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医療を考える集い
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第33回医療を考える集い
【市民で考えるがん医療】
~女性特有のがんに目を向けて~
平成23年2月6日(日)午後1時30分~午後4時30分
秋田ビューホテル・4階
入場無料
 がん検診を促進するキャンペーンが新聞やTVなどでも盛んに行われるようになって、秋田県でも以前にも増してがんに対する関心が高まってきたように感じます。
 がん患者さんの悩みは、その立場におかれないとわからないかもしれませんが、がん患者さんの身近にいる私たち一人ひとりがその悩みの解決に何か手助けになることをできないでしょうか。
 このたび秋田市医師会では、女性がん患者の支援に向けて、シンポジウムを企画しました。

 ~例えば、あるひとりの女性ががんにかかりました。手術が必要になり、その後遺症や、その後のくらしで、様々な障害に悩まされることになりました。
 でもそんな彼女に手をさしのべてくれるサポーターがいました。相談支援センター、患者会の活動、心のケア、リンパマッサージなど。~

 基調講演では、まさにそのような体験をされた、NPO法人オレンジティの河村裕美さんから貴重な体験談をお話しいただきます。
 シンポジウムでは、 “からだ” と “こころ” と “くらし” を支える専門家から活動を紹介していただき、同時にがんに関する知識を深める機会にしたいと思います。
 私たちは決してひとりで生きているのではありません。支え合って、力をもらって前を向いて生きていけるのではありませんか。
 私たち一人ひとりがサポーターになりましょう。
 多くの皆様のご来場をお待ちしております。

プログラム
総合司会   秋田市医師会広報委員会 委員長  折野 公人
あいさつ    秋田市医師会長   福 島 幸 隆
祝   辞   秋田市長       穂 積    志 様
         秋田県医師会長   小山田   雍 様

-基調講演-
 女性がん患者が直面すること
 「子宮けいがんの花嫁」  NPO法人オレンジティ 代表 河 村 裕 美 氏  


-シンポジウム-  司会  秋田市医師会広報委員会 委員 田中 秀則   

シンポジスト
● 弘前大学医学部附属病院 腫瘍センター 緩和ケアチーム 臨床心理士
                          工 藤 恵 子 氏

● 秋田赤十字病院 がん相談支援センター メディカルソーシャルワーカー
                          米 谷 純 子 氏

● 中通総合病院 緩和ケア認定看護師(リンパ浮腫マッサージ)
                          苅 安 真佐美 氏

● あけぼの秋田代表
                          佐 藤 清 子 氏

● NPO法人オレンジティ代表
                          河 村 裕 美 氏

総 合 討 論


質 疑 応 答


まとめ 秋田市医師会広報委員会 担当理事 能登 弘毅



総合司会 (秋田市医師会広報委員会委員長・折野公人)
 本日は、冬の秋田にも久しぶりに太陽が顔を覗かせ、穏やかな日和となりました。せっかくの休日にもかかわらず足をお運びいただいた皆様には、秋田市医師会として心よりお礼を申し上げます。おかげさまで、この医療を考える集いも今回で第33回を迎えることとなりました。私は本日総合司会を務めさせていただきます、秋田市医師会の折野と申します。よろしくお願いします。
 さて、最近、がん検診を受診しましょうといったキャンペーンが、テレビや新聞で頻繁に行われるようになりました。徐々にではありますが、以前より増してがんに対する関心が高まってきたように感じます。今回秋田市医師会では「市民で考えるがん医療」~女性特有のがんに目を向けて~、というタイトルで、講演会と、シンポジウムを企画いたしました。
 自ら子宮頚癌を経験され、地方公務員の傍ら、女性特有のがん患者および家族を支援する組織を立ち上げて、精力的に活動されている、河村裕美さんを静岡よりお招きし、ご講演をいただくことになっております。休憩を挟んで、「からだ」と「こころ」と「くらし」を支える専門家から、具体的な活動の内容をご紹介いただき、女性特有のがんに関する知識と、がん患者への支援について学ぶ機会にしたいと思っています。シンポジウムの後には、会場の皆様よりご質問やご意見をいただく時間も設けております。有意義な会にしたいと思いますので、ぜひ積極的にご発言くださいますよう、よろしくお願いいたします。
 では始めに、秋田市医師会会長、福島幸隆より挨拶があります。

福島幸隆 秋田市医師会長

 皆さん今日は。秋田市医師会の福島と申します。本日は年1回秋田市医師会主催で市民の皆様向けの講演会であります「医療を考える集い」にご参加いただきまして、誠にありがとうございました。1月は非常に寒い日が続き、毎日除雪におわれる日が続きました。昨年は113年間で一番の暑さという文字通り記録的暑さでしたので、今年は暖冬という何の根拠もない希望的観測をものの見事に裏切ってくれて寒い冬となりました。除排雪に伴う人身事故が多発し、大変な冬を過ごしていることと思います。平成18年豪雪の時、私は息子に「開業医はけがをして休業すると、そのときから一銭も収入がなくなるので、私は屋根に上がることは出来ないが、お前がもし屋根に上がってけがをしたら十分な医療は受けさせてやる」と言いくるめて、息子に命綱をつけて屋根に上らせ雪下ろしをさせましたが、今年はあの時程ではないような気がします。2月に入り少し寒さがゆるみ、昨日、本日はお日様も顔を出してくれまして、気持ちも晴れ晴れとしてきました。本日はそうした好天の中多くの市民の皆様にお運びいただきまして、重ねて御礼申し上げます。さて、本日のテーマは市民で考えるがん医療~女性特有のがんに目を向けて~であります。昨年6月3日の厚労省が発表しました人口動態統計によりますと、本県のがん死亡率は366.6と全国ワーストで、がんの死亡率ワーストは13年連続です。秋田県はこれに対し、2月3日2011年度一般会計当初予算案を県議会に内示しましたが、がん予防推進事業に1億6,632万円を計上したとのことです。がん死亡率ワーストを脱却できるよう官学民一体となって、逼進したいところです。国立がん研究センターがん対策情報センターのHPによりますと、がんの死亡数と罹患者数はともに増加し続けており、その主な要因は人口の高齢化です。人口の高齢化の影響を除いた年齢調整率でみた場合、女性でがんにかかる方は1990年代前半まで増加しその後横ばい、2000年前後から再び増加していますが、死亡者数は1960年代後半から減少しています。女性特有のがんでは乳腺、子宮、卵巣のがんにかかることは増加しており、一方死亡者数は乳がんでは増加、子宮がんは減少、卵巣がんは横ばいという状況です。今回は不幸にして女性が女性特有のがんにかかってしまった場合、自分の病気のことばかりでなく、夫や子供のことの行く末、経済的な不安などが次々と襲ってくると思います。そうした時、医療関係者やがん経験者、地域の人から優しく声をかけられて、同じような悩みを抱えているのは「自分ばかりでなく、他にもたくさんいるのだ」と知るだけでも大きな救いになると思いますが、さらに患者さんの一人一人の状況に応じた専門的なアドバイスが得られる機会や場所があったらどんなに心強いことかと思います。本日はがん患者さんを孤立させないで、市民の皆様一人一人がサポーターになれることを認識し、地域でがん患者さんをサポートする体制形成への足がかりとなりますことを祈念して挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

