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第39回医療を考えるつどい

「秋田のこどもを考える」
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日 時 平成29年2月18日(土)午後1時30分~午後4時40分
会 場 秋田ビューホテル・4階
 秋田の問題といえば、少子高齢化です。これまで、高齢化については、様々なテーマを取り上げて参りました。残る『少子化』も重要な問題です。そこで、今回は、『秋田のこどもを考える』に、しました。
 三人のパネリストから、ご発表を頂き、パネルディスカッションを行いました。どの発表も素晴らしく、討論も多くの方から挙手があり、実りの多いものになりました。ただ、参加者が少なめなのが残念でした。
総合司会    津 田 栄 彦  (秋田市医師会広報委員会副委員長)
あいさつ    松 岡 一 志  (秋田市医師会長)
祝  辞    穂 積   志 様  (秋田市長)
        小 玉 弘 之 様  (秋田県医師会長)

-基調講演1-
「秋田市の子育て支援について」  秋田市子ども未来部次長 加 藤 育 広 氏  

-基調講演2-
「総合的女性支援が地方を救う」 京都大学大学院人間・環境学研究科准教授 柴 田   悠 氏


-パネルディスカッション-    

司会  田 中 秀 則 (広報委員会担当理事)
    土 田 聡 子(秋田赤十字病院第一小児科副部長) 



パネリスト
●「私の子育て支援 ~陽だまりサロンを通して 」
 若 松 亜 紀 氏(陽だまりサロン代表)

●加 藤 育 広 氏(秋田市子ども未来部次長)

●柴 田   悠 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)




