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Afterword to the Newsletter: [Pen Relay]
  秋田市医師会報のあとがき「ペンリレー」のご紹介です。
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好きな春の山菜
市立秋田総合病院 安部 恭子
 大学同期の飯野健二先生からバトンを受けました。飯野先生は私と同じ山形県出身でいらっしゃいます。「山形のことを書くよ」と仰っていたバトンも引き継ぎ、故郷の春の山菜について綴りたいと思います。と、その前に…
 昨年4月から市立秋田総合病院麻酔科に勤務しております。当院は令和4年11月に新築されました。手術室内は内視鏡手術画像がより鮮明になるように、壁の色は青色になっています。青い手術室で働くのは初めてでしたが、青色は爽やかで心が落ち着きます。青色の心理的効果に鎮静効果や集中力を高める効果、信頼感を高める効果などがあるようで、これからの手術室の内装は青色が主流になっていくのかもしれません。手術室は7室あり、毎日多くの手術を行なっております。手術支援ロボットを用いた手術も毎日行われています。ロボットを用いることでより精密で安全性が高い手術操作が可能となり、傷口も小さく出血量も少ないことから、術後の回復が早い傾向にあります。麻酔科では積極的に硬膜外麻酔や神経ブロックを用いて術後痛を抑えるようにしており、多くの患 者さんの手術翌朝の表情は明るく、穏やかに術後を過ごしていただいています。
 市立病院に赴任してからあっという間に一年が過ぎ、また春が巡ってきました。この原稿を書いているのは4月初めですが、沈丁花の花蕾も膨らみ始め、チューリップの蕾も顔を出し始めました。4月の空気の香りは少し甘く暖かく、自然にワクワクしてくるのは子供の頃から変わりません。
 私の故郷は山形県の県南、置賜地方と呼ばれる山に囲まれた農村地帯です。子供の頃は両親が共働きであったため、日中は朝日連峰の裾野にある祖父母の家で育ちました。山里の春は雪解けから始まります。幼い頃は祖母に背負われ山菜取りに行きました。喉が渇くと笹や蕗の葉っぱを丸めてコップを作り、山道傍の小川から水を汲んで飲むのですが、これが冷たくて本当に美味しいのです。私は「葉っぱあんま(お水)」と名付けていたらしく、これを楽しみに祖母に背負われて山に行っていたようでした。子供でもわかりやすい春の山菜といえば湿地に生えているコゴミです。背中の上から「コオミ(コゴミ)?!」と叫んでは指差して祖母に知らせていたそうで、小柄でおしゃべりだった私を背負って山に行くのはとても楽しかったと亡くなるまで祖母が語っていました。
 他に子供がわかりやすい山菜にはワラビやゼンマイなどありますが、私が大好きだったのは「カタダンゴ」採りです。「カタダンゴ」とはカタクリのことです。鮮やかな赤紫色の花をつけたカタクリは群生していることが多く、それを葉っぱごと茎から採ります。家に帰ると庭の釜に大鍋をかけてお湯を沸かし、採ってきた山菜を次々茹でるのですが、カタクリを茹でると鮮やかな赤紫色の花はあっという間に青くなります。茹でたカタクリは藁で編んだ「むしろ」の上で3日ほど天日干しにします。干しあがると綺麗だった花の色は消え失せ、真っ白だった茎も茶色に、花も葉っぱも黒っぽくなってしまいますが、これをゼンマイ干しなどと同じく保存食にします。秋から冬にかけて煮物が恋しくなる頃、乾燥したカタクリを茹で戻し、ジャガイモと共に煮物にして食べるととても美味しいのです。…とここまで書いてきて、Googleで「カタダンゴ」を調べてみたところ、この単語はほとんど出てきません。どうやらカタクリをカタダンゴと呼ぶのは、置賜地方の一部だけのようです。万葉集にはカタクリを詠んだ和歌が一首だけあるのですが、

「もののふの 八十娘子(やそおとめ)らが 汲み乱(まが)ふ 寺井の上の 堅香子の花」
巻19-4143 大伴家持

 カタクリの古名は「堅香子(かたかご)」とのこと。都でカタカゴと呼ばれていたカタクリは、遠く遠く置賜地方に伝わるうちに「カタダンゴ」に変化したのかもしれません。 
 大人になってから大好きになった春の山菜には「コシアブラ」があります。近年、秋田のスーパーでもよく見かけるようになりました。ちょうど故郷ではゴールデンウィーク頃が採り頃になることが多く、帰郷の楽しみです。コシアブラは天ぷらで食すのが有名ですが、我が家ではお浸しにしてもりもり食べます。また茹でてみじん切りにしたものを味噌と一緒に叩いてご飯のお供にするのも美味しいのです。コシアブラの木は滑らかで、樹肌が灰白色から灰褐色のきれいな樹木です。米沢の伝統的な木工工芸品「笹野一刀彫(お鷹ぽっぽ)」の材料としても使われています。
 もう一つ大人になってから好きになった春の山菜に、アケビの蔓の若芽「モエ」があります。秋田のスーパーではなかなか見つけられない山菜です。芽吹いたばかりの柔らかいものが私は好きです。モエは茹でてお浸しにすると、独特のほろ苦い風味があり美味しいのです。またコシアブラ同様、茹でてみじん切りにして味噌や胡麻と叩いた「切り合え」にするのも美味です。秋になるとアケビの実も楽しめます。子供の頃はタネが包まれた白く甘い果実を、タネを避けながら食べるのが大好きでした。果皮はほろ苦く大人の味。アケビの果皮を食べる習慣は全国的に珍しいようですが、油で素揚げにしたり、甘辛く味噌で煮つけたりします。キノコをいれた甘辛い肉味噌をアケビの中に詰めて、揚げたり焼いたりするのも美味しいものです。子供の頃は苦味が苦手ですが、この苦味が美味しいと感じられるようになったら大人だと言われたものでした。
 最近は秋田と同じく熊の目撃も多く聞かれるようになり、なかなか山には行きづらくなりました。子供の頃には、かなり山奥に行かない限り熊の被害など聞くことはなかったのですが。熊が里に降りてくるようになったのは、ナラの木枯れや、山仕事をする人が少なく山が整備されなくなったからでしょうか。今年は雪解けも早く、例年に比べ春が早いようです。ゴールデンウィークにはコシアブラやモエの時期は終わり、青々した葉っぱになっていることでしょう。熊さんに会わないように気をつけて、今年はワラビでも採ることにしましょう。アイコ(ミヤマイラクサ)が採り頃になっていたら嬉しいです。
 日ごと暖かくなり花が咲き始めるこの季節、緑の風の香りにワクワク感が高まってきますね。このペンリレーのバトンは、五月の風にのせて大学同期の越村淳先生にお届けしたいと思います。


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