穂積 志 秋田市長 
 秋田市長の穂積でございます。
 本日、多くの皆様のお集まりのもと、「第33回医療を考える集い」が開催されますことを、心からお喜び申しあげますとともに、秋田市医師会の皆様ならびにご来場の市民の皆様におかれましては、日頃から、本市市政全般にわたりご支援とご協力をたまわり、厚くお礼申しあげます。
 さて、秋田市医師会におかれましては、毎年、地域保健活動の一環として、市民の皆様を対象に「医療を考える集い」を開催されており、今年は、「市民で考えるがん医療~女性特有のがんに目を向けて~」のテーマのもと、幅広い視点から、女性特有のがんについて考えることができる、大変有意義な機会を設けていただきました。
 秋田県のがん死亡率は、13年連続全国ワースト1位という大変残念な結果となっております。本市では、がんの早期発見・早期治療のため、がん検診の受診率向上やがん予防の知識普及に努めておりますが、平成21年度における本市の女性特有のがん検診受診率を見ますと、「子宮頸がん検診」は16.1%、「乳がん検診」は12.5%と、依然として低いことから、「がん検診の受診率向上」は、本市といたしましても、喫緊の課題として取り組んでいるところであります。
 また、本日の基調講演のテーマになっております「子宮頸がん」につきましては、本市では、国県の補助を活用し、本年2月から、中学1年生から高校1年生を対象に、ワクチン接種費用の全額を補助することとしております。
 本市では、今後も、市民の皆様が、定期的な検診受診で「健康」を維持することができますよう、がん検診の受診率向上を目指し、啓発や検診を受けやすい環境づくりに取り組むとともに、予防に努めてまいりますので、皆様におかれましては、本日のご講演内容とともに、がん検診につきましても、ご理解いただくとともに広く周知していただきますようお願い申しあげます。
 結びに、「医療を考える集い」が、皆様にとりまして実り多きものとなりますことと、秋田市医師会のますますのご発展ならびに皆様のご健勝を祈念申しあげ、あいさつといたします。


小山田雍 秋田県医師会長 (代読:坂本哲也 秋田県医師会副会長)
 県医師会長の小山田が挨拶するところですが所用で出張ですので、がん対策を担当しております副会長坂本がご挨拶させていただきます。
 がんが日本人の死因首位の座を占めるようになって30年が過ぎようとしています、さらに秋田県のがん死亡率が全国ワーストトップであると某放送局が報じて以来すでに5年が経過しております。この間、平成18年にがん対策基本法が成立、翌年4月から施行され日本全国でがん検診の受診率向上、がん死亡率20%減らす運動が始まり秋田県も積極的に行ってまいりました。
 がん診療連携病院も県内殆どの医療圏に11ケ所誕生し、がん診療の均てん化がすすんでおります。医師会はがん検診事業に積極的に関与してからすでに25年が過ぎており、18年から行われている地域がん登録も県をふくめ県医師会としても積極的に協力し5年になりました。これらのデータはこれまでさまざま言われた秋田のがん医療の実態に光をいれるものと大いに期待するところ大です。途中経過ですが、秋田のがん死亡率が高い原因は医療水準は全国平均をはるかにこえておるのですが、胃がんなどは秋田県人が圧倒的に病気になりやすい体質あるいは食生活であるらしいことがわかってきております。また県民の皆様のご協力で小児ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチンの無料化がいよいよ実行されます。
 がん医療には早期発見早期治療が最も有効であるとされており県医師会、地元医師会その他、数多くの関係者の協力で検診受診率向上が実践されております。最近はかかりつけ医からのがん検診勧奨事業にも取り組んでおります。
 がんはさらに多くの問題を抱えており、その一つが質の問題です。とくにがんによるストレスはがんを患ったかたにはとても大事なことで、完全になおりましたよとお医者さんに宣言されてもこころのなかに大きなしこりが残っているのだそうです。そのときにサポート体制がととのっていれば前進する勇気が沸いてくるのです。その意味で秋田市医師会の企画はほんとうに意義のあることと評価したいと存じます。またこれらのサポート運動に携わるかたがたの努力が評価され今年度も県予算がついているとのことですが、さらに評価していただき安心して暮らせるそして命を輝き膨らませる秋田市が一日も早く達成されますよう心より祈念申し上げます。

 
- 基 調 講 演 -

女性がん患者が直面すること「子宮けいがんの花嫁」
 
- シンポジウム -

司会 (秋田市医師会広報委員会委員・田中秀則)
 それでは、お時間になりましたのでシンポジウムをはじめたいと思います。今回の『医療を考える集い』は、市民で考えるがん医療、女性特有のがんに目をむけて、私たち一人ひとりがサポーターと、題しまして、この会を行っております。先ほど、河村裕美さんの基調講演『子宮けいがんの花嫁』を、みなさま、どのように感じられたでしょうか?今回、秋田市医師会では、がん患者さんの支援にむけたシンポジウムを企画しました。私は、司会を担当いたします秋田市医師会広報委員会で、産婦人科医の田中でございます。どうぞ、よろしくお願いします。
 さて、このシンポジウムでは、がん患者さんの『からだ』と『こころ』と『くらし』を支える専門家の皆様と、さきほどの河村さんにも入ってもらい、活発な討議がおこなわれるようにしてまいりたいと思っております。のちほど、フロアーの皆様からも質問を受けたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 それでは、シンポジストの皆様を紹介していきたいと思います。
 皆様から、向かって一番左、弘前大学医学部附属病院腫瘍センター緩和ケアチーム臨床心理士の工藤恵子さんです。工藤さんには、がん患者さんの心のケア、また、がん患者さんの御家族がどのように患者さんを支えていけばよいのか、お聞きしていきたいと思います。
 次に、秋田赤十字病院がん相談支援センターメディカルソーシャルワーカーの米谷純子さんです。がんの治療は、非常に高額であるということは、フロアーの皆さんは、知っていますか?米谷さんには、がん患者さんの経済的支援について、また、がん相談支援センターの役割について、お聞きしていきたいと思っております。
 次に、中通総合病院緩和ケア認定看護師の苅安真佐美さんです。先ほどのお話にもありましたが、子宮頸がんを始めとする婦人科がんの手術を受けられた後、リンパ浮腫といって、足が、腫れ上がることが起きることがあるのです。苅安さんは、さまざまな術後患者さんのリンパ浮腫治療をして、かなり症状が良くなった患者さんも多いと、聞いていきたいと思っております。
 次に、あけぼの秋田代表の佐藤清子さんです。皆様方もあけぼの会が、乳がんの患者会であることを御存知であるかたも多いかと思います。河村さんのオレンジティと佐藤さんのあけぼの会。病気の種類は違っても、患者さんを救いたいという気持ちは、おなじだと思っております。その辺のところを、じっくり聞いてみたいと思います。
 そして、河村さんには、基調講演に続きまして、引き続きシンポジウムにも参加していただくことになっております。どうぞ、河村さん、よろしくお願いします。
 それでは、シンポジストの方に、簡単に自己紹介や、活動内容について、お聞きしたいと思います。みなさん、がん患者さんを支える仕事をしている専門家の皆さんです。
 それでは、討論に移りたいと思います。