アンケート結果
総合司会(秋田市医師会広報委員会副委員長・津田 栄彦)
 皆様本日はお寒い中お集まりいただきましてありがとうございます。第39回医療を考えるつどいを始めたいと思います。進行司会を務めさせていただきます秋田市医師会広報担当委員の津田でございます。よろしくお願いいたします。39回を数えるこの医療を考えるつどいですが、これまでのテーマの多くが高齢者のライフスタイルや病気に関するものでした。今回は少し違います。「秋田のこどもを考える」です。最近はテレビや新聞などで保育所の問題や子供の貧困などについて取り上げられていますが、その多くはどちらかといえば都会の話で秋田に関するものは少なくも感じます。一方で、秋田の子供といえば学力や体格が優れているということはよく聞きますが、秋田で子供を育てている、これから産もうとしている方がどういったことを考えているのか、また悩んでいるのか、それに対して私たちがどのように支援をしていったらいいのかわからないことも多いのではないでしょうか。本日の会では秋田の子供を取り巻く状況や現在の取り組み、未来に向けた提言などを行政の方と大学の先生、地域で活動されている市民の方々からご講演をいただき、後半のパネルディスカッションでは皆様とともに議論をしてまいりたいと思います。本回の終了後お帰りの際に、アンケートにご記入いただき回収箱に入れてくださいますようお願いいたします。それでは会を進めてまいります。それでははじめに秋田市医師会長松岡一志よりご挨拶いたします。
秋田市医師会長(松岡一志)
 皆さん、こんにちは。秋田市医師会会長の松岡一志です。本日は、お忙しいところ、またお足元の悪いところ、せっかくの土曜日の貴重なお時間を割いて「医療を考えるつどい」にご参加いただき誠にありがとうございます。
 秋田市民を前にして直接お話しする機会はあまりありませんので、少し秋田市医師会の宣伝をさせていただきます。皆さんは医師会と関わりをもつということはあまりないだろうと思いますが、実は学校健診や特定健診、各種ワクチン接種などいろいろな場面で秋田市医師会は秋田市とタイアップしながら活動を行っております。秋田市医師会では、現在、地域包括ケアシステムの構築、認知症対策などを課題に掲げて活動しております。秋田市には18カ所の地域包括支援センターがありますので、介護関連などでお困りの際は、地域の包括支援センターにご相談いただくとよろしいと思います。また、昨年10月に市立秋田総合病院に基幹型の認知症診療センターが開設されました。認知症診療についても利便性が大分改善されたのではないかと考えております。来月から道路交通法が改正され、75歳以上の高齢者の免許証更新が少し難しくなります。もしお困りの方がいらっしゃいましたら、かかりつけ医や包括支援センターなどにご相談いただければと思います。
 この会は秋田市医師会市民公開講座となっておりまして、今年で39回目を迎えます。年に1回、その時々のテーマを取り上げて市民の皆様とともに考えようという会です。
 昨年は「長生きのコツとエンディングノート」を取り上げましたが、約400名という過去最大級の聴衆にお集まりいただき、大変活発な会となりました。
 今回は「秋田の子どもを考える」をテーマとさせていただきました。
 ご存じのとおり、少子高齢化は、秋田、日本を覆う大問題であります。高齢化は実は日本だけの問題ではなく、世界中で問題になっておりますが、日本は高齢化の速度がダントツです。
少子化については、世界中で問題となっている地域が多いですが、フランス、スウェーデンなどのようにかなり改善されてきているところもあるようです。この改善の大きな部分はいろいろな支援にあるようです。
本日は、基調講演の第1部では、秋田市子ども未来部次長の加藤育広氏から「秋田市の子育て支援について」というタイトルでご講演いただきます。基調講演第2部では京都大学大学院人間・環境学研究科准教授の柴田 悠先生から「総合的女性支援が地方を救う」というタイトルでご講演いただきます。
後半ではパネルディスカッション「私の子育て支援 ~陽だまりサロンを通して~」が行われます。
 いろいろと難しい問題もあるのだろうと思いますが、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。本日はよろしくお願いいたします。
穂 積   志 秋田市長
 秋田市保健所長の伊藤でございます。
 本来であれば、穂積市長が出席し、皆様にあいさつを申し上げるところでありますが、他の公務のため出席できませんので、市長から預かってまいりました祝辞を代読いたします。
 本日、多くの皆様のご参会のもと、「第39回医療を考えるつどい」がこのように盛大に開催されますことを、心からお喜び申し上げます。
また、秋田市医師会の皆様をはじめ本日お集まりの皆様におかれましては、日頃から市政の推進に多大なるご支援とご協力をたまわり、厚くお礼申し上げます。
 秋田市医師会におかれましては、毎年、地域保健活動の一環として、市民の皆様を対象に「医療を考えるつどい」を開催されており、今年は「秋田の子どもを考える」のテーマのもと、医師会や市民の皆様が子育てについて協議されることは誠に意義深いことと捉えております。
本市では、今年度からスタートした新たな総合計画「新・県都『あきた』成長プラン」の成長戦略のひとつ、「子どもを生み育てやすい社会づくり」を掲げ、社会全体で子育てを進め、安心して子どもを生み育てることができる社会の実現を目指しております。
 その具体的取組として、子育てにかかる経済的な負担の軽減を図るため、本市独自に保育料の助成制度を拡充し、一定の所得制限のもと第2子以降の保育料を無償化したほか、医療費の自己負担分を助成する子ども福祉医療費給付事業の対象を中学生まで拡大したところであります。
 さらに、待機児童の解消を図るため、3歳未満児定員拡大推進事業を進めるとともに、妊娠期から子育て期までの様々なニーズに対し総合的支援を提供するワンストップ拠点「秋田市版ネウボラ」を開設するなど、切れ目のない細やかな支援により、安心して妊娠・出産・子育てができるよう子ども・子育て環境の充実につなげていきたいと考えておりますので、今後ともご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 結びに、秋田市医師会のますますのご発展と本日お集まりの皆様のご健勝を祈念するとともに、本日のつどいを契機に、地域社会にさらに子育て支援の輪が広がっていくことを期待し、挨拶といたします。
小 玉 弘 之 秋田県医師会長
 「第39回医療を考えるつどい」にお招きをいただき感謝申し上げます。また、本日のつどいの開催にご尽力をいただきました秋田市医師会松岡会長を始め関係各位に感謝を申し上げると共に衷心より敬意を表します。
 さて、団塊の世代が75歳になり医療・介護の需要が高まる2025年に向け様々な施策が講じられ、私たち医師会においても各地域の実情に沿った地域医療提供体制の構築、地域包括ケアシステムの充実に全速力で取り組んでいるところであります。特に、地域包括ケアシステムの充実には、多職種の連携は必須であることは論を待たない処でありますが、何よりも肝心なことは、地域住民の皆様のご理解、ご協力が得られることであると考えております。この地域包括ケアシステムは、患者、要介護者、高齢者のみならず、地域住民全ての世代が係わりを持つことによって成り立ち、そして充実していくものであり、正に新しい視点からの街づくりと言えると思います。人口減少、少子高齢社会の先頭を走る秋田県においては、高齢者対策のみならず全ての世代に対しての手当ても必要と考えているところであります。合計特殊出生率が人口を維持できる水準といわれる2.07を約40年にわたって下回る状態が続いております。社会経済や教育環境の変化によるものと思われますが、国の根幹を維持するにはいかなる施策をもってしても改善すべきと考えております。生産人口減少により労働者不足による経済の停滞、衰退の状況下では今現在の社会保障の維持は困難となると考えます。
 少子化の解消には、女性の就労環境の改善、育児環境の改善のみならず地域住民の理解、支援が必要と考えます。これも地域包括ケアシステムの一つとして考えるべきと思います。
 近年、電子媒体の発達など子供の生活環境は大きく変わってきました。それにより子供の心、体の問題も様変わりし、その対応もきめ細やかなものが求められております。
 いじめ問題、児童虐待、貧困児童など社会全体の病と捉えてその解消に社会全体として取り組んでいくべきと考えております。秋田県医師会においてもスマートフォン等の長時間使用からの離脱のため、「うまほキャンプ」や病児・病後児保育の配備、院内保育の充実に小泉担当常任理事を先頭として活動しており、少しずつではありますが成果を上げております。
 これからも子供の体、こころのみならずその背景にある社会的課題に県医師会としても積極的に取り組んで参る所存であります。
 結びに、本日基調講演の講師・パネリストをお務め頂きます 京都大学大学院 柴田教授 、秋田市加藤こども未来部次長 、若松陽だまりサロン代表に感謝を申し上げると共に、本日のつどいが実り多いものになることをご祈念申し上げ祝辞と致します。
総合司会 それでは第1部の基調講演を始めたいと思います。講師は加藤育広様です。では、加藤様よろしくお願いいたします。
- 基 調 講 演 -
「秋田市の子育て支援について」
加藤 育広(秋田市子ども未来部次長)
 ご紹介いただきました秋田市子ども未来部の加藤と申します。このような大勢の人の前で話をするのは初めてなので緊張しています。20分と限られた時間ではありますが、秋田市の子育て支援について説明させていただきますのでお付き合いのほどよろしくお願いします。
 今日の話は、
  1.子どもを取り巻く現状と課題
  2.子育て支援の取組
  3.まとめ
の3つに分けて進めてまいります。
 まず、1.の子どもを取り巻く現状と課題です。課題として3点をとりあげました。その1点目としては、少子化であります。出生数は年々減少しており、過去50年間を見ますと、ピークであった昭和50年の4,336人に対し、平成26年は2,291人となっており、約半分に減っている現状です。
 次は人口の割合です。昭和40年に25.7%を占めていた年少人口は、50年後に11.7%になった一方、4.4%だった老年人口は、50年後に27.1%となり、正反対になっています。
 このことにより主に3つの課題が挙げられます。1つは、生産年齢人口の減少などによる税収入の減少、2つ目は、要介護者の増加に伴う介護費用の増加、3つ目は、公共施設の維持管理の問題など、市政運営や市民生活に直結する様々な課題が生じてきます。
 課題の2点目は、待機児童です。グラフはここ3年間の待機児童数の推移になっています。年度当初の4月はゼロになっていますが、その後に仕事に就いたり、子どもが生まれたりすることによって、保育所等への申込みがあるため、年度途中には待機児童が発生しております。子どもの出生数が減っているのに、なぜ待機児童が減らないのか疑問に思う人もいると思います。
 次のグラフは保育所等への入所申込人数になっていますが、今年度は、4年前に比べ約1,000人増えています。このことは共働き世帯が増えたことによって、保育を必要としている世帯も増えてきているものととらえています。
 課題の3点目は、子どもの貧困です。秋田市では、昨年9月に子どものいる世帯の実態調査を行いました。その結果、国が平成25年の調査で示した貧困線を下回る世帯の子どもの割合は6.4%でした。この調査結果を踏まえた対応については、後ほどお話しします。なお、参考までに生活保護世帯数とひとり親世帯数を掲載していますが、ひとり親世帯を貧困世帯ととらえているわけではありませんので誤解のないようお願いします。
 以上の課題への対応として、次に2.子育て支援の取組についてです。秋田市では子育て支援を一元的に取り組むため、平成23年度に6つの課所室でなる子ども未来部を設置しました。業務内容の何点かについては後ほど説明します。
 一般会計における子育て支援予算は、約178億円で、全体の13.7%を占めています。参考までに介護・高齢関係は約50億円で4.5%となっていますが、介護保険はこれとは別に約282億円の特別会計があります。
 次に予算の推移であります。子ども未来部発足時に約145億円だった予算は、今年度は約178億円となっており、6年間で約33億円増えております。その主な内容について紹介します。
 はじめに子ども育成課の取組についてです。今年度から実施している第2子保育料無償化は、秋田市で子ども一人世帯の割合が約40%と多いことを踏まえ、子育てにかかる経済的負担を軽減し、人口減少を抑制しようとするものです。予算額は約6,900万円となっていますが、5年後には約4億5千万円になるものと見込んでいます。
 次の3歳未満児定員拡大は、待機児童のほとんどが3歳未満児となっており、特に0歳児だけで75%となっていることを踏まえ、新規雇用した保育士の人件費を補助することによって定員の拡大を図るため今年度から実施しているものです。
 次の保育士人材バンクは、定員拡大するためにはそれに見合った保育士が必要になりますが、なかなか確保できない現状を踏まえ、保育士資格を持ちながら就労していない潜在保育士を発掘し、求人情報を提供するとともに、再就職セミナーなどにより就労を支援するもので、今年度から実施しています。
 子ども未来センターの取組では、平成27年から子育てサービス利用者支援を実施しています。これは、子育て世帯などを対象に、子育てナビゲーターが個別ニーズに適したサービスを提案し、マッチングすることで様々な相談に対応しているものです。
 子ども健康課の取組としては、昨年10月から秋田市版ネウボラを開設しました。これは、助産師が務めるコーディネーターが、妊娠届の提出時を活用して妊婦と面接し、個々人の状況を把握しながら相談支援を行い、妊産婦の孤立感の解消や育児負担の軽減を図るもので、必要に応じて医療機関とも連携して取り組んでいます。
 次に子ども総務課の取組を4点ほど紹介します。はじめに、課題の3点目に挙げていた子どもの貧困対策についてです。実態調査を踏まえ、現在、子どもの未来応援計画を策定しており、第1章から第6章までの構成となっています。
 2点目の子ども福祉医療費給付事業は、市独自に0歳・1歳の所得制限を撤廃しているほか、今年度からは対象を中学生まで拡大しています。
 3点目の子育て応援リーダー宣言は、仕事と生活の調和いわゆるワーク・ライフ・バランスを図るため、仕事と子育ての両立できる職場づくりに取り組もうとする「秋田市版イクボス宣言」で、写真は昨年11月に穂積市長が宣言した時のものです。先週の金曜日には、副市長をはじめとした幹部職員も宣言しました。
 4点目のシングルズカフェは、若い独身男女を対象に出会いの場を提供し、できれば結婚へと結び付けようと、昨年5月から実施しており、これまで約900人が参加しています。
 最後にまとめですが、秋田市では、人口減少対策を喫緊の最重要課題に位置づけ、総合戦略の将来人口として平成52年に約26万人を目指すこととしています。そのため、5つの基本目標の第1に「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」ことを掲げてい
ます。この目標を達成するための今後の子育て支援については、まず第一に、子どもを生み育てることの喜びが実感できる社会づくりが大切だと考えています。そのためには、出産・育児の不安・悩みを解消するとともに、孤立することなく安心して子育てできる寄り添った支援が必要です。また、不安や悩みの大きな要因となっている経済的負担の軽減にも、より一層取り組んでいきたいと考えています。
 以上で私の講演を終わります。ご静聴ありがとうございました。
総合司会 ありがとうございました。引き続き第2部の基調講演を始めたいと思います。講師は柴田悠先生です。どうぞよろしくお願いいたします。
- 基 調 講 演 -
「総合的な女性支援が地方を救う」
柴田 悠(京都大学大学院人間・環境学研究科准教授)
子育て支援が日本を救う
2016年6月、筆者は『子育て支援が日本を救う――政策効果の統計分析』を勁草書房から刊行した。
同書では、日本・欧米を含むOECD28ヵ国の1980~2009年(主にはデータが揃いやすい2000年代)の国際比較時系列データを用いて、「政府のどのような政策が、その国をどのように変えるのか」を分析した(これは、数年以内の短期的効果を分析したもので、需要変化などを捉えない粗い分析である。そのため、改善余地がある)。
分析の結果、日本を含む先進国での平均的な傾向として、「保育サービス(就学前教育を含む)は、数年以内に、その国の労働生産性・経済成長率・出生率を高め、子ども貧困率・自殺率を下げる」という傾向が見出された。また、「保育サービス以外の政策は、労働生産性などに対して効果がない(介護など)か、または、あったとしてもその範囲がかなり限定的(児童手当・育休・就労支援・医療・失業給付など)である」ということも分かった。
この平均的傾向が今後の日本でもある程度当てはまるとするならば、子育て支援が拡充されれば、日本での労働生産性・経済成長率・出生率が上がり、子ども貧困率・自殺率が下がると予測される。つまり、日本社会の抱えている諸問題が解決に向かうと考えられる。ここから、本研究の結論として、「子育て支援が日本を救う」という結論を導くことができる。

