んだ先で、シェルターの扉の奥から届く「ありがとう」の一言を聞くと、とても報われた気分になります。繋がりが一つのテーマになっており、人と人、過去と未来、あの世とこの世の繋がり、それらを結び時には断つことで世界の謎が解き明かされていきます。ただの配達ゲームではない、しかしじゃあなんだと言われても答え難い、そんな作品です。また、ノーマン・リーダス、マッツ・ミケルセン、レア・セドゥ、ギレルモ・デル・トロなど錚々たる顔ぶれがモーションキャプチャーでキャラクターを演じており、さながらプレイできる映画。洋画好きの方にもおすすめです。確実に万人受けはしない怪作であると同時にゲーム史へのリスペクトと挑戦が詰まった名作ですので、気になった方は是非遊んでいただければと思います。
 ここまでお読みいただきありがとうございました。次回は同院研修医の高橋茉由先生に執筆をお願いしました。よろしくお願いします。
 
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