私たち一人ひとりがサポーター -臨床心理士の視点から-
工 藤 恵 子 氏 (弘前大学医学部附属病院腫瘍センター 緩和ケアチーム臨床心理士〉

〈はじめに〉
 緩和ケアについて少しご説明いたします。緩和ケアという言葉を聞いたことがある方はいらっしゃいますか?もしかしたら、「緩和ケア=もう望みがない、終末期」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。一昔前は緩和ケアというと、もう治療の打つ手がなくなってしまい、治療が出来ないので緩和ケアへ、という流れであったのですが、現在はそうではありません。がんが進行した時期だけでなく、がんの診断や治療と並行して行われるものです。がんと診断された時にはひどく落ち込んだり、眠れなかったり、不安になったりすると思います。また、抗がん剤や放射線治療で吐き気などの副作用が起こることがあります。緩和ケアは治療に伴う様々な苦痛を和らげることを目的としたものです。がんの治療の早い時期、告知された時から導入することで辛い症状を緩和しながら、がんそのものへの治療を行うことが緩和ケアの目指すところです。今はいつでも、どこでも切れ目の無い質の高い緩和ケアを受けられるようになっています。本当に簡単ですが、緩和ケアについてご説明いたしました。
 では、私が所属している当院の緩和ケアチームについてご紹介いたします。当院の緩和ケアチームはH19年4月1日に発足しました。構成メンバーは、麻酔科医3名・精神科医1名・歯科医師1名・緩和ケア認定看護師1名・リンパ浮腫治療セラピスト上級認定看護師1名・薬剤師1名・管理栄養士1名・臨床心理士1名の計10名で構成されています。緩和ケアチームでは各診療科の依頼に応じて、入院患者さんに様々な支援を行っています。がんによって生じる痛みは勿論、だるさ、吐き気、むくみ、息苦しさといった体の症状、そして不安や気分の落ち込み、不眠といった精神的苦痛を和らげて、治療や療養上の心配事にも出来るだけ援助しております。患者さんの入院中は麻酔科医が毎日診察し、毎週木曜日にはカンファレンスを開き、患者さんやそのご家族の様子について、スタッフ同士で情報交換し、最善のケアプランを作成し、必要なメンバーが直接患者さんのもとへ出向いています。主治医や看護師とも情報を共有し、日々の療養や生活全般が出来るだけ快適になるように協力しあっています。メンバー全員が患者さんに遠慮無く活用していただけるフットワークの軽いチームを目指しています。私は臨床心理士として、H19年の8月から緩和ケアチームに所属しています。患者さんやそのご家族の心理的ケアを担当しています。今まで関わった患者さんやご家族は100名程になります。中にはお話が出来るような体の状態ではなくて、挨拶を伺って二言三言の言葉がけをして終わることもありますし、1時間以上お話を伺うこともあります。患者さんのところへ赴くと、「不安でいっぱいで、不安が無くなるようなアドバイスをして欲しい」、「他の人はどのように乗り越えたのか」「どうしたら自分が病気になってしまったのか考えなくても済むのか」等の問いかけを投げられることがありますが、臨床心理士は具体的な助言は滅多にしません。このように言いますと、驚かれる方が多く、「心の専門家なのにどうしてアドバイスの1つも出来ないのか」と怒りを向けられることもあります。しかし、心の専門家だからこそ、アドバイスが役に立たないということもあることを知っています。私が「皆さんこうしてます」と伝えると、一瞬は心が軽くなるかもしれません。しかし、それがずっと続くわけではありません。アドバイスして心が軽くなるような小さなことで皆さん悩んでいらっしゃるわけではないと思います。自分の存在を揺るがすような、自分の未来を信じられないような絶望を感じる大きな経験をされていると思っています。そこからどう浮上していくのか、どう自分を支えていくのかは、患者さん一人一入の中にあって、臨床心理士はお話を伺って行く中で、答えを一緒に探していく役割だと思います。

〈当事者の方へ向けのメッセージ〉
 がんは、体と心の両方に負担がかかってしまう病気と言われています。不安などの心の問題が、がん患者さんの悩みの約半数を占めるという結果が厚生労働省の研究で明らかとなりました。さらに、同じ研究で「悩みを少しでも和らげるためには?」という質問では、「自身の努力による解決」という回答が第2位でした(厚生労働科学研究『がんと向き合った7885人の声」より)。
 患者さんとお会いしていると、「もっと頑張らないと」という言葉をよく耳にします。気持ちを奮起させ、病気へ立ち向かっていくのも1つのあり方です。ですが、時に、「自分が頑張る」ことは、例えて言うなら、自分の座っている座布団を座ったまま持ち上げようとすることになりかねず、心が空回りして余計疲れてしまうといった場合もあるのです。では、どうしたらよいのでしょうか。
 自分の心の内を誰かに話すことは、実は非常に勇気のいることです。
 「こんな話をしてしまったら心配をかけてしまうのでは?」「不安にさせるのでは?」という思いが先に立つことがあります。
 ここで少し視点を変えてみましょう。「もし、逆の立場で、自分の大切な人が、心配をかけまいとして独りで苦しみを抱えている…」としたらどうでしょうか。居ても立ってもいられない気持ちになりませんか。そして、出来ることはしてあげたい、と思うのではないでしょうか。あなたの周りの人達も「もっと頼ってほしい」と思っているかもしれません。
 心配ごとを、ほんの少し、預けてみませんか?

〈ご家族へ向けてのメッセージ〉
 ご家族の存在は患者さんの大きな支えになります。ただ、それだけにご家族の抱える負担も時に大きくなることがあります。私達医療者も、ご家族に対してはつい “支える役割” を求めてしまいがちです。病気による体の不快な症状は、患者さん本人が引き受けざるをえないところですが、患者さんと同じくらいに、ご家族は精神的な苦しさを味わっているという研究報告があります。
 私が必ずといっていいほどお伝えしていることは、「1人の時間を持つように心がけてください」ということです。心を張り詰めている状態は、糸を強くピンと張っている状態と似ています。時々、緩めてあげないと糸は切れてしまいます。1人の時間は、心の糸を緩める役割をしてくれるのです。

 「自分だけがゆっくり茶を飲んだり、お風呂に入ったりすることに罪悪感を覚える」と話すご家族も比較的多いことも事実です。ですが、ご家族の心の糸が切れてしまったら、何より患者さん本人が、ご家族のサポートを得られず、さらにつらい思いをすることになりかねません。1人の時間は自分を支えるために必要だと割り切ることも必要です。


  
米 谷 純 子 氏 (秋田赤十字病院 がんそうだん支援センターメディカルソーシャルワーカー〉

〈はじめに〉
 私は地域がん診療拠点病院である、秋田赤十字病院のがん相談支援センターで医療ソーシャルワーカーとして勤務している米谷と申します。がん相談支援センターについて簡単に説明しますと、平成18年にがん対策基本法が成立され、どこに住んでいても専門的ながんの治療を受けられるように、一定地域ごとに拠点病院が整備されました。拠点病院の役割の一つに、相談支援センターを設置し、患者さん・家族からの様々な相談に対応することが明記されています。秋田県では大学病院を中心に8病院が指定され、さらに県独自に3病院が指定されています。秋田市は大学病院を含めて5病院が集中しています。相談支援センターの相談としては、患者さんや家族の不安な気持ちやセカンドオピニオンの受け方、患者会について、リンパ浮腫の相談、そして医療費などの経済的な問題などが持ち込まれてきます。秋田赤十字病院の活動を紹介しますと、平成20年4月に開設され、5月にはリンパ浮腫相談を開始し、8月には乳がんサークル「Happy Cafe Club」の立ち上げからサポートしています。21年7月から院内の患者会「がん患者コミュニティサロン」を開設し、月1回定例会を開いています。22年の2月には情報コーナーを設置し内容の充実を図っているところです。主に医療ソーシャルワーカーが関わる経済的な問題を相談している時に、「死んだっていい、死んだほうがいい」という言葉を聞くことがあります。①つにはがんの治療で身体的に苦しい思いをする、②つにはお金がかかり、払えない、家族に迷惑がかかる、③つには早く死ねば家族に早く生命保険金が入ると言うのです。悩みぬかれての言葉だと思いますが、とても切ない言葉です。制度を活用することで、解決の糸口になれたらと、(大きくて登れそうもないと思われる山も、くだいて小山にしてなら登れるかもしれないと思っていただけるよう、少しでもお手伝いが出来るなら)高額療養費制度や身体障害者手帳の申請、障害年金、生活保護制度、介護保険制度など説明させていただいています。少し、事例を紹介しながら高額療養費制度と健康保険の限度額適用認定証について説明します。お手元の資料を参考にしてお聞きください。