地方で必要なのは「保育サービス」とは限らない
では、「国」ではなく「地方自治体」の政策については、どのように考えたらよいだろうか。やはり、地方を少子化や財政難から救う自治体政策は、保育サービスなどの「子育て支援」なのだろうか。それとも、他の政策なのだろうか。はたしていかなる自治体政策が、その地方を救うのだろうか。
まず確認しなければならないことは、拙著『子育て支援が日本を救う』で論じられた政策効果は、あくまで「国」の政策効果であるため、同じ政策効果が「地方自治体」では必ずしも見込めないということである。とくに同書が着目した「保育サービス」についていえば、少なくとも日本では保育サービスの供給は、大都市部や一部の地方都市では(そこに若年女性が多く流入しているため)需要が多すぎて供給不足になってしまっているが、その他の地方では(むしろ若年女性が多く流出しているため)需要が少なすぎて供給過多になってしまっている場合も多い。
そのため、「保育サービスが日本を救う」としても、それは、大都市部や一部の地方都市で保育サービスの供給が拡充されて、需要を満たすことによって、保護者たちが働きやすくなったり、職場の女性比率が増えたり、保育士が増えたりして、その地域の労働生産性と税収と出生率が増えて、それが国の財政状況を改善したり、地方への再分配を通じて国全体に経済波及効果をもたらす、という点においてである。結果的に地方も救われることになるとしても、それはあくまで、「大都市部や一部の地方都市で保育サービスが拡充されることによって」であって、「地方で保育サービスが拡充されることによって」ではないのである。必ずしも、地方での子育て支援がその地方を救うわけではないのだ。
では、地方ではどのような政策が必要なのだろうか。自治体のどのような政策が、その地方を、自治体の少子化や財政難から救うのだろうか。

総合的女性支援が地方を救う
国立社会保障・人口問題研究所の林玲子部長の分析によると、20~39歳人口における女性比率(若年女性比率)は、2000年以降、地方よりも都市部(東京23区と政令指定都市)のほうが高くなった。都市部の若年女性比率は、1950年から1970年までは急降下したが、1970年以降は2010年現在まで一貫して上昇している。それに対して、地方(都市部以外)の若年女性比率は、1950年から2010年現在まで、ずっと一貫して低下しつづけている。つまり、1970年代以降、若い女性が地方から都市部へと流出しつづけているのである。その結果、2000年以降は、地方よりも都市部のほうが、若年女性比率が高くなっており、しかもこの地方と都市部の格差はますます拡大している。
この分析結果を紹介した「NIKKEI STYLE」の記事では、つぎのように論じられている。「高度経済成長期には、若い男性が『金の卵』として地方から都市に流入した。しかし高学歴化などで、徐々に女性の移動が増加。女性は男性より地方に戻る人が少なく、都市部に集中し続けている。なぜ若い女性は地方から離れるのか。経済的な理由だけでなく、地方の古いしきたりなどが定着を阻害している可能性がある。林部長の分析によると、議員や管理職の男女比率などを考慮した『ジェンダー指数』でみた場合、男女の平等度が高い地域ほど女性がとどまる傾向にあった。『少子化対策のモデル』とされる福井県でさえ、厳しい現実に直面する。福井は3世代同居や共働き、出生率が高く子育てしやすい県として注目されてきた。しかし、女性が大学卒業後に地元に戻るUターン率は、10年前の4割から今は2割に減った。危機感を持ち、東京大学の大沢真理教授と共同で調査すると、様々な面で女性の負担が重い現実が浮き彫りとなった。福井県は働く女性が多いのに女性管理職の比率は全国で最も低いグループに入る。共働きでも家事の負担は女性が重く、妻の余暇時間は全国で最も短かった。大沢教授は『女性の生き方の選択肢が増える中で、魅力的な仕事や環境がなければ、福井モデルは持続しない』と警鐘を鳴らす。調査を受け、福井県は家事の検定制度をつくるなど男性の家事参加に力を入れている。若い女性が流出する地域の未来は厳しい。民間有識者でつくる日本創成会議は、全国約1800の市区町村のうち半分が、出産適齢期である20~39歳の女性の減少で2040年には消滅する〔正確には、2040年までに20~39歳女性人口が半減することにより、将来的な消滅の可能性に直面する〕と予測した。…人口減少への対策として出産・育児や結婚移住に予算を充てる自治体は多い。でもお金より大切なのは、女性が性別による役割にとらわれず暮らしやすい社会を創ること。そう気づいた地域が少しずつ増えている」(〔 〕内の補足は引用者による)1。
したがって、日本創成会議のすでに有名な将来予測や、国立社会保障・人口問題研究所林玲子部長のデータ分析、東京大学大沢真理教授の事例研究を総合して検討すると、「若年女性にとって(歳をとってもずっと)働きやすく暮らしやすい環境」を地方自治体と地元企業が協同して整備すること(女性支援)なしに、地方を救う道はありえないと考えられる。つまり、「女性支援が地方を救う」のである。
ここでいう「女性支援」とは、「保育サービスなどの子育て支援」にとどまらない。子育て支援だけでなく、雇用創出や労働環境整備、介護サービス、さらには「女性たちの要望に耳を傾ける雰囲気づくり」など、若年女性から中高年女性までをトータルに支援する、総合的な女性支援を意味している。
たとえば、日本創成会議の将来予測で、若年女性が2010年から2040年までに最も増えると予測された地域は、石川県川北町(16%増)であり、そのあとに秋田県大潟村(15%増)、神奈川県横浜市都筑区(13%増)などとつづく。
そのうち、第1位の石川県川北町は、1980年からの松下電器産業(現ジャパンディスプレイ)などの工場誘致と、その固定資産税収にもとづく子育て支援拡充(0歳児保育が月額2万円以内、18歳まで医療費無料など)で、多くの若年女性をひきつけてきた。しかしグローバル化がますます進む将来を考えると、このような「工場誘致型」は、その工場製品が売れなくなるリスクをつねに抱えており、長期的には不安定といえるだろう。
それに対して、第2位の秋田県大潟村は、1950年代の八郎潟干拓の国策に始まる大規模農業と、それを活かした株式会社形態による農業の産業化によって、長い年月をかけて農業の大規模化を進め、女性が活躍できる多様な雇用を創出し、多くの若年女性をひきつけてきた。数社の工業誘致と比べると、多様な農作物やその加工品を大規模に生産するこの「大規模農業型」は、長期的にも比較的安定しているといえるだろう。
第3位の神奈川県横浜市都筑区は、横浜市中心部へのアクセスの良いベッドタウンとして、多くの若年女性をひきつけてきた。しかし、このような「ベッドタウン型」は、隣接都市に依存した形態であるため、地方自治体にとっては参考にならないだろう。
なお、第4位から第15位までの自治体も、若年女性増加率が0%以上の「プラス」と予測されている。しかし、そのうちの7つの自治体は(単に幸運な)「ベッドタウン型」であまり参考にならず、2つの自治体は「工場誘致型」で不安定リスクを抱えている。また、2つの自治体は国や県のプロジェクトに支えられた(単に幸運な)「公共財主導型」で、これもまたあまり参考にならない。最後の1つの自治体は多くの大学を抱えた「学園都市型」だが、隣接都市のベッドタウンとしての側面も色濃いため、これもまたあまり参考にならない。結局は、第2位の秋田県大潟村の「大規模農業型」が、きわめて希少な事例とはいえ、雇用創出も含めた総合的な女性支援の安定的な基盤になりえていると考えられる2。

