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<ペンリレー>

発行日2021/07/10
ふくおか内科クリニック  福岡 勇樹
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スポーツとしての競馬の魅力
 
 中通病院の糖尿病・内分泌内科の松田先生、ペンリレーのバトンをいただきありがとうございます。はじめてのペンリレーで何を書こうか迷いましたが、「スポーツとしての競馬」の魅力についてお話しさせていただこうと思います。
 競馬と聞くとギャンブルのイメージを抱く方が多いのではないでしょうか。私はそれについて全く否定しません。しかしながら最近は、競馬場の雰囲気も明るくなり、ファンの楽しみ方にはさまざまな変化が起きていることも確かです。もちろん馬券購入というギャンブルとしての性質が本流にありながら、その一方でいろいろな楽しみ方も出てきております。競馬にはドラマがあり、血の歴史があり、ロマンがあります。馬券にさえこだわらなければ、こんな素晴らしいスポーツはないと思っています。
 私が競馬と出会ったのは小学校6年生の頃に遡ります。それは、お年玉で買った「ダービースタリオン」というファミコンゲームでした。通称ダビスタと言われるこのゲームの目的は、競走馬を生産して育成し、有馬記念やダービーなどのG1レースに勝つことです。それまではNHKで放送される大レースくらいでしか競馬を見たことがなく、ほぼ知識がゼロであった当時の私ですが、このゲームで競馬用語などの基礎知識、サラブレッドには血統という概念があること、好きな馬が活躍してくれることの興奮と喜びなどを知ることができました。
 中学校時代にはダビスタの続編が発売されました。自分で育てた馬を、友人の馬と対戦させることができるブリーダーズカップというモードがあり、これにも大変ハマりました。休日には1日じゅう馬を育てては愛馬データのパスワードをメモして、友人の家に遊びに行って対戦させていました。より強い馬を育てるには、どのような血統の組み合わせが良いのか?芝やダートの適正は?距離適性は?など、サラブレッドの「血のロマン」の素晴らしさと奥深さはこのときに学びました。実際の競馬にも興味が出てきて、過去の名馬の本を買ったり(ミスターシービーやマティリアルなど、強いけど少し影がある追い込み馬が好きでした)、スポーツ新聞の競馬コーナーを擦り切れるまで読むようになったりしました。また、中学校3年生のときにナリタブライアンという馬のファンになり、出走レースを追いかけて見るようになったことも大きいです(個人的に、今でも一番好きな名馬です!)。
 高校生時代には、「週刊ギャロップ」という雑誌を毎週欠かさず購入するようになりました。今思うと、この雑誌はどう考えても高校生が買うものではなく、競馬場や場外馬券場に入り浸って馬券購入を楽しんでおられる人々が圧倒的にメインな購入層と思われます。最初にギャロップを買おうと思ったきっかけは「馬の写真がたくさん載っていたから」なのですが、この雑誌にはすべてのレースの出馬表と予想、そしてその結果が載っていて、その他にも騎手別データや種牡馬データなどとにかく細かい情報がまとめられており、どんどんのめり込んでいきました。ところで、現在はテレビで「みんなの競馬」や「BSイレブン競馬中継」でレースの中継を簡単に見ることができます。しかしながら当時の秋田県では競馬中継を放送しているテレビ局はありませんでしたし、インターネットもないですのでレースの動画を見ることはとても難しく、大変もどかしい思いをしていました。そこで、仕方がないので当時の私はギャロップやスポーツ新聞でレース結果をみて、活字を頭の中で動画に変換し、どんなレースだったかを想像していました。この馬はきっとこういうコース取りでここから仕掛けて勝ったのだ、などと…。そんなとき、レース観戦に飢えていた自分を救ってくれたのはなんとラジオでした。「ラジオ短波放送」で競馬レース中継を受信できることを知り、短波放送が受信できる特殊なラジオを購入し、土日になるとそれでレースを聞いていました。ラジオ短波で聞いた最高の思い出は、1996年の阪神大賞典というレースです。最強の実力を持ちながら当時精彩を欠いていたナリタブライアンと、前年の菊花賞・有馬記念を制して勢いに乗っているマヤノトップガンという馬の対戦で大変注目されていました。その2頭が、最後の直前の入口からゴールまで壮絶なデットヒートをして、ナリタブライアンが奇跡的な復活勝利を挙げた、競馬ファンの間では伝説になっているレースです(YouTubeで見ることができます!)。あまり大声では言えませんがその時間は塾で講義を受けていたのですが、ナリタブライアンが久しぶりに出走するレースをどうしてもリアルタイムで聞きたくて、トイレにいくふりをして教室を抜け出しました。そしてレース後は、感動のあまり体が震え、目が潤み、しばらく講義に戻ることができませんでした。
 自治医大に入学後は、電車で府中や船橋の競馬場に行くことができるようになりましたので、実際に足を運んで目の前で馬を見ることができるようになりとても嬉しく思いました。大学1年生の秋、1998年の毎日王冠、あのサイレンススズカがエルコンドルパサーとグラスワンダーを相手に逃げ切った、今でも語り継がれるレースを生で観戦したことは競馬ファンとして最高の思い出です。
 さて、ここまでのエピソードでは全くお金を賭けておらず、ギャンブルの要素が何もありません。それにもかかわらず学生時代の自分の心を揺さぶり、感動させ、ここまでハマることができたのは、「スポーツとしての競馬」という表現が充分に成り立っているのではないかと思っています。
 この原稿を書いている令和3年5月現在、競馬の世界では「日本ダービー」が近づいてきています。登録馬の血統をみると、3世代前くらいまで遡っても現役時代を知っている馬ばかりで、感慨深いものがあります。圧倒的な一番人気は皐月賞を勝ったエフフォーリアと思われますが、私が予想する令和3年の日本ダービー馬はシャフリヤールです!(これが掲載される頃には結果が出ていますね)
 ここまで読んでいただいたみなさま、取り留めのない話にお付き合いいただきありがとうございました。ふくおか内科クリニックでは、糖尿病や甲状腺診療でみなさまのお役に立てればと考えておりますので、今後ともご指導よろしくお願いいたします。
 次回のペンリレーは、秋田大学の糖尿病・内分泌内科の後輩、土崎駅前内科の堀江泰介先生にお願いしました。
 
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