〈事例〉
 Aさんは40代女性、乳がんと診断され、治療は手術とハーセプチン(3週間に1回投与)です。身長150cm体重55kgです。2月に1週間の入院と外来治療を行います。認定証の区分は一般のBです自己負担の限度額は80,100円プラスかっこ内の加算分、多数該当になると44,400円です。入院費は限度額適用認定証を利用する予定です。これが認定証を使わないと、最初の2週間の手術を含めての医療費だけで21万~25万円くらいになり、それに食事代、1日780円などが足されて請求書がお手元に届きます。そうするといったん支払いを済ませ、払い戻し制度か貸付制度の利用をすることになりますが、払い戻されてくるまで3カ月以上はかかるので、それまでの経済的な負担は大きくなると予想されます。2月は高額療養費制度に該当し1回目となります。3月は外来1回で42,000円で非該当、たとえば検査などで60,000円かかったとしても非該当で、この順番で行くと一月置きに該当し、多数該当になるのが8月からになってしまいます。外来では限度額適用認定証が使えないので、払い戻しか貸付制度を利用することになります。貸付制度は秋田市国保では高額療養費分を10割無利子で融資斡旋します。協会けんぽは8割程度です。手続き方法について分からない事があれば健康保険の窓口や支援センターに問い合わせてください。また、限度額認定証は健康保険に加入していれば誰でも利用できる制度ですので、入院が決まったら直ぐに手続きに行ってください。月を超えるとさかのぼりませんので気を付けてください。
 しかし、毎月ぎりぎりの金額で高額療養費に該当しないで、いつまでも多数該当にならずに大きい負担が続くことになる方がたくさんいらっしゃいます。これからも考えて行かなければならない問題だと思います。

〈身障手帳・障害年金〉
 もう1例はBさん、60歳の女性です。子宮頚がんと診断され手術後化学療法と放射線治療を行っていました。放射線治療の後遺症で膣・直腸痩となり、人工肛門を造りました。身体障害者手帳の4級に該当します。その後、放射線照射の影響が進行し、神経因性膀胱から膀胱・膣痩になり、腎痩を造りました。前の等級と合わせて身体障害者3級の申請を行い、医療費が無料になりました。さらに、国民年金の障害年金の「その他の障害」の診断書で請求しました。

〈在宅〉
 ここまでは経済的な問題についてお話ししましたが、相談の中には自宅で「生」を全うしたいという相談もあります。病院に「死」を任せる、病院でお亡くなりになるのが一般的になってしまっている今の医療に疑問をいだき、自宅で「死」を迎えたいという相談です。この希望をかなえるために、そしてご家族を支えるために、どうするか一緒に考えます。そのためには介護保険の申請を行い、ケアマネさんと協力して、フットワークの軽い開業医の先生に往診と、訪問看護師さんやヘルパーさんをお願いし、できればボランティァさんや近所の方も巻き込んで行けたら、そのつなぎ役として医療ソーシャルワーカーを利用していただけたらと思います。

〈まとめ〉
 これまでの話をまとめてみると、①情報を集めましょう、しかし情報の探し方が分からないときがあると思います。②自分の事や家族の事、病気の事や経済的な事を知りあいに打ち明けるのはとても難しいものです。③担当医の先生に自分の考えを伝えたいとき、どんな風に伝えたらよいのか悩むことがあると思います。④心の悩みを誰かに聞いてほしい時、話すだけで解決する事もあるはず。⑤他の人の話も聞いてみたいなど、それぞれの内容に応じて看護師、栄養士、薬剤師、ケースワーカーなど専門のスタッフが対応します。とにかく、相談支援センターに相談してと強調して終わりたいと思います。


当たり前の日常生活を取り戻すためのリンパ浮腫ケア
苅 安 真佐美 氏 (中通総合病院 緩和ケア認定看護師〉

 乳がん・骨盤内臓器がん手術や放射線治療により、主要リンパ節が損傷されることで四肢に起こるリンパ浮腫。患者数は全国に12万人以上とも言われている。リンパ浮腫はリンパ郭清を伴う手術や放射線治療の併用によりその発症リスクを高め、一度発症すれば完治しない。浮腫の放置や、最も多い合併症である蜂窩織炎の発症で、本来の手足からは想像できないほどの変形に至ることも少なくない。そうなると関節可動域制限から様々な日常生活に支障を来す他、「洋服が着られない」「靴が履けない」「外に出られない」「人と会えない」などQOLを著しく低下させる。小川氏によれば、リンパ浮腫の大半は5年以内に最も多く発症しており、患者は社会復帰後の再発・転移の不安に加え、この新たな合併症によるQOLの問題と向き合わなければならない状況にあるといえる。
 当院ではリンパ浮腫患者への緩和ケアの必要性を強く感じ、2006年7月から外来におけるリンパ浮腫ケアを開始。当院緩和ケア外来のバックアップのもと、2007年3月にリンパ浮腫ケア室を開設。リンパ浮腫治療は、専門的な知識と技術を有するセラピストによる複合的理学療法が行われ、同時に患者のセルフケアが治療効果を大きく左右し、ADLに影響を与える。当ケア室では、心身ともにゆっくりと、そして人のぬくもりによる「安心」と「気持ちよさ」のなかで治療を受けていただくと共に『自分で自分をケアする』というセルフケア能力を高めるため、身体的・精神的・社会的、Spiritual な側面、いわゆる全人的な介入を図り、緩和ケア外来・理学療法室と連携しながらQOLの回復を目指している。リンパ浮腫ケア室開設からもうじき5年目を迎え、患者数は160名以上、その内26%の患者はリンパ浮腫が改善し、上手にリンパ浮腫と共存しながらほぼ手術前の日常生活を取り戻している。
 リンパ浮腫治療の一部は保険適応になったが、メインとなるリンパドレナージはまだ保険適応外であり、治療施設やセラピストの不足などリンパ浮腫治療は課題が山積している。がんになっても、リンパ浮腫になっても、『当たり前の生活を当たり前にできる』ように、予防から治療、そして自立へと私たちスタッフはこれからも患者やその家族が生きる力を取り戻すケアを提供し続けて行きたいと考えている。


あけぼの秋田 患者活動をとおして
佐 藤 清 子 氏 (あけぼの秋田代表〉

患者サロン
「あけぼのサロン」
 1998年ABCSS (Akebono Breast Cancer Support Service) 中通繊総合病院にて活動開始。
 乳がんの手術を受けて入院中の患者さんを、乳がん体験者が訪問し、不安や疑問にお答え退院後の社会復帰に役立てる事から始まった。所定のトレーニングを受け、術後1年以上の会員がこれに当たる。
 秋田はテキストブックによる研修を基本にしている。3回は研修に参加、その後6回~12回オブザーバーとして現場に出向く。本部では病室へ訪問が基本、秋田では最初からサロンの形をとっている、現在がん相談支援センターで、毎月第3火曜日14:00~16:00開催、訪問者数は開設以来320名となった。毎年2月にこの結果を本部報告する。