総合的女性支援へ向けて
とはいえ、「女性支援」といっても、実際の女性たちのニーズは、それぞれの地域によっても異なっている可能性がある。そのため、まずは地域の女性たちの声に広く耳を傾けることから、始める必要があるのではないだろうか。女性たちへのインタビューやアンケートを、できれば自治体の女性職員たちが中心となって実施していく(同じ女性でないと気づきにくいニーズもありうるからだ)。そういう地道な取り組みからスタートする必要があるかもしれない。
また、女性支援とは別に、今後どうしても避けられないのは、地域の「コンパクトシティ化」だ。つまり、地域のさまざまな社会的機能を、その中心地に集約して、行政サービスやインフラの費用を効率化していくことだ。過疎地域の住民の移住を伴うことが多いため、さまざまな問題も生じるかもしれないが、自治体の財政を維持していくには、コンパクトシティ化はいずれどの地域でも必須の取り組みとならざるをえないだろう。コンパクトシティ化の過渡期においては、「過疎地域に住みつづけたい人々に対しては、公共料金や税金を引き上げ、それによって自治体の行政サービスやインフラを維持する」という方法も検討に値するかもしれない。そしてこの「コンパクトシティ化」もまた、その具体的な方法は、それぞれの地域固有の実情に合わせて、住民のニーズに耳を傾けながら、丁寧に進めていく必要があるだろう。

1 「地方がおびえる女性流出――因習が重荷、打破へ一歩」『NIKKEI STYLE』2016年7月17日配信(http://style.nikkei.com/article/DGXMZO04692620R10C16A7TZD000/, 2016.8.1)。
2 以上の日本創成会議の将来予測に関するデータや事例は、増田寛也編著『地方消滅』中央公論新社、2014年を参照。
パネルディスカッション・質疑応答
司会  秋田市医師会広報委員会担当理事・田中秀則
    秋田赤十字病院第一小児科副部長・土田聡子
総合司会 それでは後半のパネルディスカッションを始めたいと思います。はじめにパネリストのお一人である若松亜紀様から講演をいただきます。若松様は秋田市で親子の集いの場である陽だまりサロンを主宰されております。それでは若松様お願いいたします。
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「身近でできる子育て支援「陽だまりサロン」の活動を通して」  :  若 松 亜 紀(陽だまりサロン代表)
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総合司会 若松様、ありがとうございました。これからパネルディスカッションを始めたいと思います。

