高齢化社会が深刻化する昨今、基幹病院では高齢者誤嚥性肺炎への対応が問題となっている。本来であれば、内科疾患である高齢者肺炎を当院でも数年前から全科当番制でその対応にあたることとなった。当然、われわれ整形外科でも肺炎患者を治療しなければならなくなった。「肺炎なのに、どうして整形外科なの・・・?」と怪訝そうな表情をするご家族もいらっしゃる。「病院の方針で・・・」といきさつを説明し、抗生剤、酸素投与など行っている。懸命な治療の甲斐もなく、不幸な転機をとる患者さんも中にはいらっしゃるので、最近では、「急変した場合の対応、いわゆる“延命処置“は希望なされますか?」といった、治療方針についてご家族の意思を確認するようにしている。「苦しまないように、自然のままで・・・」というご家族が大半を占めているが、中には「できる限りの治療をお願いします!」などという方もいらっしゃる。 そんなある日の仕事帰り、突然雨が降り出した。車へと急いでいると、今まで経験したことのない、異様な感覚をおぼえた。雨粒が頭皮を直撃しているではないか!。さらにその雨粒は、森林伐採された山肌に土石流が発生したように、おでこを流れ落ち、眼の中に流れ込んできた。40歳を過ぎて、ちょっとずつ抜け毛が気になってきていたが、なんとも、衝撃的な感覚であった。家に帰り、鏡で確認すると、前頭部の髪の毛は細く、弱々しく、密度も薄くなってきていた。私は悩んだ。年も年だし、自然のままでいいか?。できる限りの、いわゆる“延命処置”をすべきか?。 私の友人のK医師は、大学入学の時点で、すでに手遅れであった。最近、研究会などで彼の姿を見るたびに、悲しい気持ちになってしまう。心は決まった。できる限りの“延命処置”をしよう!。 世の中には、私と同じ悩みを持っている人がたくさんいるらしく、育毛剤というものが、たくさん売られている。薬用不○林、ペン○デカン、サク○ス、・・・最近では“Mハゲ専用”なんていうものまで出てきた。これらは、どれもこれも高価で、しかも、育毛剤ばかりでなく、シャンプー、リンス、頭皮マッサージ器具など、周辺機器も充実している。はじめはどれがいいのかわからす、片っぱしから使ってみた。2-3カ月使っては、“ダメだこりゃ”。また別のに換えても、“ダメだこりゃ”。今思えば当然の結果である。薄毛の原因、髪の毛の生え代わるサイクルから考えると、2-3カ月で効果がでなくて当然なのだから。 現在、数ある育毛剤の中で、効果があるとされているものは、ミノキシジルとフィナステリドだけである。ミノキシジルはリア○プで、血行促進作用があり、フィナステリドはプロ○シアで、男性ホルモン抑制作用がある。すでにリア○プは使っており、現在、なんとか進行を遅らせられているのはリア○プのおかげだと思っている。しかし、今後、プロ○シアを飲むべきか?飲まないべきか?。「私の体から男性ホルモンがなくなっちゃったら、どうなっちゃうのかしら?」。ハゲるか!?、男をやめるか!?、究極の選択である。悩みは尽きず、また抜け毛がふえてしまいそうなので、当面は今までの延命処置を続けることとしよう。 次回は、私の隣の席のM型小林 孝先生にバトンタッチします。
|