「ひだまりサロン」
 2008年 部位を超えた患者サロンとして開設。現在協働社大町ビルにて、偶数月13:30~16:00開催。
 ・心のケア
 体験者が、ピアサポートする、傾聴することを心がけている。
 この苦しみを誰かに聞いて貰いたい、誰かに話したい、術後の不安が強く、同じ病気を克服した人の存在は、前向きに生きようとする意欲につながると思う。
 訪問された患者さんの居る場所は、術後の自分自身がまさに、そこにいるのだと思えば自ずと訪問者の、辛さ、苦しみが理解できる。再発への不安、仕事、社会復帰、家族の中での自分の居場所。がんを体験したことで、たくさんの問題を抱えてしまった訪問者。体験者の立場から言えることがあります。

・家族の支え がん患者の精神的な支え
 乳がんを患ったことで、離婚したひとがいた。また生きる望みを失って自殺した人がいた。そのような世相の中でこの患者会活動は始まった。
 ご夫婦でおいでになる方もおります。夫が妻を気遣うそんな姿は、病気をしたことで、お互いの存在を確かめあっているようにも見える。夫の手助けはどれだけ回復への力となることか。
 今までお手伝いをした事もなかった子供や、夫が家事を手伝ってくれるようになったという話は家族の絆を深め、思いやりの心をもつ子供に育っていくのを感じますと嬉しそうに話してくれる。
 逆に辛くとも、あまりに動きすぎるので、お母さんの手術はたいしたことがないと感じる家族がいて、とても疲れる大変な思いをしている。もう少し早くここに来ればよかったと、どれだけ多くの人が話された事か。

・主治医に対して
 先生は何をしても良いと言ったからと、張り切りすぎて腕立て伏せをやり、傷が開いて再入院したそんな方もいました。
 何をしても良いということは、私を見放したのではないか。患者さんに対しての説明不足が不安を掻き立てている。
 主治医は診察の際、私に目もくれない、パソコンばかり見ている。私はどうでもよいのか。患者と医療者の意思疎通、患者が自分の思いを医療者に十分に伝えることの必要を感じます。話したいことは、メモ書きしたものを診察券と一緒に出す。そのようにアドバイスが先生からありました。
 治療中の患者に対して「高齢者だから」との言葉は、あなたはもう治療が出来ない、と言っているように聞こえる。患者は生きる力をなくしてしまう。人として、がんと闘う言葉には聞こえない。

・乳房を失ったこと
 女性として乳房を失う事はもの凄いショックです。その事実を受け入れたくない。しかし、その後、治療が手遅れになるという現実もある。
 乳がんの手術をしたことを知られたくない。術後12、3年たっても成人したわが子にも話さない人もいます。成入して知らされる子供は辛いのではないか。
 自分の病気を受け入れること、そして病気に対しての知識を得ることが患者として大切な事。「悪いところを取ったからもう治った」20年間1度も診察を受けなかった、腰が痛くなり色々調べたら、それは骨転移であった。

・体のケア
 リンパ浮腫について
 あけぼの秋田では、リンパ浮腫の公開勉強会を平成18年より実施しております。この勉強会を持つに至った経緯は、リンパ浮腫で悩んでいる方からの相談があまりにも多かったから。
 主治医から、なんともならない、手立てがない、どうしようもないと言われた。当時、それが医療側の実態であった。遠くても、後藤学園や広田先生を紹介することより出来なかった。
 苅安さんのことがNHKで放映されたとき、矢も立てもたまらなくなり、外旭川病院に電話し講師依頼が実現しました。
 秋田県がん対策推進計画検討委員会に招聘された折、社会復帰のケアの項にリンパ浮腫対策の推進がありました。リンパドレナージ療法等に対応出来る人材の育成及び患者を対象としたセルフケア講習取り組みへの支援のあり方は、ただ検討されただけなのか。治療待ち期間があまりにも開きすぎる。
 患者サロンの話題はリンパ浮腫について話し合われることが多い。
 リンパ浮腫の治療費は、保険適用外、装具については署名運動の結果適用となった。
 安藤秀明先生が立ち上げられた、秋田リンパ浮腫ケアセミナーの継続を希望する。
 一日も早い治療費の保険適用となるように、関係者で考えましょう。

・暮らしのケア
 障害者認定・医療費
 乳がん・リンパ浮腫・肺転移・膝関節に補装具をつけ、膝関節は手術出来ないと医師から宣告を受けたサロン訪問者がいました。「障害者認定は受けているか」の質問に対して受けていないとの返事でした。申請するように進めて、今は手帳を持っていますが、患者会から言われる前に、治療に当たっている医療者から一言、情報を流してもらいたかった。その状態になって何年もたってからでした。
 がん治療費は高額なために、治療拒否する患者もいるといいます。
 保険適用になった標的治療薬、ハーセプチン、ジェムザール(ゲムシタビン)ジェネリックも、患者の負担額は大変と思う。

・患者の望み 社会に不足しているもの 問題点
・緩和ケアは治療と平行して
 希望を持った生き方の出来る、医師からの言葉を望んでいる。



総 合 討 論

司会 さまざまな第一線で働くがん患者支援の専門家の皆様にお話を聞いたのですが、河村さん、どのようにお感じになりましたか?

河村氏 私が病気をした時に感じたのは、医師は子宮しか診ていません。膀胱炎になった場合は泌尿器科へ、頭痛がすると言えば内科へ行ってとバラバラでした。しかしこの何年かで日本でもチーム医療という考え方が出てきて、本日お越しの皆さんがそれぞれの分野で情報を交換しながら、患者を一人の人として診てくれるということが広がって来ています。リンパ浮腫というと、10年前は治療法が無いと言われていました。静岡でもリンパ浮腫の患者さんはほとんど放置でした。しかしこれではいけないと、私たちも9年前からリンパ浮腫の勉強会を始めました。やはり、患者さんを取り巻く問題は経済や、家族など様々ですが、それを一つ一つ患者さんが見つけて解決することは大変です。しかし、こういう風に一つに集まって、皆さんが一人の患者に関わってくださるのは非常に心強いことですし、秋田は羨ましいと思いました。

司会 河村さんは、結婚してまもないころに『がんの告知』を受けて、どのように感じましたでしょうか?相談したのは旦那さんにだけですか?

河村氏 友達には相談出来ませんでした。告知をされて、仕事は誰に任せるのか、どのくらい休むのか等の実務的なことを考えました。本当にがんだと落ち込んだのは手術後でした。その時初めて、自分は病気であること、この先どうするのかを考えました。それまで自覚症状もなかったので、わりと実感がなかったというのが本音のところです。皆さん様々だと思いますが、私の場合はそうでした。

司会 工藤さん、がんの告知は強い衝撃を与えると言われていますが、どれほど強いものなのでしょうか。そのあたりのことを、お話ししていただけますか。

工藤氏 患者さんにお会いしてお話を伺いますが、皆さん動揺というより衝撃を受けます。死は誰にでもあるものですが、私たちは普段死を意識せずに生活をしています。逆に言えば、死を意識し続けて生活をするのはとても苦しいものだから、人間の心はあまり考えないように生活が送れるようになっています。ただ、がんの告知の際に衝撃を受けることはとても自然のことで、むしろ衝撃を受けるべき時に受けないのはかえって良くないと心理の世界では言われています。患者さんが衝撃を受けられた後にどうサポートしていくのかに目を向けていくことが大事だと思います。患者さんによっては自分に起きたことではないように見える方もいます。そういった患者さんはいつか強い衝撃を受けるのではないか、スタッフ同士で情報を共有してその経過を見ていきます。

司会 この場合、河村さんのだんなさんの支援が、かなり、重要に思えましたが、工藤さんは、どう、思いますか?旦那さんはどのような言葉をかけていけばいいのでしょうか?