田中 秋田市医師会の田中と申します。これからパネリストの皆さんとディスカッションしていきたいと思います。私が司会を務めさせていただきますが今日は隣にもう一人の司会として秋田赤十字病院小児科副部長の土田聡子先生をお呼びしております。ではさっそく始めて行きたいのですが、今日は少子高齢化の秋田でいろいろな問題があるということで柴田先生を京都からお呼びしておりますが、はじめに子育て支援の研究をし始めた理由を教えていただけますか。
柴田 はい。私は大学生の頃からいろいろな研究をしてきましたが、基本的に他人事ではない問題を研究してきました。基本的に生き方や苦しみにかかわる問題ですが、大学生の頃は不登校の現場、フリースクールで1年間フィールドワークをしました。なぜ フリースクールには子供たちが来られているのかという勉強をしました。大学院生になってからは引きこもりの問題を研究した後に、だんだんと生き苦しさを抱えている人を社会で支えるという問題に焦点が移って行きました 。あとは自殺予防の問題です。そういうものを研究しているうちにだんだん周りの友人たちが結婚し、子供を産み、とても苦労していました。私の友人たちは地方から出てきて夫婦二人だけで孤立した状態で子供を育てていました。当時、京都市の場合は待機児童があり、京都市の中にも若松さんのやられているようなサロンはあるのかもしれませんが、なかなかその情報も入ってこない状況でした。また夫婦二人で働いていると通いにくいというような様々な問題で苦労していました。私はそのような子育ての苦労を間近で見ていました。その中で、国は少子高齢化が問題になってこれから子供をどんどん増やしていかないと財政が大変になると言っているにもかかわらず、現場の子育て夫婦がものすごく苦労している。その背景には、待機児童の問題や居場所がなく孤立しているという状況があり、これはどうにかならないかと思ったのです。これは政策や制度で総合的な子育て支援がないと本当に大変だと思いました。しかし、政策や子育て支援を後押しするような研究が今とても必要なのに十分にされていない、また、子育て支援をすると国や社会全体にとってどういうメリットがあるのかが数値として出ていませんでした。当時私は自殺予防の研究をしており、就労支援が自殺予防に効くという成果を出していました。同じやり方を子育て支援に応用できないかと思い、子育て支援の政策効果は何かということを研究し始めました。それが今回出版した本につながったという経緯があります 。
田中 ありがとうございます。加藤さん、今日の柴田先生の講演を聞いて秋田市に活かせること、もしくはこれから少子化対策に活かせるなと思ったことはありますか。
加藤 まずは柴田先生の講演を聞いている中で目からうろこだったのが、仮に出生率が上がったとしても女性が少なくなれば何ら効果にはつながらないということが非常に耳に残っており、なるほどなあと思いました。では女性の流出を抑えるにはどうしたらいいのかということでは、やはり女性の働きやすい環境や、行政でもいろいろな市民の声を聞く機会があるのですが、女性の声をもっと広く聞きいれる姿勢が大切だと非常に感じました。
田中 ありがとうございました。若松さん、先ほどほほえましい写真をたくさん見せていただきましたが、地域で子育て支援をしていて秋田市もしくは国から支援があれば助かるということはあるのでしょうか。
若松 支援者への支援です。私もですが、子育て支援をしている人は『子どもが好き』という気持ちでやっています。けれどなかなかお金がついてきません。ウッドデッキの張り替え、自腹で30万円は結構きつかったです。それは園の保育士も一緒です。表面だけでは分からない苦労もたくさんあるのですが、他の仕事に比べて給料が少ないです。『好き』だけでやれるうちはいいのですが、男性保育士などは結婚を機に他の職業に移らざるを得ない方もいます。『保育士の給料を1.5倍に』という声は大変ありがたいです。ぜひそうなるよう、お力を貸してください。
田中 加藤次長、いかがでしょうか。
加藤 はい。秋田市内には地域の方々や、最近では子育て真っ最中の方も、周りの子育てで苦労している人たちを支援したいということで自主的に活動している方々もだんだん増えてきています。その中でやはり皆さんそれぞれある程度の費用負担をされているという話を伺っています。行政でもそのような方々に対する支援、これは必要だと思っています。ましてや他の土地で子育てする方々は非常に孤立感、悩み、不安を持っていると思います。ただどこに相談に行ったらいいのかさえも分からないという方も結構多いと聞いています。まさしく若松さんのように、身近なところでそういう部分をサポートしてくれる人がいると非常に安心感があると思います。なかなか行政では行き届かない部分については地域の方々の活動を支援して、それぞれが相乗効果を出せればいいのかなと思います。そういう意味でもいま言った一つの具体例がかさむ費用についての行政からのお手伝いということかと思いますが、そういうところもこれからは我々も真剣に考えていかないといけない部分だと、今日お話を聞いて感じました。
田中 ありがとうございます。ぜひ近いうちに予算化して若松さん方を支援していただければと思います。さて、今日は小児科の土田先生がいますので、土田先生に司会をお渡ししたいと思います。
土田 ありがとうございます。今日は「医療を考えるつどい」ということが主題にある会ですが、副題の「秋田の子どもを考える」ということを国のレベル、市のレベルから、そして子供が欲しいという気持ちを高めるような個人でやられている方のお話も聞けてとても勉強になりました。秋田市の小児医療について考えると、先ほど加藤次長からお話がありましたように、秋田市は小児医療の補助が中学生まで認められていたり、検尿や乳幼児健診なども非常に充実したものがあります。秋田市はモデル地区になっています。しかし、仕事を持って働いているお母さん方へのアンケートでは、先ほど柴田先生のお話にあったように、希望では出生率が1.8となる人数のお子さんをもちたくても1.2にとどまっている現状があります。理由として子供が病気になった時に休暇を取りづらかったり、仕事、家庭、育児のいずれかが中途半端になってしまうことを危惧するといった意見が、回答の上位に上がってくる課題です。病児保育も秋田市でもずいぶん進んできているようですが、そのような部分をもっと宣伝していただきつつ、今後のことについてお話を伺えたらと思います。
加藤 今先生から小児関係の健診を含めてお話しいただきましたが、やはり子供が欲しいけれどなかなかそこまで踏み切れないという方がたくさんいらっしゃる中で、秋田市でも平成 26年に市民意識調査を行いました。その時に「子供が欲しいけれどもなかなかそこまで踏み切れない理由は何ですか」との問いに一番多かった回答が経済的な負担が不安であるというものでした。その声を受けたことも一つとしてありますが、先ほど私が説明した保育料の第二子無償化というところで経済的負担の軽減を図ったところです。先ほど触れることはありませんでしたが、保育料の第二子無償化を実施した後、毎月出生する子供が第一子なのか二子なのか三子以降なのかというところも追跡調査したところ、今年の調査を見たところ第二子は昨年よりも若干増えています。しかし第一子がこれまでと同じように減ってきているということがこの事業を実施した結果として見えてきました。そういう意味では第一子を持つことのきっかけ、希望を持てるような施策がこの後必要なのではないかと感じたところです。
土田 ありがとうございました。先ほど柴田先生のお話で、女性の活性化、生きやすさ、それから若年者の自由度を求めることが、経済や国全体にとっても実際的なメリットとなるという説明がありましたが、それは若者が希望するいろいろな選択が可能な世の中ということなので、お聞きして非常に勇気づけられました。私は小児科医ですので周りには看護師さん、看護師は現段階では圧倒的に女性が多いですし、介護の方、それから保育の方、秋田市の育児支援の方々と女性に非常に囲まれている状態です。秋田県の若者は進学先や就職先により、多くが秋田を離れてしまいます。若者の就職や女性が継続して活躍できる秋田市の第3次産業というと保育、教育、看護、介護分野がどうしても多くなってくると思います。イノベーションに踏みだすわけではなくても、秋田市は東京の10年先を行っているような高齢化が先行していて、少子化の問題も早くから対応することになっており、とにかく具体的にアイディアやもっと若い女性を引きつけられるものなどはありますでしょうか。
柴田 ありがとうございます。そうですね、確かに秋田市での女性の雇用となると介護などケアの雇用が大きいのかもしれないですね。そういったところにイノベーションを起こすということは難しいところはあるかもしれません。イノベーションを政策的に打ち出すことはなかなかできないもので、むしろその人たちがちゃんと生活と両立しながら生き生きと働いていくうちに何かアイディアを生み出すという、自然と出てくるものかなと思います。特に介護の労働に関しては給料が低い状況で体力的にも辛い仕事です。看護師もそうです。看護師の場合も離職率がとても高く、マンパワーに問題があります。そのような労働環境の問題、まずはそのようなケア労働に携わっている女性が多いとすれば、そういった女性たちの労働環境を改善する、これは国の責任なのですが、ただ国はなかなか予算の問題でタッチできず、ずっと後回しになってしまっているところがあります。そこを自治体として、例えば秋田県、秋田市が県内、市内のケア労働の女性たちに対して労働環境や給料の改善をするなど独自の取り組みができれば、彼女たちもとても生き生きとより長く働いて、そうするとキャリアが蓄積されます。キャリアが蓄積されれば、より専門性が高まります。ケア労働でイノベーションを起こすことはかなり難しいかもしれませんが、何かアイディアは出てくるかもしれません。行政からアイディアを出すことは実質難しいところなので、現場の人たちが自分で考えざるを得ないと思います。ただ、現場の人たちを支えるということは行政ができることだと思います。
