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<ペンリレー>

発行日2003/09/10
小泉耳鼻咽喉科医院  小泉純一郎
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老年よ、財布を抱け
 
 ”少年よ、大志を抱け。” ”中年よ、妻子を抱け。”……過日、某民放テレビ番組で流れた文句で、最後に表題がきた。財布を抱く老人というと何か強欲で頑固な老人も想像できるが、ここは素直に身を守る財を持てと考えたい。
 間もなく「敬老の日」がくる。日本では、中国や韓国にまだある儒教による敬老の精神が薄れてきたようだ。これは超高齢化社会になって、若者と老人の比率が昔と大きく変ったことに依るのだろう。介護を要する老人が多くなって”年寄のチエ”も不要になってきたのだろう。敬老の日は、弱者としての老人を励ます意味もあると考える。
 三味一体という言葉がある。これは三つのものが心を合わせて一つになることと辞典にある。
老年の幸せの要素を、①健康②家族③財布と自己流に解釈すると、①②は今の所はいろいろな人の御陰と家内の内助の功でOK。③はイマイチ。
 見渡すと会員皆様、生涯設計を立派になされて不安がないようだ。ただ、私の知人・友人には何人か①②③のどれか欠けている方がいる。共通しているのは、子供の世話になりたくないという点だろう。また世話にならざるを得なくなった時、誇りが崩れるのが怖い。
 「高齢者はお金持ち。総務省郵政研究所の2000年度家計融資産調査では、70代の平均貯蓄額は二千万円近い。」というさきがけ新聞の記事を見た。信じられない。この額の中には、土地や生命保険等すぐ自由に使えないものも入ってるのだろうか。年金が目減りして此頃、お金持ちと実感してない高齢者の方が多いように感じている。
 たまたま、99才のプロスキーヤーの姿をテレビで見た。その若々しさに脱帽した。71才の私より年上でも分科会や医師会で活躍されておられる先生方は、老いを感じさせない。
 老年は気持ちの問題であって、ボケずに現役で働きたい。
 何年か後、職場は息子主導になって、ヒマが出来そうだ。どう過ごすか問題だ。
 老年の目標は何も上昇志向でなくてもよい。むしろ目線を下げた方が私の性に合っている。私の生きがいの一つに、”健康で酒を川反で飲めること。”と思っていたら、この主旨に賛同してくれた人がいた。先輩で、京大哲学科卒の高僧である。
 「その通りだ。いかに可処分所得を作るかだ。ヘソクリだ。」とおっしゃって下さった。耳鼻科には自由診療もお布施もない。宝クジも当らないし、高額当選したとするとニタニタ顔に出るに違いない。ヘソクリは至難で絶望である。
 老年の自立のために今思うこと。
 ”神よ、家内に分かられないように、天からヘソクリを落して下さい。”
 次回は秋田高校の同期生柴田一先生にお願いしました。
 
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