工藤氏 ご家族もご本人と同じくらい衝撃を受けます。そのご家族にも私たちはサポートします。身近にいるご家族が患者さんの一番のサポート源になるため、ご家族にも患者さんをサポートする役割を求めてしまいますが、そうするとご家族にも負担になります。私たち医療者はごくごく当たり前にご家族にサポートを求めてしまいますが、実はご家族も辛さを抱えていることを頭に入れておかなければいけません。私はご家族には辛いと感じるのは自然のことであると認めます。ただ、ご家族のサポートは必要なので、サポートを続けるために、必ず一人の時間を持つように伝えています。ご家族が倒れてしまうと、患者さんのサポートがなかなか出来ませんので、ご家族もサポート出来るように心を緩めてくださいと伝えています。

司会 家族間のコミュニケーションにちょっとしたずれがある場合があると思いますが、河村さんは旦那さんに対して感謝をしつつも、強い女を演じていたと先ほどのお話で伺いました。本音の部分ではいかがでしたか?

河村氏 今でも私のことをどう思っているのかを夫に聞くのは怖いです。夫が私のことを可哀想に思っていると言われたら、自分を否定された気持ちになります。仲はすごく良いと思いますが、迷惑をかけてしまったというのが私の中でものすごく大きいです。家族に悲しい思いをさせたというのを、家族から知るのが怖くて避けている部分はあります。お互いがお互いを愛するが故に話せないというのは、どんな場面でもあります。それを埋めながら家族は出来上がっていくと思いますが、それを確かめられないです。

司会 話は変わりますが、治療費や交通費など経済的なサポートが必要と思います。米谷さんに伺いますが、子供を預けたい場合はどのようにすればよいですか?

米谷氏 お子さんが小さいというのは、がん患者さんだけでなく、当院の内科で点滴治療をされている方で、お子さんをどこに預けるかなど、私たちのところに相談があります。転勤等で近くに預け先がない場合は、アルヴェに子育て支援センターがあります。その中のファミリーサポートセンターでは、会員制で、日中1時間600円~800円、宿泊だと1泊5千円程度です。また、乳児院で一時預かりもやっております。もし、何週間か預けなければいけない場合は、ショートステイ事業も秋田市児童家庭課が窓口となってやっております。ただ、条件が厳しいので、まずは児童家庭課に相談していただきたいと思います。
 また、経済的な問題は本当に辛いことで、身内であればあるほど言えないということがあると思います。私たちのところにも「死んだ方がましだ」と相談にいらっしゃる方もいます。がん治療で体が辛いということもありますが、2つにはお金がかかって払えず、家族に迷惑がかかること。3つ目には早く死ねば生命保険金が入るので、治療したくないという相談もありました。また、1ヶ月分の薬代を払えないので、2週間分の薬を1ヶ月に延ばして飲んでいるとの辛い相談もありました。先ほどの高額療養費の件ですが、自己負担が月8万を超えるのは大変なことだと思います。しかし、7万8千円が12ヶ月続いたとすればどうでしょうか。自己負担限度額がいつまで経っても4万円にならない場合があると思います。その場合は、検査をしたり、院外処方を院内処方にしたり、高額分をクリア出来ないか担当医とこちらで相談したりしています。秋田市の社会福祉協議会では小口資金の貸付や療養資金の貸付制度もあります。そういったことも知らなければ利用できないことですが、私どもソーシャルワーカーが出来る範囲で情報提供をしています。先ほどの「死んだ方がましだ」と相談された方も、今は治療継続して、ご家族と一緒に笑いあって、「あの時やめておかないでよかった」との言葉をお聞きしています。何とか先延ばしする、今をクリアするということで、お手伝いしております。

司会 本当に役立つ情報です。今まで医療側としては医療費を下げることだけを考えていましたが、患者さんの負担を何とか軽減する取り組みには関心します。
 話は変わりますが、リンパ浮腫予防には水中歩行がいいと患者さんに話していますが、他にどんなことがありますか?

苅安氏 何かをしなければ予防できないということではなくて、日常生活で気をつけると意外と色々なところで予防出来ます。腕については、重いものを持たないようにします。その人によってこれは大丈夫だけど、これはしてはいけないということがありますので、まずはご自身の両手を見比べて、お肌のお手入れをしていただきながら、腕に負担のかかることをしないでいただくことが一番の予防になります。ただ、足については、歩かないわけにはいかないので、予防指導を受けていただきたいと思います。しかし、予防指導を行っている施設が県内でも限られており、パンフレットを作成している施設もまだまだ少ない状態です。最近ではあけぼの秋田さんのところで毎年、市民公開勉強会で予防指導を行っています。これはどなたでも参加出来ます。私どものところでは、秋田リンパ浮腫ケアセミナーを去年から立ち上げ、予防指導をこれからしていきたいと思っています。

司会 リンパ浮腫予防には足や腕を上げて寝るといいという話もあります。家で簡単にできる体操などはありますか?

苅安氏 先ほど、田中先生から水中歩行の話が出ましたが、実はこれは効果的です。水中では水圧を受けますので、リンパ浮腫治療のストッキングを履いているのと同じ効果が得られます。その上で運動することで、リンパ管は筋肉の動きに刺激され流れが良くなるので、水中歩行するだけで十分に足の予防が出来ます。そう考えますと、お風呂の中で足首を左右に回したり、足首や膝の曲げ伸ばしをしていただくといいと思います。お風呂の中でなくてもいい運動になると思います。腕についても同じです。足や腕を上げて寝るとよいといわれますが、寝不足がむくむ原因の一つですから、まずはゆっくり睡眠を取ることです。それと太らないということで、これが大きな問題ですので、気をつけていただきたいと思います。

司会 河村さんはいかがですか?

河村氏 オレンジティではおしゃべりルームを開催する際、セラピストの方に各会場に3ヶ月に1度巡回していただいております。患者さんたちはやはり、ケアを途中で続けるのがいやになるのですが、お互いに声を掛け合って続けていく場を提供しています。やはり長い間には、モチベーションは下がりますし、一生涯つき合っていくのは大変です。夜遅く帰って化粧を落とすのも面倒なのに、マッサージしてる場合ではないです。しかし、それではいけないので、お互い士気を高めるということを、この9年間やってきました。

司会 リンパ浮腫の治療をする方は、秋田では何人くらいいらっしゃいますか?

苅安氏 セラピストの資格を持っている方は何人かいらっしゃいますが、ドレナージに関しては保険がきかず、それに伴い自由診療になるので、費用が高くなります。病院が併設してリンパドレナージを行っていると公開しているところは、東北では当院と福島だけです。全国的に少ない状況ですから、2ヶ所に集中してしまうのが現状です。保険適用になってくれれば、という一言で済むことではありませんが、患者さんには適切な予防指導と治療を受けて、ご自分で上手にお付き合いしていただきたいと思います。

河村氏 一昨年に、リンパ浮腫の保険適用について、国に請願したり、日本医師会へお願いに行ったりしてまいりました。一部ですが、ストッキングには保険が付きました。まだまだですが、頑張りたいです。経済的に余裕のない若い方は8千円を出すのが厳しく、自己判断でリンパ浮腫を悪化させてしまう方もいらっしゃるので、保険でまかなってほしいと思います。そういった運動があった時には皆さんも是非ご参加いただきたいと思います。

司会 佐藤さん、あけぼの会の設立のきっかけは、どのようなものでしょう?