保育では、保育所に預ける方々が長時間労働をしてしまいますと、保育士たちも長時間労働になってしまいます。そのようなケア労働の方々、その周りの人たちも含めて働き方の改善をしていけばおのずとケア労働の方々に余裕が出てきて、そこから何か新しいアイディアや、先ほどの若松さんのお話の中でも高齢者と子供のイノベーションがありましたが、私も実はだいぶ前から多世代コミュニティーという形で研究を進めております。つまり、高齢者だけがいる施設や子供だけがいる施設も大事なのですが、場合によっては子供好きの高齢者にとっては子供がいた方が活性化し、認知症になりにくくなるという事例がいろいろなところであったりします。それをうまくやっているのが富山県で、富山型デイケアというものがあり、子供と高齢者と障がい者をみんな一緒に受け入れますという小規模多機能型デイケアというものがあります。あれは富山の看護師さんたちが始めて自らイノベーションを起こしたわけです。90年代に看護師数名で始め、それがすごくニーズを満たしていて認知症の予防にもなる、子どもの発達にもいい影響があるということで、国がそれに着目して今、「小規模多機能型居宅介護事業所」という形で制度化されました。国もちゃんとお金を出すようになりました。それはまさにイノベーションがケア労働で起こったということです。現在現場がひっ迫している保育や介護の現場も、何かしらもう少しゆとりが出てくれば、余裕が生まれて新しいイノベーションが現場の中から自然に生まれてきて、それによってお年寄りが生き生きできるような環境ができたり、子供にとってはより発達が進むような環境ができたりしていく可能性があるかなと思いました。
田中 柴田先生、先ほど打ち合わせの時に保育サービスの重要性についてお話ししましたが、例えば自分の子供が急にインフルエンザで熱を出した、今日は会社を休まないといけない、もしくは働かないといけないといった場合、もう秋田の場合はパニックです。おじいさんお婆さんに頼むか、仕事を休むかのどちらかを選択するかというところだと思いますが、例えば東京や大阪など大都市では、子供が風邪を引いたときなどにそれを支えるサービスがあるのですか。
柴田 これはまたケアの仕事でのイノベーションなのですが、私の友人で駒崎弘樹さんという方がおられまして、東京で、日本で初めての共済型の病児保育サービスを始めた方です。駒崎さんがなぜそのようなイノベーションができたのかというと、お母さんがベビーシッターの仕事をしていたのですが、そのお母さんのあるお客さんが、会社を辞めざるをえなくなってしまって、ベビーシッターを頼めなくなってしまった。なぜ会社を辞めたかというと、そのお子さんが熱を出してしまい、37.5℃を超えると保育所に預けることができない、そういったことが何度も続いたものだから、結局会社を辞めざるを得なかったそうです。それを聞いた駒崎さんは、しっかり働いて社会に貢献しているお母さんが、子供が熱を出したから仕事を辞めざるを得ない、これはおかしいことだと感じました。世の中に病児保育がほとんどないのだということに気づき、駒崎さんはひらめきました。それまでは IT企業の社長をしていましたが、保育の現場でのイノベーションを彼が起こし、フローレンスという NPOを起業して、日本で初めての共済型病児保育サービスを始めました。その共済型というやり方も東京や大阪という大都市だからできることなのですが、一定以上の人口規模がある都市ではお子さんがたくさんいますので、毎月会費をNPOに払うのです。この会費は保険のような形で、熱を出さなければ掛け捨てになってしまいますが、大概子供は熱を出します。そうすると1回目の病児保育料は無料です。2回目以降からはお金がかかる形ですが、一定以上の人口規模があると共済システムとして成り立つので、フローレンスは東京でものすごく規模が拡大し、とても業績が良くなりました。その結果、日本でおそらく一番成功している NPOで事業収益比率が高いところとなりました。今は大阪でも似たようなことができています。しかし、東京大阪以外ではなかなか一定以上の人口規模がないので病児保育の NPO展開はないそうです。以前私は新潟に講演会で呼ばれ、そのときに病児保育について聞いてみました。すると、以前そこにも友人の駒崎さんが講演に来たそうで、駒崎さんにぜひ新潟市でも病児保育を展開してくださいと頼んだところ、人口規模がもう少しないと成り立ちませんと言われたそうです。そうなるとほとんどの地方自治体、地方都市では病児保育を民間では提供できないということになります。先ほど田中さんがおっしゃったように地方都市で子供が病気になるということはどこでも起こることです。そうするとお母さんも働けなくなるわけです。これだけ女性の活躍が求められて労働人口も減っている中で、働き手が必要なのに、お母さんが働きたいのに働けないとなると、とてももったいないことです。だから病児保育が必要なわけです。NPOや企業などの民間ができないならば、あとは行政がやるしかありません。先ほど伺ったところ秋田市でも病児保育に取り組んでいらっしゃるということですが、病児保育の公的なサービスというものはおそらく必要です。友人の駒崎さんが始めたサービスは「37.5℃の涙」というマンガとテレビドラマになりました。そのドラマを見られた方はいらっしゃいますか? いらっしゃいますね。そのドラマはとても反響があったそうです。そのドラマのモデルになったのがフローレンスなのですが、子供が37.5℃を超えたときに電話するとすぐに家に来てくれるのです。そして1日預かってくれる、家でベビーシッターをしてくれるというサービスです。なので、とても利用しやすいわけです。おそらく自治体でそこまでやるのはコスト的には難しいかもしれませんが、何らかの形でお母さん方にとって働きやすい環境を提供することでもっと女性が働きやすくなれば、そこからさらにイノベーションが起こり、介護の現場などでもイノベーションが起こるかもしれません。
加藤 病児保育の話になりましたので私からお話しさせていただきます。先ほどお話にありましたが、秋田市でも3年前から病児保育を取り入れています。きっかけは秋田市立の総合病院があったので、そちらに働きかけて協議を行いました。確かに秋田市はそんなに大きなまちではないので利用者もそんなに多いわけではないだろうけれどもやはりニーズはある、非常に困っている方々がいらっしゃるということで市立病院において病児保育を始めました。そうしたところ、中通総合病院でも病児保育を取り入れていただきました。事前に登録をしておかないといけないという手間など、実際に利用する方には煩わしさはあるかもしれませんが、利用実績としてはいずれの病院でも平均で6、7人ぐらいの利用者はおります。ただ、経営という視点ではやはり間に合わないと思います。市では病児保育の病院に対して1カ所当たり年間約1千万円の補助を出しています。それでもおそらく経営という視点ではなかなか難しいところがあると思います。一方ではそのようなニーズもありますので、今後も継続してぜひやっていきたいと考えております。
土田 ありがとうございます。若松さんのお話の中でも、育児で時間も分からなくなってしまう程余裕がなくなり、周囲にサポートを求めることすらできなくなってしまう状況がありうるということがわかりました。さらに、秋田県内を含む地方の病院ではお子さんが病気になって入院する際、お子さんだけを預かるということはほとんどありません。子供の比率も少ないので混合病棟ということも多く、子供に特化した取り組みは難しかったりもします。先ほどお話があったように病児保育は首都圏などの都市部以外ビジネスとしては難しいということ、公的にもある程度の時間の制約があったり、そこで働く方々の生活もあるということもあり、簡単ではないなと思います。話は少し逸れますが、若松さんは今、昔あったようなご近所のつながりというものを大事にしながら、ご自身の子育ての経験からサロンを開放されていますが、年齢や経験を重ねられていく中で、今後、先ほどの二畳大学のような次の取り組みなどは考えていらっしゃいますか。
若松 「次の取り組み」の前にですが、行政がやっていく病児保育が難しい面があるとすれば、そういうところを地域の連帯で埋めていけたらいいなと思います。わが家の子供はあまり病気をしないのですが、私が仕事に出ていて家に帰るのが遅れてしまい、子供が雨の中外で待っていたことがありました。それを見た向かいのお父さんが、ご自宅に入れてくれたことがありました。逆にそちらの家のお兄ちゃんが入院したときは下のお子さんを我が家で見ていたこともありました。そういう地域の連携プレーがあれば「熱が出てしまったのでお願い」という、そんな土壌ができていくのではないかと。できればいいと思っています。次の取り組みですが、先ほども申しあげましたが、もっとたくさん居場所があればいいなと思います。秋田県内にもそんな取り組みをしている方々がたくさんいます。“このようなやり方もある”というモデルを私が示したり紹介することで、自分もやってみようかなと思う方が増えてくれれば嬉しいです。そのような啓発をしていきたいです。
土田 ありがとうございました。“住み開き”ということを今回初めて知ったのですが、意識はあっても今の閉じ型の生活から何から始めたらいいのか分からないところがあると思いますが。今回若松さんの取り組みなどを聞いて、身近なところに門戸が開いているということを学ばせていただきました。ありがとうございます。

田中 さて、第1部、第2部の講演、若松さんの発表を聞いて、会場の皆さんで質問したい方がいらっしゃいましたら挙手をお願いいたします。
参加者A 今日は貴重なお話をありがとうございました。今のお話に直接関係はありませんが、若松さんは以前シュタイナー教育に関する本を書かれていたと思いますが、シュタイナーの考え方で子育てに活用できること、または印象に残っている言葉などがありましたら教えていただけますか。
若松 子育てに私が活かしているのは、想像力を大切にしようという教育法です。既製のおもちゃやゲームに頼らず、自然なもの、単純なもので私は遊ばせるようにしています。このようなお話でよろしいでしょうか。
田中 ありがとうございます。他に質問のある方はいらっしゃいますか。
参加者B 私は秋田市内で保育園を運営しております。今日は本当に貴重な機会をいただきありがとうございます。柴田先生にお聞きします。今日の話から大きな話になってしまうかもしれませんが、日本の少子化対策のために全てのことをやらないと少子化対策がうまくいかないという話がありました。こちらにちょっとお金を出して、こちらにもちょっとお金を出して、とやっていくうちに最終的に予算がなくなると。それで今日お話を聞いていて思ったことは、なぜフランスではできて日本ではできないのかということです。例えば、保育園の園長の立場としてはたくさんの子どもたちがいます。皆さんのお話を聞いていると、何となくどうにかなるのではないか、子どもが減ってもしょうがないなど、日本の中に少子化対策が絶対に必要だという覚悟のようなものがなく、ひょっとしたらコンセンサスが取れないものなのかもしれません。もう「流れ」なのだからしょうがない、と言ってしまえばそれまでなのですが、そうじゃないのではないかという流れの中でどうしてフランスではそれを為し得て、日本では今声高に叫ばれているわりには子供の数が減っていく一方です。柴田先生はそれを研究して警鐘を鳴らされておりますが、どうすればV字まではいかないにしろゆるやかに上昇していくのでしょうか。少子化の最先端を行っているのが秋田なのですが、先生の研究の中からその点について参考にお聞かせ願いませんでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。
柴田 ありがとうございます。本当に難しい問題で、まず第一に政治的な問題、つまり投票において高齢者が多いということです。つまりかなり多くの票は高齢者の票であるということです。これは「シルバー民主主義」と呼ばれるものです。戦後すぐの日本は平均寿命が先進国で最下位でした。しかし、80年代までにかけて寿命が一気に伸び、世界一になりました。この背景にはいろいろな要因があります。その一つが塩分なのですが、基本日本食はヘルシーなのですが塩分だけが多かったのです。しかし、食事が改善されて西洋化することでうまく塩分の摂取量が減ったり、冷蔵庫が開発されたことで保存食が減って塩分摂取量が減ったのです。他にもいろいろな要因があるのですが、いずれにせよ世界一の高齢化を果たしたということです。いまだに世界一の高齢国です。となると世界一のシルバー民主主義、つまり、投票者の中での高齢者を占める割合が世界一ということです。さらには若い世代の投票率が冷戦崩壊までは結構高かったのですが、冷戦崩壊後若者の投票率が一気に下がりました。これにより、有権者の数だけでなく、投票率でも若者はとても不利になってしまいます。自ら不利にしているわけですが、その背景にはいろいろな日本の政治的な状況があります。つまり民主主義は外部から導入されたもので、日本人の中に民主主義という考え方がいまだにあまり根付いていないところがあり、自ら投票して政治を変えていくという意識がとても薄いのです。特に冷戦時代に若者だった団塊の世代はすごく政治意識が高いのですが、それ以降のとくに冷戦後の若者世代では政治参加意識が低く、あきらめてしまっているのです。投票に行っても変わらないということで、人数が少ないのに拍車をかけてさらに投票にも行かないということで、ますますシルバー民主主義になっているわけです。そうすると当然ながら民主主義の結果として、高齢者向けの福祉が充実していくのです。高齢者向けの福祉の充実の度合いをグラフで見ると、高齢者一人当たりにかける年金介護のお金は80年代くらいまではまだ先進国平均より 2割ほど低かったのですが、2000年から介護保険ができてそこから先進国並みの充実した福祉になりました。もちろんまだまだ改善の余地はありますが、それでも先進国並みになったのです。そのくらい政治家の多くは、高齢者の顔色をうかがって政治をせざるをえなかったのです。それに対して子育て支援に関しては、子供一人当たりにかける子育て支援のお金が、先進国と比べて半分のままで、80年代からずっと推移してきました。ここまで少子化といわれているにもかかわらず半分のままで推移しているのです。いまは社会保障と税の一体改革を進めていますが、それを進めた後でも半分という数字になっています。そのぐらい本当に、子育て支援については、政治家の方々も力を入れにくいのです。いろいろな政治家の方と話してみたところ、やはり、「高齢者が怖い。『子育て支援は大事です』と言った途端に次の選挙で落ちるのではないか」との考えがあるようです。根本的には世界一の高齢化があるかと思います。あとは若者がなかなか投票に行かないということがあると思います。ただ、最近ようやく与党も教育無償化を言い始めました。これはやはり少子高齢化がこれだけマスメディアに取り上げられ、保育園落ちたというブログが話題になり、様々な圧力がかかってようやく与党も、堂々と子育て支援や教育の政策を打ち出せる環境が整ったからでしょう。おそらく与党の人たちも、言いたかったけれども言えなかったのだと思います。他にも、憲法改正などの様々な動機が関係している可能性がありますが、そういったところでおそらくこれからは変わっていくのではないかと思います。
参加者B ありがとうございます。日本ではなかなか議論が深まりませんが、子供がいる人に1.5の投票権を与えようなど、子供の数も投票として子育て世代に与えるなど、いろいろな政策もやり方もあると思います。私も間もなく老人になりますが、そのうち年をとってくるとお年寄りの方々も孫は可愛いでしょうし、自分の子供や孫に今の生活を続けさせてあげたいという気持ちはきっとあるのではないかと思います。自分の父やまわりを見ていて、決してみんなが自分のことだけを考えて生きているのではないと思うのです。私たちが昔の人たちから引き継いでこの文化を築いたように、これをいかに下の世代に健全に渡していくかということを皆さん考えているのではないかと思って期待しているのです。柴田先生のように発言力のある方が声をあげてくださることで、シルバーの方でひょっとしたら今自分がもらっている年金の一部を渡していいよという方がいらっしゃるのではないかと思うのです。それを子育てに、日本の国のために使うということをもう少し具体的な施策として柴田先生から提案いただいて、ものを言える政治家に伝えてもらい、それを実現していくということに非常に期待しています。私は保育園の園長ですが保育園を維持したいためにではなく、是非期待しておりますのでよろしくお願いいたします。
柴田 今どのように財源を作るかという話で年金の話があったのですが、これはとても難しい問題で、年金で何とか生活している高齢者の方もたくさんいらっしゃるのです。高齢者の貧困率はとても高く、女性の高齢者の貧困率は子供の貧困率以上の高さです。男性の高齢者の貧困率は年金のおかげでようやく子供の貧困率以下になり、だいぶ改善されました。しかし、単身の女性の多くは本当に困窮しています。そういった困窮している高齢者の方々の年金を減らすというのは、倫理的にもいろいろな問題を生じることです。そのため、どうやって財源を作るかというのはとても難しい議論です。まさに来週テレビでその話をしてほしいと言われています。いくつかの政党からも勉強会で提言してほしいといわれていますが、おそらく大事なのは幅広い財源の作り方です。私の提案しているところでは10種類くらいの財源案があり、一つは年金課税の累進性を高めるということです。今は年金課税は一律なのですが、その累進性を高め、年金給付額の低い高齢者の方々の税率は変えずに、ものすごく高い年金をもらっている高齢者の方々の税率はもう少し上げるという、年金課税の累進化によって、約1兆円ほどの財源になるという提言を新書に書いています。他にも何種類もの財源案があります。どの財源案を組み合わせるかは、各政党が財源案の組み合わせをそれぞれ提案し、それらについて国民全体で議論をして、みんなで投票して合意を形成していくというふうに、みんなで丁寧に合意を形成していかないといけないと思います。税の問題はとてもセンシティブでいろいろな利害関係がありますので、一つの財源だけでというのはとても難しいので、いろいろな財源のミックス案について、国民全体で議論をして投票していくというのがよいと思います。私としても、年金課税の累進化だけでなく、相続税や、100%事業主負担の子ども・子育て拠出金など、様々なアイディアを提案しています。今後、様々なアイディアについて、国民の議論が活発になっていけばいいなと思っています。
参加者C 皆様の多面的なお話、ありがとうございます。柴田先生に伺います。資料を見ると「移民人口率」→「女性労働力率」につながっていますが、これはどのような意味があるのでしょうか。
柴田 移民に関しては先進国のデータを使用しています。先進国に入ってくる移民の多くは、介護などのケア労働者として入って来ます。そういったケア労働者の移民に女性が多いことから、「女性労働力率」につながっています。ただ、日本では単純労働の移民を受け入れていませんので、日本ではこのような因果関係はなかなか難しいと思います。
参加者C なぜケア労働で入ってくるのですか。
柴田 それは貧しい国から移民に入って来ますので、貧しい国の女性が就きやすい仕事が介護なのだそうです。介護はニーズがとても高い上に、大変な仕事なために国内の女性はやりたがらないということで、安い労働力として移民の女性が介護の仕事に就くというケースが多いのだそうです。
田中 それでは最後にもうお一方お願いします。
参加者D 一市民の主婦です。介護も子育てもしているのですが、介護だと介護度3の母を月5万円で施設にお願いしているのですが、家族が見舞わなくてもよく非常にありがたいですが、でも本当にこれでよいのか。かたや子育てでは、お母さん達に笑顔がないのです。笑顔がないし子どもに無理をさせているのです。その現状は小学生2人で夕飯を食べてお風呂に入って寝て、お母さんが夜に帰ってくるというものです。私はファミリーサポートの支援者を作っています。ファミリーサポートの利用料は1時間600円、母子世帯で300円ですが、それでも利用しない状況です。1日2時間だと1200円、それが例えば月20日になると私たちは利用しませんよと軽く言われる。そうすると、子どもに全ての負担がかかっていて、子ども達は健全に育っていくだろうかと心配になります。今、若年者でも一戸建てを建てていますので、光熱費やいろいろな費用負担があって経済的なところも子どもが見聞きしたりしているようで、「うちはお金がない」という話を子どもから聞いたりもします。せっかく社会で子育て支援をしようとして、一般の方のサポート支援や病児保育と、いざというときに困窮している人たちが利用出来る制度はたくさんあるものの、お金の関係で利用できない。そうなったときに高齢者の予算を、年金の豊かな方は2万円にすればファミサポの1時間600円は何とか捻出できるのではないかとの希望を持っています。まずは子どもが本当に健やかに子どもらしく育てられる社会を作っていかないといけないと常日頃考えております。経済的な支援の話になりますが、どうかよろしくお願いいたします。
加藤 先ほど具体的にファミリーサポートセンターのお話が出ましたが、ファミリーサポートは秋田市の子ども未来センターでやっております。確かにおっしゃるとおり1時間600円と非常に負担にはなろうかと思います。そのようなこともあって、市の方で独自に今半額助成をしており、利用者負担は実質1時間300円となっています。なるべく負担にならないような形で行政としてできる範囲のことを進めているところです。できる範囲のことはやっていければと思っております。
田中 ありがとうございました。まだまだ討議していきたいところですが、今日をまとめさせていただきますと、お三方のパネリストと土田先生に協力していただいて、子育て支援が非常に大事ということがよく分かりました。また、女性支援が大事であるということを柴田先生からは国の立場から、加藤さんからは秋田市の立場から、地域の子育てのことに関しては若松さんからご意見をいただき、本当に実りの多い議論の会であったと思います。最後になりますが、3名の手話通訳士の方がずっと長い時間通訳して下さいました。本当にありがとうございました。本日はありがとうございました。
総合司会 ありがとうございました。パネリストの皆様、司会の先生方、会場から質問をいただいた皆様、ありがとうございました。本日は秋田の子どもに関しての現状を確認し、改善すべき問題点も出てきたかと思います。ぜひご家庭や地域に本日の内容をお持ち帰りいただき、引き続き関心を持っていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
参加者アンケート 感想・意見・テーマなどの回答結果
ご自由に感想、ご意見をお聞かせ下さい。また、今後取り上げてほしいテーマがありましたら、お書き下さい。