佐藤氏 1978年、現在の乳がん月間となっております10月にあけぼの会として設立されました。本部会長ワットさんは37歳で手術をし、再発するのではないかとの心配から精神科を転々としている時、乳がんが原因で自殺、一家心中した記事を見て、がん患者のサポートシステムが必要と感じ、ある新聞に「乳がん体験者の集いを」と呼びかけました。この記事がきっかけで、集まった人たちが、「白々と夜が明けて朝日が上るひと時のように希望を持って生きよう」という願いを込めてあけぼの会と命名したそうです。33年前のことです。あけぼの秋田は本部設立から10年後に設立しました。2007年には、「Breast Cancernetwork Japan あけぼの会」として、全国支部の中で13支部が独立させられました。私たちは独立には反対でしたが、全国でも活発に活動している支部ということで独立となりました。

司会 ありがとうございます。オレンジティの設立の経緯はどのようなものですか?

河村氏 もともとは自分一人で立ち上げました。私は県で広報の仕事をしておりまして、マスコミの方とお付き合いする仕事が多かったので、ワットさんと同じように新聞に取り上げていただきました。そうしましたら、何人かが集まってくださって、その中からお手伝いをしてくださる方が増えてきて、今に至ります。最初は何のために立ち上げたかというと、患者さんをサポートするためではなく、自分自身助けが欲しくて、他の患者さんに助けてもらいたくて、その思いで今もやっています。毎日が勉強で、皆さんに助けられて、今ここにいてお話をしているのだと思っています。

司会 あけぼの会から見て、オレンジティをどのように感じましたか?

佐藤氏 私は入会して6年目に支部長となりましたが、わけがわからないというのが本音でした。今ようやく「秋田県に乳がん患者会がある」と、その存在を知っていただくようになりました。それまでに20年かかったという感じがいたします。オレンジティの河村さんは一人で立ち上げ、一人で頑張ってこられ、それは自分自身のためだったと話されましたが、あけぼの会本部設立の時代と今では大きな時代の変化があると思います。皆さんが情報を共有し、自分だけで悩まないでいただきたいです。あけぼの会では一般公開の勉強会を開催していますので、そういう情報を目にしたら、是非参加していただきたいと思います。

司会 あけぼの会は乳がん患者の会ですが、秋田には婦人科系の患者会はまだ少ないので、これから設立する際は、あけぼの会さんや河村さんに相談していただきたいと思います。今まで5名のシンポジストの方からお話を伺いました。会場の皆さんで、ご質問がありましたらお願いします。


質 疑 応 答
質問A 私の妻は右手がリンパ浮腫になり、病院からモルヒネも効かないと言われ、ホスピスで亡くなりました。「薬が効かないので、マッサージをする」ということを詳しく説明していただけたら。

苅安氏 リンパ浮腫は残念ながらお薬では治りません。むくみが硬くなったものを、漢方薬を使って柔らかくしてリンパの流れを良くするということで、当院では薬剤を使う場合はございます。リンパ浮腫は基本的に痛みはないので、モルヒネ等の鎮静剤を使ってもあまり効果はございません。ただ、炎症があれば全く話は別です。東京大学病院では手術という方法も研究されていますが、リスクが高く思ったような進歩には至っていないとのお話です。複合的理学療法は東洋医学的な発想がありまして、要するに、本来の循環にリンパ液を戻すことでむくみを改善するという考え方です。少し時間はかかりますが、副作用も非常に少なく、きれいな状態に戻すことが可能です。ただ、すぐ良くなると期待されると難しいところですが、お薬や手術では、副作用や合併症が起きますが、ドレナージではそういった危険性が非常に少ないので、有効な方法ではないかと思います。

質問A 秋田市医師会には非常に敬意を表したいと思います。今まで秋田ではこのような講演があると、医師が教える側、一般市民は聞く側という講演ばかりでした。このように様々な方々から意見を聞けるという講演を、秋田市医師会にリードしていただきたいと思います。また、私は全国の子宮頸がんの知り合いがいますが、河村さんには排泄障害や性行為までお話いただきました。「猛烈な女」、「猛女」というのがぴったりと思い、全国の患者会に講師として紹介したいと思いました。また、相談支援センターは動きが鈍いと思っていましたが、ある医療機関で支援センターの案内があるのを見つけ、やっと動き出してくれたと嬉しく思います。大変わかりやすく書いてあるので、他の医療機関でも置いていただきたいと思います。アグネス・チャンや河村さんも「まさか自分ががんになるとは」とおっしゃいます。私の妻もそうでした。がん検診が大切だと言われていますが、問題なのはこの場に来ない方、関心の無い方だと思います。検診の義務化が必要だと思います。がんは自分だけの問題でなくて、家族や周りの人たちにも関わる問題です。昨年から始まった女性のがん検診無料クーポン券も25%の利用率でした。無料にしても、他人事だと思っていれば受けないので、欧米のように義務化をしないと70~80%の受診率にはならないと思います。静岡でもそういう意見で盛り上げていただきたいと思います。

河村氏 私も義務化には賛成です。ただ、義務化を言うなら財政についても考えなければいけません。選挙で義務化と財政負担について一緒に考える候補者を選んでほしいと思います。また、義務化に伴い、国民が負担を覚悟することも必要だと思っています。

司会 国会にも義務化を働きかけているということですか。

河村氏 そうです。ただ、財政破綻している状態で、何か新しいことをするなら、何かを削るか自分たちで負担をしなければいけないと思います。あとは公平性です。リュウマチの方もいれば、小児がんの方たちなど様々な方がいる中で、がん検診の義務化をするなら説明理由もきちんとつけることが必要だと思い、働きかけをしています。

質問B リンパ浮腫の治療について、以前5ヶ月待ちだと言われました。もっとドレナージの専門家を増やしていただきたいと心から願います。リンパ浮腫に対する資格を持つために業界の皆さんはどのような努力をしているのかお尋ねします。また、医師会としてリンパ浮腫に対し、どのような対策を考えているのかお聞きします。

苅安氏 私は東京にあります養成機関で資格を取りました。今は学校も増え、受験しやすくなりましたが、資格があっても、働く場所がなければ宝の持ち腐れになります。例え資格を取ってきても病院ではその資格を生かしてくれない。しかし、患者さんは悩んでいるので、やってあげる、そうするとボランティアになってしまいます。そうすると継続性も無ければ治療の方向性も無いので、広がらないというのが問題になっているかと思います。当院に関しては、理解ある先生方がリンパ浮腫ケア室を立ち上げてくださいました。しかし、立場的には中通総合病院の健康クリニックの一角をお借りしてやっている状況で、午後しかやっていません。そこに私が抱えている患者さんは160名です。緩和ケア内科外来でフォローしている患者さんも含めますと230名になります。先ほどおっしゃったように5ヶ月待っていただかなければならないのが現状です。これをなんとか打開出来るように、当院では理学療法士を巻き込み、私のところに来るまでの間にフォローするとか、予防指導を病棟内で徹底して、出来るだけリンパ浮腫を起こさないようにしています。しかし、残念ながら追いつかない状況です。また、資格を取る人に教える資格を私は持っていませんので、そういう教育機関を立ち上げることは困難です。ただ、宝の持ち腐れになっているスタッフの技術を維持出来るようフォローしていきたいと思い、秋田リンパ浮腫ケアセミナーで今企画をしているところです。そこで技術を持っている方のモチベーションを維持出来るよう努めてまいります。ただ、施設側、行政の問題になるといかがでしょっか?