① 若松さんのお話に感動しました。ありがとうございました。(30歳代・女性)

② 大変参考になりました。(30歳代・男性)

③ 聴講者は少なめでしたが、内容はとても充実していたと思います。子育て一段落にさしかかっている自分にとって、加藤次長さんのお話はとても新鮮で、今秋田でおこなわれている子育て支援についてよくわかりました(未来の孫をイメージしながら興味深くお聞きしました)。柴田先生の「子育て支援は、高齢者の年金支給額にもかかわってくる」というお言葉に、まず衝撃をうけました。日本の出生率もフランスのように、V字回復する日が来て欲しい。そのためにはどうしたらいいと、考える機会になりました。子育てまっただ中、また高齢世代の方にも、もっと先生のお話を聞いていただきたかったと思いました。ともあれ、いろいろな世代みんなで取り組んで行かないと解決できない深刻な問題だと思いました。若松亜紀さんのお話、とても楽しかったです。写真も豊富で、とてもがんばってよい活動をされているのがわかって応援したくなりました。自分は自分の子育てしか出来ませんでしたが、若松さんは、ご自宅を開放して仲間を作られたなんて、本当にすごいと思いました。子育てリーダーだ!と思いました。パネルディスカッションの展開、よかったです。今日の個々のお話しが、全部つながった感じで、総括していただいた実感がありました。今年も参加してよかったです。ありがとうございました。こんなに充実した質問が出たのもすごいと思います。勉強になりました。《今後のテーマについては、会場に来られた方の中で、今度はぜひ、ガン患者を支えることをテーマに集いをひらいてほしいというお話しをされているのを耳にしました。ご家族がガンになられたようで、いろいろ苦労されているようでした。死亡原因としても多いガンですので、そのようなテーマを希望されている方も多いのではないでしょうか?》(40歳代・女性)

④ 一般市民向けの内容でしたでしょうか?すばらしい内容ではありましたが、難しかったと思います。(40歳代・女性)

⑤ 長い!長くても2時間が良い!内容良くても、疲れました。(40歳代・女性)

⑥ もっとお話しをききたいほど有意義でした。(50歳代・女性)

⑦ 内容が良かったのに、参加者が少なくて残念でした。(50歳代・女性)

⑧ 子どもへの費用が先進国の二分の一というのに悲しくなりました。シルバー民主主義に納得してしまいます。(50歳代・女性)

⑨ 「少子化」に真剣に取り組むことの大切さを感じた。日本フィンランド協会という団体があります。ホームページに電話番号が書いてあると思います。フィンランドの幼稚園や保育園・病児保育に関する資料をお願いすれば送ってもらえるかもしれません。《今後取り上げて欲しいテーマ:病児保育についてフローレンスの代表の人の話を聞く。柴田先生にもう一度来ていただいて自殺予防に関するセミナーを開く。減塩や地産地消について考える。医療と食育を結びつけたセミナーを開く。認知症を予防する方法。うつ病の予防に関するセミナーを開く。》(50歳代・男性)

⑩ とても良い内容だった。もっとたくさんの市民の方がこの機会に参加できるようアナウンスすれば良かった。とてももったいなかった。残念です。(50歳代・男性)

⑪ 柴田先生の話をもっとたくさんの人に聞いて欲しかったです。(50歳代・女性)

⑫ 高齢者について取り上げた前回が大盛況で、子どもをテーマにした今回参加者が少ないことこそが少子化をまだまだ真剣に考えていないのだなと感じました。(50歳代・女性)

⑬ もっとPRの機会を増やし、多くの人の目に触れるようにお願いしたい。(50歳代・男性)

⑭ 柴田先生のお話はとても興味深かったです。まとめで「女性がのびのび生きる→産業が生まれてくる」目から鱗でした。参加して良かったです。わかりやすく、聞きやすかったです。(60歳代・女性)

⑮ 今回の内容やテーマと「医療」の関連が薄い。高齢者テーマで次回は是非。(60歳代・男性)

⑯ 柴田准教授の講演は、主婦の私にとってグローバルな見方を教示していただいた気がします。(60歳代・女性)

⑰ 毎回この会は楽しみに来ております。《今後取り上げて欲しいのは、ガン患者の家族をテーマにしたことをお願いしたいと思います。》(70歳以上・女性)

⑱ とってもいいお話しでしたが、若いお母さんたちに聞いてもらいたかった。(70歳以上・女性)

⑲ 耳がきこえませんので、手話から助けられました。勉強になりました。本当にありがとうございました。(70歳以上・女性)