福島会長 皆さん、医療崩壊という言葉をご存知だと思います。秋田市では中核病院が4つ、大学病院もあり、充足しているように見えますが、実際には現在の医療を維持するのに汲々としている一面があります。4中核病院の院長先生に伺いますと、医師をはじめ医療スタッフをそろえるのに薄氷を踏む思いだと仰っています。他の市町村では既に医療崩壊しているところがありますが、秋田市も例外ではなく、各病院の医師をはじめとする医療スタッフの献身的な努力で何とか支えられていると言って過言ではありません。医療崩壊の最大の原因は、小泉政権の医療費抑制政策です。病院は、従業員に給与を支払わなければなりません。リンパ浮腫のマッサージをするにしても、患者数に応じた人員確保が必要です。リンパ浮腫マッサージをする看護師さんは患者さんを治療するため、それ相当の時間が取られます。そうしますと、リンパマッサージをするには、時間にしていくらと診療報酬をつけてもらわなければ、人員確保には繋がりません。また、サービスの点でも患者さんがご不満に思われることになりかねません。河村さんが仰ったとおり、よりレベルの高い医療を受けるためには、お金を払っても良いという姿勢を選挙で見せていただきたいと考えます。そうすれば、リンパ浮腫マッサージも保険適用になりますし、医療サービスの幅が広がることに繋がると思います。今年は県議会、市議会の統一地方選挙もございますし、衆議院選挙もひょっとすればあるかもしれないと言われています。各候補者が医療に対しどのような意見を持っているのかをよく聞いた上で投票することが、(医師会がリンパ浮腫に対してどう対策するかより)今我々のすぐにでも実行可能なことだと認識しています。

並木 同じく広報委員会委員をやっている並木です。がんを予防出来るワクチンというのは、子宮頸がんワクチンしかありません。私も産婦人科医ですが、産科が専門です。司会の田中先生はがんが専門です。田中先生から子宮頸がんワクチンの現状について詳しくお願いします。

司会 子宮頸がんワクチン接種は秋田市では2月1日から行われています。対象は中1~高1の秋田市在住の女子です。3回接種しなければいけません。本日受けたとすると、1ヶ月後に2回目、6ヶ月後に3回目を接種します。1回の費用はだいたい1万5~6千円で、3回接種すると合計で5万円弱かかります。しかし、国や地方自治体から補助があり、中1~高1の方は全額公費負担となります。ただ、ワクチン接種して終わりということではなく、大事なのはワクチン接種した後、20歳になったら子宮がん検診を受けることで、子宮頸がんを抑えることが出来ると思います。子宮頸がん予防ワクチンについては、河村さんも色々お考えがあると思いますが、いかがですか?

河村氏 それについては、一昨日も高校で講演してきました。性交渉前の女性が接種するのが一番良いということです。11歳~14歳はHPVに感染する前だからです。なぜ14歳だと思いますか?今の日本女性のセックスデビューが14歳からだそうです。HPVにかかったから怖いというものではありませんが、子宮頸がんにならないためにやってほしいと思います。私自身どれだけ子宮頸がんで苦しんだことか。やはり女性ならではの苦しみがあります。ワクチンについては、私はモナコまで勉強に行き、最初に発見したツワーハウゼン博士にお会いしました。ワクチン接種については怪しい噂も流れています。不妊になるなどの間違った情報もたくさん出ています。しかし、国が認めて、皆さんに提供されています。やはり皆さんに受けていただきたいと思い、活動をしています。

司会 欧米では80~90%の方がワクチンを接種しています。日本でも広めて、かつ検診を受けて子宮頸がん予防に取り組んでまいりたいと思います。お話が尽きないところですが、シンポジウムを終わらせていただきます。ありがとうございました。

総合司会 本日は多くの皆様にご参加いただき、ありがとうございました。これからも秋田市医師会では、こうした催しを通じ、市民みんなで支え合って生きていく社会づくりに、尽くしてまいりたいと思います。なお会場を出られたところに、本日シンポジストの方からご紹介があった資料、リーフレット等が置いてありますので、必要な方は、お帰りの際にお持ちください。これを持ちまして閉会とさせていただきます。ありがとうございました。足元にお気をつけてお帰りください。


まとめ 秋田市医師会広報委員会 担当理事 能登 弘毅

 第33回医療を考える集いが平成23年2月6日(日)に秋田ビューホテルにて行われました。今回は「市民で考えるがん医療」~女性特有のがんに目を向けて~をテーマにして、まずNPO法人オレンジティ代表の河村裕美氏に、自らの経験をもとに女性がん患者が直面することについて、深い内容であるにも関わらず解りやすく講演してもらいました。それを引き継ぐ形で臨床心理士の工藤恵子氏、メディカルソーシャルワーカーの米谷純子氏、緩和ケア認定看護師の苅安真佐美氏、患者会あけぼの秋田代表の佐藤清子氏に基調講演講師の河村裕美氏を加えた5人でそれぞれの専門の立場からのシンポジウムが行われました。プログラムは予定通りに進行し、終了いたしました。
 参加者数は約100名で、当日の天候は好天でしたが例年の参加者数に比べると少ない人数でした。これは例年と同じスケジュールで会場を予約していましたが、今回は会場側の都合(他のイベントのため)により日曜日開催となってしまったこと、さらに同じ会場で前日に似たようなテーマの規模の大きな市民公開講座が開催されたことが影響したものと考えられました。魁新聞での開催内容を誤解していたと思われる広告文書の掲載と、訂正文が直前にしか掲載されなかったことは残念としか言えません。
 会場の設営は後方出入り口で入場しやすく、無料のコーヒー、お茶のサービスも好評だったようです。昨年指摘されていた持ち帰り資料の不足も今年はありませんでした。
 内容については、基調講演ではこれまでにない、立ち入った内容についても本音の部分をきちんと話され、参加者の心に届くものがありました。シンポジウムでも限られた時間でありましたが、参加者は抱いていた不安や疑問の解決の一端を見つけられたものと思われました。これはもちろん、基調講演講師、各シンポジストの個人的才能や努力に負うところも少なくありませんが、メーリングリストを活用した綿密な事前協議が行われ、論点と発言内容をわかりやすく整理できたことが重要だったと考えられました。
 加えて、今回の「医療を考える集い」に先だって開かれた、基調講演講師河村裕美氏が運営する女性特有のがん支援活動である「おしゃべりルーム」参加者の中から、秋田県でも同様の支援活動を立ち上げる動きが出てきているそうです。「医療を考える集い」がきっかけになったと考えると、今後の活動に期待したいと思います。
 今回の「医療を考える集い」を総括しますと、まずテーマの選択は市民の興味あるもので的確だったと思われます。基調講演講師、シンポジストの人選も好結果で医師がこの中に含まれなかったことが評価されたことは今後のシンポジウムの内容、人選の参考になると思われます。さらに基調講演講師、各シンポジストと広報委員会委員の間でシンポジウムの趣旨や進め方についての意見交換に電子メールが大変有効であることがわかり、今後もメーリングリストを有効利用したいと思います。
 問題点としては開催曜日と広報のやり方があげられます。例年「医療を考える集い」は1月下旬から2月上旬の土曜午後開催を続けてきましたが、今回は当初からこの時期の適当な土曜日が空いておらずやむなく日曜日開催としましたが、結果的に参加者数は100名程度で、内容がこれまで以上に好評であったことを考えると、今後は開催時期を変更しても土曜日開催にこだわるべきと思われました。
 広報のやり方については、これまで以上にTVや新聞の利用を増やしたり、ポスター、リーフレットの配布先の拡大など、予算との関係を合わせて検討しなければならない課題です。毎回同じようなやり方ではなく、テーマによって方法、配布先を柔軟に変えていく必要もあると思われます。会員諸先生には、これまで同様にポスターの掲示やリーフレットの配布などでのご協力をお願いいたします。
 最後に、広報委員会では今後も市民の皆さんの興味あるテーマを選んで、「医療を考える集い」を運営していきたいと考えております。より良い「集い」にするためご意見、ご要望がありましたら広報委員か医師会事務局までお知らせください。